丸紅は12月19日、ベトナム最大の民間企業グループ「Vingroup (以下、ビングループ)」が設立した同国初の自動車メーカー「VinFast Trading and Production (ビンファスト・トレーディング・アンド・プロダクション)」(以下、ビンファスト)と、使用済みの電気自動車(EV)バッテリーの二次利用およびサーキュラーエコノミーのモデル構築に於ける協調に関して、5日に覚書を締結。16日に同国チン首相と齋藤経済産業大臣の面前で覚書交換式典を執行したと発表した。
今後両社は、ビンファストが製造するEVに搭載されたバッテリーを定置型として二次利用する実証を行うことや使用済みEVバッテリーの利活用、サーキュラーエコノミーのモデル構築の促進に繋がる事業の創出を協調して目指すと云う。
丸紅は、再生可能エネルギー(以下、再エネ)電源の増加による系統負担の増大が、その拡大を阻害する社会問題として顕在化し始めていることから、世界的なEVの普及にはEVバッテリーの生涯価値の最大化が不可欠であると考え、使用済みEVバッテリーを活用した電力需給調整と系統負担の緩和に着目。2021年に、米国のスタートアップ企業である「B2U Storage Solutions (ビー・ツー・ユー・ストレージ・ソリューションズ)」(以下、B2U)へ出資参画している。
そこで、今回の覚書では、使用済みEVバッテリーを解体・再検査・再梱包することなく、定置型として安価で容易に二次利用できるB2Uの独自開発技術を活用し、ビンファスト製のEVに搭載されるバッテリーを定置型に転換することを検証する。
なお、丸紅の100%子会社である「Marubeni Green Power Vietnam(マルベニ・グリーン・パワー・ベトナム)」では、今年5月、ビングループ傘下の蓄電池メーカーである「VinES Energy Solutions(ビンイーエス・エナジー・ソリューションズ)」(以下、ビンES)と、同社が製造するEVバッテリーを活用した共同事業の開発に関して合意していることから、今回のビンファストとの覚書により、両社の協業が循環経済システム構築の分野にも拡大することになったと云う。
丸紅は、覚書を通じて、ビングループと戦略的パートナーシップの強化を図ると共に、ベトナム政府が掲げる2050年までの温室効果ガス排出量実質ゼロの達成および世界的な脱炭素社会の実現に貢献していくと共に、B2Uをはじめとした革新的なスタートアップ企業に、資金供与のみならず、既存の事業基盤・ネットワークを活用した多角的な事業開発の支援を行うことで共創を促進。中期経営戦略「GC2024」で掲げる「新たなグリーン事業の創出」実現を目指すとしている。
[会社概要]
■ビンファスト
– 会社名:VinFast Trading and Production Joint Stock Company
– 所在地:ベトナム・ハイフォン
– 株主:VinFast Auto Ltd. 99.9% 他
(VinFast Auto Ltd.は2023年8月に米国NASDAQ市場へ上場)
– 設立:2017年
– 代表者:Le Thi Thu Thuy
– 事業内容:
ベトナムにおけるEV製造事業。2020年よりガソリン車、2021年よりEVを製造開始。2022年末にはガソリン車製造停止とEV生産へ完全に切り替える計画を発表。販売先はベトナムに加え、米国、欧州に進出しており販売エリアを拡大中。
■ビングループ
– 会社名:Vingroup Joint Stock Company
– 所在地:ベトナム・ハノイ
– 主要株主 (2022年12月31日時点):
・Vietnam Investment Group LLC. (32.58%)
・Pham Nhat Vuong (19.18%)
・VMI JSC (6.29%)
・SK Investment Vina II Pte, Ltd. (5.98%)
– 設立:1993年
– 代表者:Nguyen Viet Quang
– 事業内容:ベトナムに於ける不動産・ホテル運営・小売・自動車・教育・医療事業等。
■B2U
– 会社名:B2U Storage Solutions
– 所在地:米国カリフォルニア州
– 代表者:Freeman Hall
– 事業内容:EV車載用バッテリーを定置用で二次使用するソリューション開発・提供。