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2024年11月11日【SDGs】

経産省、2030年代に全新車のバイオ燃料対応を目指す

坂上 賢治

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経済産業省は11月11日、自動車の脱炭素化に向けて、「第17回・総合資源エネルギー調査会資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会( 経産相の諮問機関 / 以下、有識者会議 )」を開き、ICE車( Internal Combustion Engine / 内燃エンジン )へのバイオ燃料の国内導入計画を明らかにした。( 坂上 賢治 )

 

まず経済産業省としては、バイオ燃料に係る関連法改正を視野に据えつつも、当面は、強制力のない官民目標として、来夏頃を目処に関連設備の改修支援策を包括した行動施策をまとめる。

 

具体的な導入時期は、石油元売りへは2030年度までにバイオ成分を最大10%混合したバイオ燃料の供給開始を求め、更に2040年度には混合率を最大20%まで高めて供給するよう求めたい旨を説明した。

 

併せて自動車メーカーへは2030年代の早期に、新車で販売される全ての乗用車を対象にバイオ成分を20%混ぜたバイオ燃料に対応できるICE車を提供貰えるよう促した。

 

なお政府が、バイオ燃料の導入時期を目標として掲げたのは今回が初。その背景には、2022年度の国内CO2排出量の18,5%が運輸部門であること。更にその85,8%が自家用車で占められているという実態があるためだ。

 

従って早期のCO2排出量の削減にICE車の脱炭素化は欠かせないし、自動車リサイクル促進センターの資料によると、乗用車1台あたりのLCA( Life Cycle Assessment / 車両の製造・使用・廃車に至るトータル寿命 )が16年を超えるまでになった昨今、政府が目標として掲げてきた2050年の炭素中立( カーボンニュートラル )までは、僅か25年しか残っていない計算となる。

 

そもそも政府は予てより2035年を目処に、全ての新車販売( 乗用車 )をHVを含む電動車とする目標を掲げてきた。しかし日本国内に於けるEV普及が停滞していることから、来たる2030年代前半を目処にCO2と水素で作る合成燃料(イーフューエル)の商用化を実現させると共に、それとバイオ燃料を組み合わせて早期に燃料自体の脱炭素化を目指す構えだ。

 

これを受けて有識者会議に出席した関連・業界団体からは「バイオ燃料により、速やかにCO2を減らす道筋をつけたい( 石油元売り / 日本自動車工業会 )」などの趣旨の積極的な回答が挙がった。

 

ちなみに現時点に於けるバイオ燃料には、(1)サトウキビなどの作物を発酵・蒸留させて作るバイオエタノール燃料。(2)菜種やトウモロコシなどの植物油から製造されるバイオディーゼルエンジン用燃料。(3)植物や穀物を接種した家畜の排泄物や、余剰食品等の生ごみを有機性廃棄物として発酵させたガス成分からなるバイオガスなどがある。

 

上記のいずれのバイオ燃料も、大元の原材料が広義の農産物由来であるため、それらの成長過程で光合成が行われることによって大気中の二酸化炭素を吸収する。従ってICE車でバイオ燃料の燃焼時に排出される二酸化炭素量は、そうした生育時の吸収分と相殺されプラスマイナスゼロになる。

 

但しバイオ燃料そのものを調達するには、日本国内に於いて固有の課題があることから現段階では世界最大級のバイオ燃料の生産国ブラジルなどから輸入することになる。しかしそれでは原油を中東に偏る現状と何ら変わらない。それなら日本国内でバイオ燃料を生産すれば良い訳だが、国内は耕作地や工作人口が限られるなどの制約があり、自国内での安定供給面に於ける解決は見えてこない。

 

しかも世界規模でのバイオ燃料を巡る今後の動きは、国際間を跨がる争奪戦になる可能性が高く、国外からの安定的な原材料調達にも課題が山積してくるだろう。他方、日本国内に於いて、木材屑などからバイオ原料を調達する等の研究開発も進んではいるものの、現時点では価格や生産効率で課題が残ると述べられていた。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。