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2024年11月25日【MaaS】

狛江市ら6者、ローカル5G活用の遠隔型自動運転実証

坂上 賢治

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東京都狛江市東日本電信電話( NTT東日本 )、自動運転AI開発のティアフォー( TIER Ⅳ )、3次元点群地図ソフトウエアのマップフォーデータ管理企業のunerry( ウネリー )、都市計画事業の一般財団法人計量計画研究所( IBS )から成る6者のコンソーシアムは、去る2024年4月から、ローカル5G等を活用した遠隔型自動運転の実証を進めてきた。

 

なおこの活動は、総務省・令和5年度補正予算「地域デジタル基盤活用推進事業( 自動運転レベル4検証タイプ )」を背景に行われているもの。そうしたなかで現段階で実証の進捗を地域住民に示すべく狛江市で、12月20日・21日に遠隔型自動運転バスの住民試乗会を開催する。ちなみに公道上のローカル5Gを活用した遠隔型自動運転実証として多摩地区では、初の試みとなる。

 

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上記、実証計画が始動した背景は以下の通り

 

上記、狛江市でこの取り組みが始動した背景には、築55年を迎える多摩川住宅二棟(東京都狛江市西和泉二丁目および調布市染地三丁目)の建て替え計画の発起に伴い、522戸の住宅人口が1,217戸の大規模マンションに再生される再開発事案が、目前に控えているため。より具体的には2024年度に工事着工、2027年度に1工区竣工、2028年度に2工区竣工が予定されている。

 

 

同計画では、敷地面積は約52,348m2、建築面積は約19,410m2、延べ面積は約101,933m2、建築物の高さは約37m。公園を中心とした自然の中の住まいをコンセプトに、約5haの敷地のうち約1haを公園や遊歩道とし、多摩川沿いの自然豊かな立地に調和する緑豊かなまちづくりに取り組むという。

 

 

但し、そうした計画が推し進められる一方で、公共交通機関の利用客の減少や乗務員不足によるバス路線の見直し等が懸念され、持続可能な公共交通サービスの確立が喫緊の課題となっている。そこで解決策の一環として、遠隔型自動運転バスの導入検討を通じた安心安全な地域公共交通の実現に向けて実証を行うことになった。

 

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6者による実証実験の概要は以下の通り

 

目的
歩行者や自転車、バイクなど様々な交通手段が行き交う環境下において、遠隔型自動運転バスおよび道路に設置したスマートポール(5Gアンテナ・Wi-Fi-AP・LiDARなどを搭載した通信基地局)の適用性を検証。様々な交通手段と共存したモビリティサービスの構築を目指す。

 

実証内容
キャリア通信が混雑するエリアや、電波強度の弱いエリアでも、ローカル5G等の通信技術やスマートポールの活用によってスムーズな自動走行実現を目指した技術実証を行う。今回は多くの利用者が集まる駅を基点に、歩行者、自転車、バイクなどが行き交う道路を通り、大規模な住宅地区を結ぶ区間下で3ポイントの実証を実施する。

 

(1). 公道での自動運転走行実証
小田急線和泉多摩川駅と多摩川住宅間を結ぶ約5㎞の区間において、ティアフォー社製Minibus※4を用いた自動走行実証(自動運転レベル2)を実施。

 

(2). ローカル5G等の無線通信を活用した走行時の映像・音声通信実証
自動運転レベル4の実装に向け、公道に敷設したローカル5G等の無線通信を活用して遠隔監視拠点との映像・音声通信の検証を実施。

 

(3). スマートポールの活用による交通状況を先読みした走行の実証
道路上に設置したスマートポールにて取得したセンサー情報やカメラ映像を、ローカル5G等の無線通信で自動運転バスや遠隔監視拠点へ配信することによって、交通状況を先読みした走行の実証を実施。
具体的なケースとして、通信混雑する駅前ロータリーにおける進入・発進の支援や、信号の無い横断歩道における見通し外の車両や歩行者の認知支援、信号あり交差点における右折支援について実証。

 

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コンソーシアム各社の役割

狛江市
・実証エリアの提供
・実証実験にかかる住民への説明

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NTT東日本
・本実証におけるプロジェクト管理および実証実験実施主体
・ローカル5G通信環境および路側スマートポールシステムの構築
・ローカル5Gおよび路側スマートポールによる自動運転の高度化実証
NTT e-City Labo自動運転実証拠点での走行事前検証および遠隔監視環境の提供

 

 

※NTT e-City Laboは、地域循環型社会を実現のための枠組み。地域公共交通向け自動運転では、2021年から通年で走行試験を実施し、通信技術のトータルソリューション施設として開放されている。

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ティアフォー(Minibusの提供)
・自動運転車両および自動運転システムの開発・提供
・自動運転車の走行

 

 

※Minibus(ミニバス)は、自動運転機能に対応した電気自動車(EV)の生産のための新ソリューション。これには小型バスfanfare(ファンファーレ/定員23名、客席15名)も含まれる。Minibusには、様々な種類のセンサーが搭載されており、レベル4認可には不可欠の自動運転制御機能の冗長化にも対応している。車載通信技術はローカル5Gと通信キャリア回線に対応。遠隔監視拠点と自動運転車両を繋ぐシステム全域を包括している。

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マップフォー
・自動運転の3次元地図データ作成
・センサー、カメラを設置した路側スマートポールシステムおよび物体認識、車両システム接続に関する知見提供

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計量計画研究所
・自動運転の地域実証に向けた自治体等との地域交通分析、課題検証などの計画検討支援する

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unerry
・実証エリア内の人流量・移動需要データ分析・解析
・将来的な実装を前提とした走行ルートの策定
・地域交通需要を含めた社会需要性の実証

 

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試乗会の概要は以下の通り

 

日時:2024年12月20日(金)・21日(土) 10:20~15:40頃 詳細は時刻表を参照
実証地域:狛江市
ルート:和泉多摩川駅出発後、多摩川住宅を経由し、和泉多摩川駅に到着

 

 

時刻表
和泉多摩川駅出発〜アンケート実施後解散
1便 _10:20 〜 11:00頃
2便 _11:00 〜 11:40頃
3便 _14:20 〜 15:00頃
4便 _15:00 〜 15:40頃
※荒天時や交通状況等により、予告なく中止する場合がある。
※各便は時刻表の時間を目安に走行する。

 

参加方法
試乗会の参加には事前の申し込みが必要。
QRコードより2024年11月29日(金)までに申し込む。
(狛江市「自動運転バス実証運行 住民試乗会の申し込みフォーム」)
定員になり次第受付は終了する。

 

 

今後の展開
レベル4自動運転の社会実装に向けては、技術検証と並行して各地域での意識醸成が必要。狛江市をパイロット地域とし、地域公共交通会議等を通じて交通事業者や住民の理解を促進し、2027年度の社会実装を目指す。また同モデルを他自治体へ展開し、乗務員不足などの地域交通課題の解決を図る。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。