ひとつの触媒で3つの水素利用:燃料電池、水素製造、水素化
九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I2CNER)/大学院工学研究院の小江 誠司(オゴウ セイジ)主幹教授らの研究グループは6月11日、熊本大学の研究グループとの共同研究により、水素の合成や分解を担う3種類の天然ヒドロゲナーゼ酵素の構造をヒントにひとつの新しい触媒を開発したと発表した。(坂上 賢治)
今回開発した触媒は、同じ分子式で構造だけが異なる3種類の異性体によって、3種類のヒドロゲナーゼ酵素のように〝(1)燃料電池の水素電極の触媒〟、〝(2)水素製造の触媒〟、〝(3)化学工業の水素化の触媒〟として働くことを発見したもの。
この研究成果により、これまで不明であったヒドロゲナーゼ酵素の触媒反応と触媒の分子構造との関係を解き明かし、次世代のエネルギー源である水素を効率よく利用するための道を拓いたといえるだろう。なお同研究成果は、2020年6月11日(日本時間)にアメリカ学術雑誌「Science Advances」オンライン版で公開された。
次世代のエネルギーである水素を効率よく利用する道を切り拓く
ちなみにこの研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST「電子貯蔵触媒技術による新プロセスの構築」(課題番号:JPMJCR18R2)と、文部科学省 科学研究費補助金 特別推進研究「ヒドロゲナーゼと光合成の融合によるエネルギー変換サイクルの創成」(課題番号:JP26000008)の研究の一環として取り組まれた。
研究グループは冒頭の通り、九州大学の小江 誠司主幹教授の研究グループ、カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I2CNER)(所長 ペトロス・ソフロニス)、大学院工学研究院、小分子エネルギーセンター(センター長 小江 誠司)により福岡市産学連携交流センターで行われた。
研究の成果ついて小江主幹教授は「天然の3種類のヒドロゲナーゼ酵素の構造をヒントにひとつの新しい触媒を開発しました。これまで絡み合っていた3色の糸(3種類の触媒)を解きほぐしました」とその成果とその意味について参考図を介して話してくれた。