岩谷産業、川崎重工業(以下「川崎重工」)、丸紅の日本企業4社は9月15日、豪州を拠点としたエネルギー・インフラ企業であるStanwell Corporation Limited(以下「Stanwell」)、APT Management Services Pty Ltd.,(以下「APA」)の2社とともに、豪州クイーンズランド州グラッドストン地区において再生可能エネルギー由来の水素を大規模に製造・液化して日本へ輸出するプロジェクト(Central Queensland Hydrogen Project)について、事業化調査を共同で実施することに合意し、6社で覚書を締結したと発表した。
ゼロカーボン社会の実現に向けて、水素は必要不可欠なエネルギー資源と期待されているため、海外からの輸送も視野に入れた水素サプライチェーンを構築する必要があると考えられている。しかし、化石燃料を原料として確立している現在の水素製造技術では、製造過程でCO2が排出されるため、ゼロカーボン社会の実現を見据えると、将来的にはCO2回収・貯留技術との組合せや再生可能エネルギー等を活用したCO2フリー水素の製造が求められる。CO2フリー水素源の獲得競争は世界的に激しさを増しており、日本のエネルギーセキュリティーの観点からも、安価な再生可能エネルギー電源と輸出港の確保が重要となる。
また、豪州クイーンズランド州は、年間300日以上晴天が続く気候で再生可能エネルギーのポテンシャルが非常に高い地域であることから、州政府の指針として化石燃料から再生可能エネルギー・水素へのエネルギートランジションを打ち出している。同州政府が所有する電力公社であるStanwell社も、この目標を達成する重要な役割を担っている。
このような背景から、岩谷産業およびStanwell社は 2019年から大規模なグリーン液化水素の製造および日本への輸出に向けた調査を行ってきたが、この調査結果を踏まえ、事業化に向けた検討を本格的に実施すべく、今回日豪6社で事業化調査を進めることにした。
この事業は、長期安定的かつ安価な水素製造および供給を行うことを目指しており、2026年頃に100t/日規模以上、2031年以降に800t/日以上の水素生産規模を想定している。
なお、現在の日本の液化水素生産量は最大30t/日であり、2031年以降、800t/日以上の生産規模は現在の日本における約26倍の生産規模となる。
■事業化検討における各社役割
Stanwell社が先立ってグラッドストン地区のアルドガ地域に水素製造拠点として確保している土地(約235ヘクタール)や、水素液化・積荷拠点として確保予定のフィッシャーマンズランディングの土地(約100ヘクタール)を活用することも検討。また、日本への輸出用だけではなく豪州国内の需要先に向けてもグリーン水素の供給を検討する予定だという。
事業化調査では、主にグリーン水素の製造技術や、水素を液化するプラントの建設、運搬船建造、それに伴うファイナンスおよび環境アセスメントの検討ならびに商用化モデルの検討を進めていく。各社は本事業の活動を通じて日豪両国政府が掲げる2国間の大規模水素サプライチェーンの構築に向けて尽力するとともに、ゼロカーボン社会の実現に貢献するとしている。