NEXT MOBILITY

MENU

2022年9月15日【SDGs】

日本ミシュランタイヤとヤマト運輸、物流の共同改革へ

坂上 賢治

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

日本ミシュランタイヤとヤマト運輸 リードロジスティクスパートナー契約を締結

 

日本ミシュランタイヤとヤマト運輸は9月15日、日本国内に於ける円滑かつ強固な物流体制の再構築を目的にリードロジスティクスパートナー契約を締結(9月14日)した。( 坂上 賢治 )

 

これはミシュランによるサプライチェーン全体を変革し、その物流と在庫を最適化する事で、将来的な総ロジスティクスコストの削減や出荷リードタイムの短縮を実現させて、自社顧客の更なる満足度向上を目指すもの。

 

この目的達成のために今年9月からサプライチェーン全体の変革を目指し、来年2−23年1月10日からの本格的な活動開始を予定している。

 

この今回の物流改革共同プロジェクトは、ヤマト運輸と共に地球や人の持続可能性に対するビジョンを相互に共有できるパートナーであると判断してスタートを切ったもの。

 

ミシュランは「すべてを持続可能に」という企業ビジョンの基、人・地球・利益の三方良しを理念として来たる2050年迄に、100パーセント持続可能な素材のみを使ってタイヤを製造する事を顧客へ約束している。

 

また、大西洋上では帆船による海上輸送を推進する事。東南アジアでの天然ゴム栽培及び森林保全の管理の最適化のため、当地のゴム栽培農家へのサポートなど、世界規模で脱炭素を実現させる取り組みを大胆に進めている。

 

 

物流改革共同プロジェクトを開始し、環境負荷の少ない持続可能な物流を実現

 

対してヤマト運輸は、物流を通して企業の経営課題を解決し、持続可能な成長を実現するリードロジスティクスパートナーとして、ビジネスの上流から下流まで「エンドToエンド」での総合的な価値提供を目指し、企業の経営に資するサプライチェーンの変革とオペレーションの最適化を強力に支援していク構えだ。

 

また数字面の達成目標でも、来たる2050年の温室効果ガス排出実質ゼロに加え、2030年の温室効果ガス排出量48パーセント削減( 2020年度比 )を目標に、物流現場に於けるEV2万台の導入や、自社施設に於ける太陽光発電設備810件の導入、

 

再生可能資源や再生材の利用などを強力に推し進めている。このためにトヨタ自動車傘下のCJPT社と共同で、電動車普及に向けたカートリッジ式バッテリーの規格化・実用化の検討を開始する等、カーボンニュートラル社会実現に向けた積極的な取り組みを進めている。

 

そこで両社は、物流面での自動化と環境最適化を促進させる事で、顧客の利便性を高めながらも、温室効果ガスの可視化・削減を達成する事で環境負荷のより少ない持続可能な物流を実現していく構えだ。

 

ヤマト運輸の全国5拠点 地図イメージ

 

ミシュランの物流体制を、ヤマト運輸が一元管理する事で実現出来る事

 

なお今回、ミシュラン側の物流体制を、ヤマト運輸が一元管理する事で、以下が実現可能になる事を見据えている。

 

1).現在約20拠点ある倉庫を5拠点に集約する。これによりミシュラン側の各拠点に存在する在庫の可視化・最適化を実現。この結果、東西の中央倉庫から地域倉庫への在庫転送量の極小化を実現させる。

 

更にヤマト運輸の法人向けミドルマイルネットワークを活用し、従来と同一品質の配送リードタイムを実現させる。またScope3(原材料の調達や輸送・配送、事業上に於ける製品の消費と廃棄。従業員の通勤に係る炭素排出など、社外活動領域の範囲外にある燃料の燃焼や、電気の使用など)に係る温室効果ガス排出量を削減させる。

 

2).ヤマト運輸の輸配送管理システムを活用したオーダートラッキングを利用する事で、顧客毎の注文・配送状況を精緻にトレースしていく事で、ミシュランコールセンター業務でに係る迅速な案内を実現させていく事。

 

3).ヤマト運輸のデジタル送り状を、自社の配送プロセスに採用する事で、業務効率化とペーパーレス化を促進していく。より具体的には、複写式の伝票を廃止。汎用的なA4用紙を使用する事などで省資源化を実現していく。

 

4).ヤマト運輸の倉庫管理システムで、全ての在庫タイヤの製造年度を一本単位で管理する事を介して、FEFO( 使用期限が近い製品から先に出荷する )を実現させていく。この結果、期限切れによる処分を極小化させて環境問題へ対応を先鋭化させていく。

 

加えて両社は今後、RFID( 無線周波数を介して、タグからの識別情報読み取るなどの非接触による情報読み書き技術 )を活用したDXタグの活用化も積極促進していく。

 

 

両社は2050年の炭素中立を目指し物流上のサステナブルな仕組みを造る

 

より具体的には、製造過程で今後タイヤに付帯していくICタグを倉庫運営に活用。タイヤ一本単位の年度管理に加え、生産国の識別なども容易にして、顧客からの細やかな要望にも正確に対応していく。

 

更に荷受け・ピッキング・出荷作業・棚卸などの倉庫内作業を省人化させ、生産性の向上を目指す。また将来的には、ヤマト運輸の輸配送管理システムと、ミシュランの流通システム全体を連携させ、注文したタイヤの配送状況をミシュランの顧客がリアルタイムに確認出来る仕組みの導入を検討していく。

 

これらの取り組みについて日本ミシュランタイヤの須藤 元代表取締役社長は、「今回のヤマト運輸とのパートナーシップは、海外の生産工場から販売店様までのサプライチェーン全体を最適化し顧客満足度の向上を目指すミシュランの努力の一環です。

 

昨今、社会的な事情を踏まえ日本に到着するコンテナ船の運航状況が混乱を極める中、状況を的確に把握しお客様に製品をお届けする事が、私共メーカーの責務と考えています。

 

また『すべてを持続可能に』の企業理念のもと、ヤマト運輸と物流におけるカーボンニュートラルを共に実現する他、現在約50%のE−オーダー比率を2025年には70%迄引き上げて、環境負荷の低減及び社内の業務効率化を図っていきます。

 

日本でも世界でも新たな取り組みをより一層進めるミシュランに、これからもご期待ください」と話している。

 

 

対してヤマト運輸の恵谷 洋専務執行役員(法人営業・グローバル戦略 統括)は、「今回、ミシュランのリードロジスティクスパートナーとして、サプライチェーン変革に向けた伴走をさせて頂き、当社の拠点・輸配送ネットワークなどを最大限活用する事で、サプライチェーン上の物流と在庫の最適化を図って参ります。

 

またこの取り組みを通して、販売店様や自動車・建機メーカー様など法人のお客様、更に個人のお客様に対する価値提供を高め、ミシュランが目指す真のカスタマー・セントリシティの実現に向けて尽力致します。

 

また2050年カーボンニュートラル実現を目指す両社の協調・協力により、物流によるサステナブルな社会づくりにも貢献して参ります」と結んでいる。

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。