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開発した電磁誘導発電モジュール
三菱電機は2月12日、自然界のわずかな動きや人の動作で効率よく発電する電磁誘導発電モジュールを開発した。同モジュールは、そよ風や弱い水流、人が床を踏む動きなどを利用した発電が可能となるため、配線と電池交換が不要な低消費電力(数ミリワット程度)の機器・センサー向け電源としての活用が期待できる。
これまでIoTセンサーの設置が難しかった場所への設置が可能となることで、センシング技術の活用範囲が大幅に広がり、データの取得・分析によるDX化の促進に寄与すると共に、再生可能エネルギーの有効利用によりカーボンニュートラルの実現に貢献する。
近年、地球規模での温暖化やエネルギー危機の拡大に対し、日本政府の「2050年カーボンニュートラル」宣言の実現に向け、省エネルギー化および再生可能エネルギー導入の推進が求められている。
このような中、光や熱、振動、電波など多様な形態で世の中に存在する微小なエネルギーを電気エネルギーに変換して活用する「環境発電(エネルギーハーベスティング)」が注目されているが、一般的に発電量が非常に微弱で不安定なため、発電できるシーンが限られていることが課題だった。
この課題を解決するために、三菱電機はこれまで、独自の複合磁気ワイヤーを用いたコイル型の発電素子と、発電素子にかかる磁界を増大させる磁気回路からなる電磁誘導発電モジュールを開発。従来の電磁誘導発電素子の1万倍以上(同じ速度の動きで発電した場合の比較)の高出力を実現してきた。
今回、この電磁誘導発電モジュールを用いて磁気回路の磁石や磁気誘導ヨーク(磁性体の構造体)の配置を最適化することで、これまで発電できなかった非常に低速かつ軽い力の動きでも効率の良い発電を可能とした。
この発電素子を用いて床板の上を人が通過した際に発電する床発電装置を試作し、実証実験を行った結果、従来の圧電素子(圧電体に加えられた力を電圧に変換する素子)を用いた床発電装置の100倍となる200mWの発電量(歩行想定で1秒間に二回踏んだ際の発電量)を確認した。
この装置の床板と発電素子は非接触であるため、従来の圧電素子の課題であった、継続使用による劣化が発生しない世界初(2025年2月12日現在、自社調べ)の構造となっている。また、この装置と温度センサーおよび無線式の通信モジュールを接続して構築した「床発電システム」の実証実験では、一回踏んだ時の発電量で温度データを送信できることを確認している。
同社では、「今後、発電素子の形状や磁気回路の最適化を進め、さらなる発電量の向上を目指します。また、発電した電力を高効率に蓄電する技術と組み合わせて、電源に乾電池などの一次電池を利用しているIoTセンサーへの代替電源としての適用を可能にすることで活用の幅をさらに広げるとともに、一次電池の廃棄量削減による循環型社会の実現への貢献を目指し、開発を進めていきます」と話している。