マクラーレン・オートモーティブは6月11日、26年振りとなるル・マン24時間レースへの参戦に向けて準備を開始した。
エントリーするのはマクラーレンGT3 EVOの3台で、モナコGP、インディアナポリス500、そしてル・マンの「世界3大レース」の全てに、マクラーレンが同一シーズンで参戦するのは今回が初めてとなる。
歴史的な勝利は、1995年のル・マン24時間レースでマクラーレンF1のロードカーが華々しい初優勝を飾ったことから始まった。F1 GTRは、その後3シーズンにわたって活躍し、1997年にはロングテール仕様でGT1クラス優勝、総合2位を獲得した。
そもそもマクラーレンF1がレースカーとして設計されたモデルではなかったことを考慮すると、これらの成功はどうそう注目に価するものであったといえる。 LMGT3のレギュレーションを満たべく、GT3 EVOには先代のF1 GTRと同様、変更箇所には多くの共通点が残されている。
その代表的なものがシャシーで、マクラーレンがF1レースで初めて導入し、30年前のF1からロードカーへ受け継ぎ、その技術を進化させてきた。
マシンのキャビンを形成するメインのモノコックは、750Sの心臓部と同じカーボンファイバー製モノケージIIが採用され、その上にロードカーと同じフロント・インパクト構造とリア・フレームが取り付けられている。
カーボンファイバー製シャシーは、マクラーレンのDNAの一部であり、剛性・強度・軽量性を重視して採用されている。そのメリットは、軽量化と動的性能だけでなく、ドライバーにとって非常に安全な環境、特にル・マンでしばしば見られるハイスピードでタイヤが接近する、「ホイール・トゥ・ホイール」のアクションに対して優れている点にある。
ドライバー・フォーカスを考慮し開発されたこのシャシーは、ほんの一例に過ぎない。マクラーレンGT3 EVOは、750Sと同じステアリング・ラックとコラムを採用することで、ドライバーの意志をそのままコース・ポジショニングに反映することができる。
可変バルブタイミング、ドライサンプ潤滑、そして軽量かつ強靭なマテリアルなど最新テクノロジーを採用したM840Tは、マクラーレン750Sと同じ4LツインターボV8エンジンです。GTレースの規則dにより、エンジン出力を抑えながらも、M840Tの驚異的なパワーデリバリーと耐久性には遜色はないという。
マクラーレンGT3 EVOには、サーキット専用ブレーキ、スリックタイヤ、公道走行では禁止されているエアロダイナミクスなど、レースに関連する多くの装備が追加されている。
また、750Sオーナーには、アクティブ・リアスポイラー、パワートレインのアジャスタブル・モード、プロアクティブ・シャシー・コントロールIIIシステム(これらの組み合わせはマクラーレン・コントロール・ランチャー・ボタンをタッチするだけで設定可能)、更に11秒で昇降可能なリトラクタブル・ハードトップを備えたスパイダーモデルなどがオプションとして用意される。
さて今回参戦する3台のマクラーレンGT3 EVOのうち、2台はWECのレーシング・パートナーであるユナイテッド・オートスポーツよりエントリーしており、うち59号車はル・マンと同じレースを走行する。
1995年に優勝したF1 GTRと同じレースナンバーの59号車は、イギリス人のジェームス・コッティンガム、ブラジル人のニコラス・コスタ、スイス人のグレゴワール・ソーシーがステアリングを握る予定。
また姉妹車の95号車のクルーは、日本人ドライバーの濱口弘と佐藤万璃音、そしてチリ人のニコラス・ピノが乗り込む。マクラーレンのル・マン復帰は、かつてスパ・フランコルシャンで優勝争いに加わり、6時間のレースで多くの周回をリードした59号車でしたが続くもの。
3台目のGT3 EVOはインセプション・レーシングで、昨年の地元ウェザーテック・スポーツカー選手権のGTDクラスでイタリアレーサー、ブレンダン・イリーブが開催され、今度はル・マン参戦が決定した。
2019年、マクラーレン・トロフィー選手権の前身であるピュア・マクラーレンGTシリーズでの目覚ましい活躍から始まり、その後、世界各地のGTレースシリーズに参戦し、いくつかの選手権で優勝を果たしている。今回は、イギリス人のオーリー・ミルロイとデンマーク人のフレデリック・シャンドルフと共に参戦する。
この3台の参戦ついてマクラーレン・オートモーティブのマイケル・ライターズCEOは、「ル・マン24時間レースはマクラーレンの歴史においても非常に重要なレースであり、また私たちのマシンの性能と耐久性が試される究極のデモンストレーションの舞台なのです。全チームの幸運を祈るとともに、熱心なレースを楽しみにしています」と述べている。