米国時間の7月16日、BMW AGの監査役会は米国サウスカロライナ州北西部のスパータンバーグで行った監査役会に於いて、オリバー・ツィプセ(Oliver Zipse・55歳)の社長就任を承認した。(坂上 賢治)
現社長で過去5年間同職の任に就き、本来は同社若手の急上昇株であった53歳のハラルト・クリューガー(HaraldKrüger)氏は監査役会に対して、去る7月上旬の時点で現職の任期延長を希望しない旨を伝えていたことを踏まえて社長職を辞し、今年8月15日に退任する。
これに伴い監査役会から新たに指名されたツィプセ氏が、後任の社長職に就くことになった。
ツィプセ氏は2015年に取締役会のメンバーとなり、現在、同社グループの生産部門で取締役の任を担っている。この生産担当からの社長就任という昇格ルートは、ノルベルト・ライトホファー氏からクリューガー氏へと続くBMW AGとしては順当な人事にあたる。
同氏は1991に研修生としてBMWに籍を置いたことを皮切りに、プラントオックスフォードのマネージングディレクター、プロダクトストラテジー部門でシニアバイスプレジデントを務めるなど、様々な管理職を歴任してきた同社生え抜きのプロパー人材だ。
ハラルト・クリューガー氏の前任CEOであった現・監査役会会長のノルベルト・ライトホーファー(Dr.Norbert Reithofer)博士は「8月からは、分析に基づく事業戦略を駆使する新リーダーが当社グループの社長に就任します。
私たち全員が、彼をバックアップしていくことでBMWグループが大きく躍進することに期待を膨らませています」と電気自動車、自動運転などのCASE領域や、MaaS分野での飛躍に期待を寄せている。
ただ経営トップとしての抱負や、事業計画については今の段階では取締役会もツィプセ氏も沈黙を守っている。
ちなみにBMWの客観的な事業状況は、電動量産車「i3」を引っ提げて、EV開発で一時は世界の最先端を走っていたが、米テスラを筆頭に多くEV後発メーカーの後塵を拝する状況に陥っている。
今は電動・化石燃料ユニットを組み合わせたハイブリッドモデルに肩入れしているのだが、実際には、XシリーズなどのSUVモデルが収益の屋台骨を支えており(収益の43・7%)、さらにクリューガー氏主導によるダイムラーとの提携事案では、持ち前の技術力の高さを充分にアピール出来ずに来ている。
加えて2018年の純利益が前年比17%減(売上高営業利益率9・2%)の72億700万ユーロ(約9100億円・売上営業利益率7・2%)であったこと。さらに2019年はこれがさらに減少する(売上高営業利益率6~8%)ことにより、2022年までに120億ユーロ(約1兆5000億円)のコスト削減を進める。
対して自動運転領域の研究投資では、巨額コスト負担を抱えているのだが、それでもその規模は国内競合のVWグループ(2023年迄で5兆6000億円)の半分のレベルに留まっていることなどから、ここのところ株式市場では2015年時点で124ユーロだった株価が78ユーロに急降下し低迷(独経済誌Finanzen Verlag調べ)している。
また併せて同社監査委員会は、米国での事業動向並びにグループに於ける世界最大規模のスパータンバーグ工場での車両生産計画についても話し合い、将来に向けて、プレミアム分野での同社のリーダー的役割を強化し、長期的な成功への道を歩み続けることを誓い合った。