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2018年3月23日【経済・社会】

国交省、北海道における外国人ドライブ観光客の周遊・滞在実態を公表

NEXT MOBILITY編集部

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国交省は、スマートフォン向けアプリケーションを活用した社会実験で取得されたGPSデータに基づき、外国人ドライブ観光客の周遊・滞在実態を公表した。

 

同省は今回の実験で、外国人の北海道地方部への誘導には、ドライブ観光の促進が有効であることが確認されたとしている。

国土交通省・ロゴ

国土交通省北海道開発局は、北海道におけるインバウンド観光の課題である閑散期の旅行需要の喚起と地方部への誘導を図るため、関係機関で構成する「北海道ドライブ観光促進社会実験協議会」を設置。

 

平成29年9月1日~11月30日の3カ月間、レンタカーで北海道内を周遊する外国人ドライブ観光客を対象とした社会実験を実施した。

 

社会実験では、ナビタイムジャパンが開発したスマートフォン向けアプリケーション「Drive Hokkaido!」を活用。アプリユーザーから取得されたGPSデータに基づき、北海道全域における外国人ドライブ観光客の移動経路や立ち寄りスポットを分析した。

 

 

[社会実験の概要]

 

– 実験期間:平成29年9月1日~11月30日(91日間)
– 対象地域:札幌市を除く北海道全域
– 対象者:主にレンタカーを利用する外国人観光客及び外国永住権を保有する日本人
– 観光情報:339資源
– 特典提供施設:249施設(札幌市を除く北海道全域から募集)
– 特典媒体:スマートフォン用アプリケーション「Drive Hokkaido!」
 ※社会実験協働実施者(パートナー)(株)ナビタイムジャパンの開発・提供
– 対象言語:英語/中国語(繁体字)

 

[北海道ドライブ観光促進社会実験 実施結果]

 

<アプリ利用者の属性>

・実験期間中、1,211人の外国人観光客が北海道内でアプリ「Drive Hokkaido!」を利用。 (実験期間中の全道の外国人レンタカー貸渡台数19,543台の約6%に相当)

・国・地域別では香港、シンガポール、台湾、マレーシアが多く利用。(図1)

 

 

<周遊・滞在の概況>

・レンタカー以外の交通手段では訪問が難しい地域も含めて、北海道内各地を広く周遊している状況を確認。(図2)

 

・滞在については、札幌・小樽・登別など道央の主要観光地や函館・旭川・美瑛・富良野で多いほか、道東では網走・知床・阿寒摩周・釧路・帯広などで比較的多い。旭川・網走より北では、紋別・稚内・利尻島で滞在を確認。(図3)

 

 

<周遊・滞在の実態>

 

【地方部への誘導(道央圏集中の偏在緩和)】

・外国人ドライブ観光客(アプリ利用者)の宿泊地について、地方部(道央圏以外)への宿泊割合は42.5%であり、他の移動手段も含む全旅行者データ(平成28年度北海道庁調査:29.5%)よりも高い結果となった。(図4、図5)

またリピーターと初来道者の宿泊地について、リピーターは道東エリア(オホーツク圏、十勝圏、釧路・根室圏)で割合が高くなった。(リピーター:17%、初来道者:10%)

 

 

・平成28年度社会実験対象地域である「ひがし北海道」※地域において、当該市町村を訪れた旅行者が30分以上滞在する割合を比較すると、今回は34%であり、平成28年度(27%)よりも高い結果となった。(平成28年度社会実験:クーポンブックによる特典提供)

 

・全道的な周遊が見られ、特に主要観光地や幹線道路沿線でGPSデータの測位を多く確認。一方、移動途中の立ち寄りが少なく、一気に広域移動している状況も見られた。(図2、図3)

 

・地方部の一部において、宿泊地と同一振興局内の市町村での滞在が少なく、近隣市町村への周遊が少ない状況が見られた。(図6)(渡島、宗谷、十勝、釧路管内。例えば、稚内市宿泊者は直前の宗谷管内市町村への滞在が5.3%。)

