川崎重工は4月6日、液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」が、日刊工業新聞社主催の第51回 日本産業技術大賞において、最高位の内閣総理大臣賞を受賞したと発表した。
日本産業技術大賞は1972年に創設された歴史ある賞で、その年に実用化された革新的な大型産業設備や先端技術の開発など、産業界や社会の発展に貢献した製品を表彰するもの。
「すいそ ふろんてぃあ」は、次世代エネルギーとして期待される水素を、海外から効率よく安定して日本に輸送する技術の確立を目的に開発された世界初の液化水素運搬船。気体の水素を-253℃に冷やし、体積を800分の1に縮小した液化水素を75トン積載できる約1,250m3の高い断熱性を有するタンクを搭載している。
「すいそ ふろんてぃあ」の開発は、2015年のNEDO助成事業「未利用褐炭由来水素 大規模海上輸送サプライチェーン構築実証事業」として開始した。2016年には、岩谷産業、シェルジャパン、電源開発と技術研究組合CO2フリー水素サプライチェーン推進機構「HySTRA」を結成し、ユーザーからの視点を踏まえた安全性の検討など、開発を本格化した。
2017年度からは、本格的な設計・建造に着手し、2019年12月には同社神戸工場で進水式を行い、2021年12月に日本海事協会より船級を取得した。また、同年12月24日から2022年2月25日にかけて、オーストラリアで製造した液化水素を神戸港まで輸送する実証試験を無事に成功させた。
同社は、1987年よりJAXA種子島宇宙センターにロケット燃料用の液化水素貯蔵タンクを建設・運用するなど、35年前から水素関連技術を培ってきた。極低温である-253℃の液化水素を安全に輸送するための貨物タンクや荷役を行うための配管システムなどを開発したことにより、次世代エネルギーとして期待される水素の大量海上輸送を実現した。また、世界で初めて液化水素運搬船を製造しただけでなく、船の開発に併せて液化水素を安全に輸送するための国際標準規格づくりにも参画している。
このように、海外から水素を安全に輸送できるサプライチェーンを構築し、地球規模の社会課題であるカーボンニュートラルの実現にむけて将来的に大きく貢献する点が高く評価された。
今後同社は、水素社会の実現に向け、「すいそ ふろんてぃあ」の128倍の16万m3の液化水素を輸送する大型液化水素運搬船を開発し、水素供給コストの低減に取り組む。天然ガスや石油のように、水素が当たり前に使われる未来を実現すべく、「すいそ ふろんてぃあ」の開発で培った技術やノウハウを活かして大型液化水素運搬船の開発に取り組み、さまざまな企業と協力して次世代のエネルギーである水素を「つくる、はこぶ・ためる、つかう」サプライチェーンを構築するとしている。