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2024年6月11日【イベント】

マクラーレン、26年振りのル・マン参戦へ

坂上 賢治

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マクラーレン・オートモーティブは6月11日、26年振りとなるル・マン24時間レースへの参戦に向けて準備を開始した。

 

エントリーするのはマクラーレンGT3 EVOの3台で、モナコGP、インディアナポリス500、そしてル・マンの「世界3大レース」の全てに、マクラーレンが同一シーズンで参戦するのは今回が初めてとなる。

 

 

歴史的な勝利は、1995年のル・マン24時間レースでマクラーレンF1のロードカーが華々しい初優勝を飾ったことから始まった。F1 GTRは、その後3シーズンにわたって活躍し、1997年にはロングテール仕様でGT1クラス優勝、総合2位を獲得した。

 

そもそもマクラーレンF1がレースカーとして設計されたモデルではなかったことを考慮すると、これらの成功はどうそう注目に価するものであったといえる。 LMGT3のレギュレーションを満たべく、GT3 EVOには先代のF1 GTRと同様、変更箇所には多くの共通点が残されている。

 

 

その代表的なものがシャシーで、マクラーレンがF1レースで初めて導入し、30年前のF1からロードカーへ受け継ぎ、その技術を進化させてきた。

 

マシンのキャビンを形成するメインのモノコックは、750Sの心臓部と同じカーボンファイバー製モノケージIIが採用され、その上にロードカーと同じフロント・インパクト構造とリア・フレームが取り付けられている。

 

 

カーボンファイバー製シャシーは、マクラーレンのDNAの一部であり、剛性・強度・軽量性を重視して採用されている。そのメリットは、軽量化と動的性能だけでなく、ドライバーにとって非常に安全な環境、特にル・マンでしばしば見られるハイスピードでタイヤが接近する、「ホイール・トゥ・ホイール」のアクションに対して優れている点にある。

 

ドライバー・フォーカスを考慮し開発されたこのシャシーは、ほんの一例に過ぎない。マクラーレンGT3 EVOは、750Sと同じステアリング・ラックとコラムを採用することで、ドライバーの意志をそのままコース・ポジショニングに反映することができる。

 

可変バルブタイミング、ドライサンプ潤滑、そして軽量かつ強靭なマテリアルなど最新テクノロジーを採用したM840Tは、マクラーレン750Sと同じ4LツインターボV8エンジンです。GTレースの規則dにより、エンジン出力を抑えながらも、M840Tの驚異的なパワーデリバリーと耐久性には遜色はないという。

 

 

マクラーレンGT3 EVOには、サーキット専用ブレーキ、スリックタイヤ、公道走行では禁止されているエアロダイナミクスなど、レースに関連する多くの装備が追加されている。

 

また、750Sオーナーには、アクティブ・リアスポイラー、パワートレインのアジャスタブル・モード、プロアクティブ・シャシー・コントロールIIIシステム(これらの組み合わせはマクラーレン・コントロール・ランチャー・ボタンをタッチするだけで設定可能)、更に11秒で昇降可能なリトラクタブル・ハードトップを備えたスパイダーモデルなどがオプションとして用意される。

 

さて今回参戦する3台のマクラーレンGT3 EVOのうち、2台はWECのレーシング・パートナーであるユナイテッド・オートスポーツよりエントリーしており、うち59号車はル・マンと同じレースを走行する。

 

 

1995年に優勝したF1 GTRと同じレースナンバーの59号車は、イギリス人のジェームス・コッティンガム、ブラジル人のニコラス・コスタ、スイス人のグレゴワール・ソーシーがステアリングを握る予定。

 

また姉妹車の95号車のクルーは、日本人ドライバーの濱口弘と佐藤万璃音、そしてチリ人のニコラス・ピノが乗り込む。マクラーレンのル・マン復帰は、かつてスパ・フランコルシャンで優勝争いに加わり、6時間のレースで多くの周回をリードした59号車でしたが続くもの。

 

3台目のGT3 EVOはインセプション・レーシングで、昨年の地元ウェザーテック・スポーツカー選手権のGTDクラスでイタリアレーサー、ブレンダン・イリーブが開催され、今度はル・マン参戦が決定した。

 

 

2019年、マクラーレン・トロフィー選手権の前身であるピュア・マクラーレンGTシリーズでの目覚ましい活躍から始まり、その後、世界各地のGTレースシリーズに参戦し、いくつかの選手権で優勝を果たしている。今回は、イギリス人のオーリー・ミルロイとデンマーク人のフレデリック・シャンドルフと共に参戦する。

 

この3台の参戦ついてマクラーレン・オートモーティブのマイケル・ライターズCEOは、「ル・マン24時間レースはマクラーレンの歴史においても非常に重要なレースであり、また私たちのマシンの性能と耐久性が試される究極のデモンストレーションの舞台なのです。全チームの幸運を祈るとともに、熱心なレースを楽しみにしています」と述べている。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。