 

【旅行日数】
・外国人ドライブ観光客の平均旅行日数は5.8日であった。他の移動手段も含む全旅行者データ(平成28年度北海道庁調査:3.8日)よりも長い結果となった。(図7)

 

 

【利用空港】
・北海道へ到着する空港(入道空港)、北海道から出発する空港(出道空港)が特定できたアプリ利用者について、大部分が新千歳空港を利用していた。(入道時:408人中402人(99%)、出道時:331人中317人(96%))

 

【「道の駅」への滞在状況】
・「道の駅」全119駅のうち、91駅で30分以上の滞在がなく、69駅では10分以上の滞在がなく、立ち寄りが少ない結果となった。一方、外国人モニターへのヒアリングにて、「道の駅」が提供する地域特産品、地域の旬の観光情報は魅力的、という意見があった。

 

<アプリ等による情報発信・特典利用>

・利用者アンケートにて、アプリを閲覧して立寄った施設がある、と回答した人が7割。(図8)

 

・アプリで紹介した特典提供施設(計249施設)へのアンケートによると、48施設で特典が利用され、延べ600人以上の利用があった。入場料・利用料が割引となる特典の利用が多かった。

 

・本実験ではWebサイト、チラシ、SNSを活用して北海道の観光資源や特典提供施設等の情報を発信。フェイスブックでは3万以上のフォロワーを獲得した。

 

 

[北海道ドライブ観光促進社会実験 まとめ]

 

<社会実験の効果>

■地方部への誘導効果

・他の移動手段も含む全旅行者データと比較して、外国人ドライブ観光客の地方部への宿泊割合は高く、また旅行日数も長い。

⇒ドライブ観光の促進は、地域偏在の緩和に有効

 

・「ひがし北海道」地域の市町村に訪れた旅行者のうち、当該市町村に滞在した旅行者の割合は昨年度よりも高くなった。

広域観光周遊ルート等の関係機関の取組とともに、本社会実験におけるアプリ等による情報提供が同エリアへの誘客に寄与。

⇒継続的な取組により、更に地方へ誘導できる可能性

 

■地域への一定の経済波及効果

・アプリを閲覧して立寄った施設がある方が約7割。アプリで紹介した特典提供施設では、48施設にて延べ600人以上が特典を利用。

⇒来日後でも適切な情報提供により、観光地や施設への立ち寄りを促す可能性

 

■潜在的な旅行需要の形成

・フェイスブックにおいて短期間で3万以上のフォロワーを獲得。今後も継続して運用。
⇒来道観光客となる可能性がある対象者に効果的な情報発信が可能

 

 

<今後に向けて>

・継続したデータ取得と分析が必要。
⇒季節変動や経年変化を継続的に把握し、具体的な施策検討や効果検証へ結びつけることが重要

 

・外国人ドライブ観光客は新千歳空港の利用が多く、地方部への周遊のため広域に移動しているものの、移動途中の滞在は少ない。
⇒移動ルートに沿った観光資源を磨き上げ、情報発信を強化することが必要

 

・地方部では有名な主要観光地を訪れているものの、近隣市町村への周遊は少ない。
⇒地方部における外国人旅行者の滞在を地域全体で更に増加させる仕組みづくりが必要

 

・現状では「道の駅」への滞在は少ない一方、「道の駅」が提供する地域特産品、地域の旬の観光情報などを外国人は高く評価。
⇒「道の駅」には、立ち寄りや地域の情報発信の拠点となる可能性がある

 

 

– ホームページ:https://hokkaido.japandrive.com(日本語/英語/中国語(繁体字))
– フェイスブック:https://www.facebook.com/japandrivecom/(英語)
– インスタグラム:https://www.instagram.com/japandrivecom/(英語)

 

           
※北海道開発局社会実験の結果(北海道内17エリアの詳細分析結果を含む):         

http://www.hkd.mlit.go.jp/ky/ki/renkei/splaat0000017w61.html

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。