マクニカは11月19日、AIの社会実装を加速化する「BrainTech」の取り組みを開始し、「BrainTech」において世界をリードするインナーアイ社のソリューションを提供すると発表した。
AIの社会実装が進む中、導入を進める上での課題もまた浮き彫りになってきている。AIモデルを開発するための教師データが足りない、アノテーションコストが高い、あるいは、AIが出す結果がブラックボックス化されているなどである。機械学習アルゴリズムに必須である教師データを効率的に増やすには、タグが付いたデータを取り込むことで、パターンを認識させることが重要。そのためAI開発には、タグが付いた状態のデータを用意することが必須となり、データにタグ付けを行うアノテーションは機械学習において不可欠なプロセスとなっている。
インナーアイ社の技術は、脳波とAIを組み合わせたものであり、AIに必須の機械学習には欠かせないアノテーションを効率的に行うことを可能にする。人間とAIの組み合わせによって、大量の教師データが十分になくても、人間の知識や経験やカンなどをテクノロジーの力によってデータ化することで、AIの可能性を高めることができる。
マクニカでは、将来のデジタライゼーションによる第四次産業革命、Society5.0に向けた、新たな先端テクノロジーやソリューションの提供を行っており、これらの分野で、必要不可欠な最先端テクノロジーが「AI」であると考え、数年前から、さまざまなAI関連ソリューションを提供してきている。そして、今回の「BrainTech」の取り組み開始につながった。
さらに、インナーアイ社のソリューションを軸に、日本に加え、マクニカの海外拠点であるドイツ、ブラジルとの連携により、グローバルベースで獲得する事例や技術導入情報をシェアし、マクニカならではのグローバルで活用できるインテリジェンスへと昇華させていくことで、共通課題に対するソリューションの構築を加速させる。日本から海外、海外から日本へ、各国で生み出された優れたソリューションを素早く展開し、ソリューション導入の支援、課題の早期解決を促進するとしている。
■BrainTechとは
Brain(脳)とTechnology(技術)をかけ合わせた造語であり、脳科学をベースにした技術、サービスを指す。物と人間の脳をつなぐ新たな取り組みであり、社会イノベーション、デジタルトランスフォーメーションを進めるうえで、重要な役割を担う技術として注目されている。2013年にはアメリカ合衆国 オバマ前大統領、またイスラエル シモン ペレス 前大統領がプロジェクトを発足させている。同様に日本においても様々な脳科学の研究が行われてきており、研究から生まれた成果がサービスとして発表されてきている。
■インナーアイ社ソリューション
人の脳の活動状況を基に、その人の判断をAIに学習させることができる「BrainTech」によるプラットフォームを提供するインナーアイ社のソリューションは、EEG(脳波測定器)を通して脳活動の状況をとらえ、人の認識・判断をAIに短期間で学習させることができる。
具体的なソリューションの特徴は以下の通りとなる。
1.アノテーション時間の短縮
人に対して画像データを提示し、その画像データに対する人の判断、判定を脳波からとらえ、データにタグ付けを行う。脳波の発生からタグ付けまでにかかる時間は非常に早く、通常4画像データ/秒のスピードでタグ付けが可能。
2.人の判断を基にしたアノテーション
その人独自の判断を、脳波を基にして判定し、タグ付けを行う。エキスパートの方の経験や知識を基にした判断や特に直感的な判断を基に、いわゆる「見る人が見ればわかる」をAIに学習させることができる。
3.学習時間の短縮
確信を持って判断していないケースや、疲労しており判断が鈍る可能性がある際には、脳波に違いが現れる。この違いを使い、脳波からタグデータの生成と同時に確信度も生成する。確信度はAI学習に使用され、確信度が低いタグに対しては、AIの学習影響を小さくできる。タグの誤りによるAIの精度低下を避けるので、学習時間の短縮につながる。確信度の低い画像データは、フィードバックを行い、再度見直しも可能。
適用分野
下記分野において、採用および実証実験の検討が始まっている。
- 施設におけるセキュリティチェック
- 医療における傷病の診断アシスト
- 工場で行われている目視検査の補助
- 農業における生育予測、品質予測
■インナーアイ社の AIプラットフォーム詳細情報:
https://www.macnica.co.jp/business/semiconductor/manufacturers/innereye/products/134586/