マツダは6月17日、中期技術・商品方針説明会をオンラインで開き、新たな電気自動車(EV)専用プラットフォームの投入やドライバーの体調不良時に、クルマを安全な場所へ移動、停車させる自動運転機能を2022年に導入することを明らかにした。カーボンニュートラルやCASE対応など経営環境が大きく変化する中、マツダも中期的視点で電動化などの先進技術を加速させる。
中期技術・商品説明会は2030年に向けて、開発の方向性を示したもの。オンラインで技術・開発の方向性を解説した廣瀬一郎専務執行役員は基礎となる技術群をブロックとして段階的に積み上げる「ビルディングブロック戦略」を一貫して進めることで、優れた技術を低コストで提供すると強調した。(佃モビリティ総研・松下 次男)
新電動化・自動運転の取り組みを発信。EV普及期迄は内燃機関とEVを混流生産
マツダはこれまでモデルベース開発をベースに、少ない人員で効率的な開発を進めてきたが、これをより進化させる。
商品展開では、まず2022年から2025年の間に、新たなにEV3車種、プラグインハイブリッド車(PHV)5車種、ハイブリッド車(HV)5車種を順次、日本、欧州、米国、中国、ASEAN(東南アジア諸国連合)を中心に投入すると表明。
この中には、すでに開発中のロータリーエンジンを活用したレンジエクステンダーをPHVの一モデルとして投入することを明らかにしたほか、HVではトヨタ自動車との協業を活かす。
2025年迄にレンジエクステンダーを含むPHV5車種、EV3車種などを新投入
さらにEV専用プラットフォーム「スカイアクティブEV専用スケーラブルアーキテクチャー」を開発し、2025年から2030年にかけて複数モデルを投入する考えを示した。
この間に、横置き型内燃機関のスモール群に加えて、投入を遅らせていた縦置き型内燃機関(直列6気筒)を搭載した「ラージ群」商品を順次、導入する。ラージ群商品はPHVや48ボルト・マイルドハイブリッド車などに展開する。
マツダは昨年秋の中期経営計画見直しで2050年のカーボンニュートラルへの挑戦を表明。また、これに並行して2030年までにグローバルで100%電動化を目指す考えを打ち出しており、これに合わせて電動化を推進する。30年時点で、ピュアEVは25%の比率を見込んでいる。
2025年以降に独自技術によりEV専用プラットを採用した複数のEVを投入
廣瀬専務執行役員はEVモデルの開発について、トヨタなどと設立した「EV.C.A.Spirit」(現在は解散)の技術をベースに活用するものの、商品開発は「独自に取り組む」と強調した。
また、モノ造りでも技術革新を進化させる。デジタル技術を活用し、フレキシブル生産を推進。EVが普及期に入るまで、EVと内燃機関モデルを同一の生産ラインで混流生産し、低コスト化を図る考えを表明した。
安全面からは「マツダ・コ・パイロット・コンセプト」を発表。ドライバーの状態を常時モニタリングし、万が一のドライバーの体調不良を検知した際に、自動運転走行に切り替え、安全な場所へ移動、停車する機構。同時に、緊急通報も行う。
万が一のドライバーの体調不良を感知し、自動運転するコーパイロット1.0を2022年に投入
まず「マツダ・コ・パイロット1.0」を2022年のラージ商品群へ投入する。この段階では、高速道路では路肩へ、一般道では同一者車線上で停車する。
さらに進化版の「コ・パイロット2.0」を2025年以降に投入する計画だ。2.0では、一般道でも路肩への退避が可能となる。
廣瀬専務執行役員はコ・パイロットについて事故ゼロを目指す「人中心の自動運転技術を積み上げたものだ」と述べ、自動運転のレベル区分についてははっきりと示さなかった。一般的に見れば、レベル2からレベル3を含む区分といえそうだ。
コネクテッド技術では、先に発表したトヨタ、スズキ、スバル、ダイハツとの5社で共同開発する車載通信機、通信システムを推進。MaaSやOTA(オーバー・ザー・エアー)に対応するソフトウエア技術の開発強化も打ち出した。