カワサキモータースは10月6日、事業方針説明会を開催した。同社は10月1日付で川崎重工業のモーターサイクル&エンジン事業部が分離した会社だ。この新会社ではユーザーのニーズに素早く対応するとともに、カーボンニュートラルの実現に向けて、二輪車の電動化を進めていく。また、水素を燃料としたエンジンの開発にも取り組んでいくという。(経済ジャーナリスト・山田清志)
2030年度売上高1兆円、営業利益率8%以上を目指す
「カワサキモータースは当社グループ唯一のBtoC事業で、マーケットニーズの変化に素早く対応できる意志決定のスピードの向上が、成長のために重要な課題だった。足元ではコロナ禍での屋外レジャーの人気が高まり、業績は好調だが、コロナ後を見据えた新しいライフスタイルの提案、また脱炭素火に向けた環境対応などお客や社会ニーズに適応した製品、サービスの提供によりカワサキブランドをさらに強化していく方針だ。カワサキモータースの成長が当社グループの持続的な成長にとって必要不可欠なので、その事業方針は極めて重要だ」
川崎重工業の橋本康彦社長は冒頭の挨拶でこう話し、カワサキモータースはグローバルレベルでカワサキのブランドをリードしていく重要な会社であると強調した。
カワサキモータースは10カ国に製造拠点を持ち、連結子会社数23社、9325人の従業員を抱える。2021年の業績見通しは売上高4100億円、営業利益250億円を見込む。売上高のうち約6割が二輪車で、ついでオフロード四輪、汎用エンジンとなる。
「Let the good times roll カワサキに関わる人すべての、よろこびと幸せのために」という新会社のミッションと、「高付加価値のパワースポーツ(モーターサイクル、オフロード四輪、PWC)およびパワーユニット領域のリーディングプレイヤーとして持続的に成長する会社」というビジョンを掲げ、2030年度に売上高1兆円、営業利益率8%以上を目指す。
2025年までに10車種以上の電動二輪車を導入
そんなカワサキモータースがまず注力する分野としてあげたが、カーボンニュートラルの実現だ。同社の伊藤浩社長は「川崎重工グループ並びにパートナー企業の複合技術を活用し、カーボンニュートラルの実現を目指す。その際、バッテリーEVのみならず高効率エンジンとモーターの複合技術に、水素からつくるeフューエルやバイオ燃料を組み合わせることでカーボンニュートラルを図っていく」と話す。
具体的には、二輪とオフロード四輪の電動化を推進していく。例えば、二輪では2025年までに10機種以上の電動車(BEV、HEV)導入し、35年までに先進国向け主要機種の電動化を完了させる。一方、オフロード四輪では25年までに5機種の電動車を導入する。
二輪のHEVについては、エンジンのみ、モーターのみ、エンジンとモーター走行という3つのモートを持つことが特徴となっていて、高速道路ではエンジンのみ、市街地ではモーターのみ、ワインディングロードではエンジンとモーターを組み合わせたパワフルなハイブリッドモードがそうだ。
「当社が得意とする大型モーターサイクルをバッテリーEVで実現するには重量がかさむことが大きな課題となる。水素エンジンでは重量面でガソリンエンジンと大きく変わることもなく、大型モーターサイクルのカーボンニュートラルの実現には非常に有効な手段だと考えている。当社のフラッグシップモデルである『H2』のエンジンを活用した研究を川崎重工技術開発本部とともに継続していく」と伊藤社長は話す。
また、二輪車では「伝統と革新」ということで、往年の名車である「メグロ」や「Z900RS」などに代表される伝統を継承するモデルを今後も投入するとともに、カーボンニュートラルや先進安全領域で時代を切り拓く革新的な技術を追求していくという。
そのほか、持続的な成長に向けて、「五感で楽しむ」をコンセプトにした店舗づくりを進め、メルマガなどのカスタマーリレーションシップの強化で着実にカワサキファンを増やしている。ちなみにメルマガ登録数は2017年比で1130%増だという。
おかげで401cc以上の大型車の販売が2016年比で80%増、そして251cc以上の二輪車で国内3年連続トップシェアを獲得している。カワサキモータースは今回の事業方針説明会でカーボンニュートラル実現に向けた戦略を打ち出し、電動化や水素の利活用の分野でも業界をリードしようと考えている。