勝田・バリット組
TOYOTA GAZOO Racing(以下「TGR」)は4月26日、TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムに参加中の勝田貴元が、WRC初開催のクロアチアで、2回のベストタイムを記録、総合6位で完走したと発表した。
2021年FIA世界ラリー選手権(WRC)第3戦クロアチア・ラリーは、4月22日(木)から25日(日)にかけてクロアチアの首都ザグレブを中心に開催された。勝田は、コ・ドライバーのダニエル・バリットと共にヤリスWRCで参戦。開幕2戦に続き今回も総合6位で完走し、3戦連続でポイントを獲得。ドライバー選手権ランキング7位につけた。
東欧のクロアチアでWRCが開催されるのは今回が初めてであったが、砂利道や雪道を走らない、純粋なターマック(舗装路)ラリーが開催されるのは、勝田が初めてヤリスWRCをドライブした2019年8月のラリー・ドイチェランド(ドイツ)以来となる。
クロアチアのステージは全てターマックだが、スムーズな路面もあれば、荒れて崩れかけているところもあり、舗装の状態は1本のステージ内でも大きく変化する。また、先行車がコーナーの舗装されていない路肩にまでタイヤを落として走る「インカット」を行うことにより、勝田のように出走順が後方の選手は、泥や砂利が多く散らばった非常に滑りやすい路面を走行しなければならない。
加えて、今季から履くピレリのターマック用タイヤの経験が十分ではなかったこともあって、初日の金曜日はかなり難しい状況であった。SS4ではジャンクションをオーバーシュートし、SS6ではスピンを喫するなど経験不足によるミスが重なり、約1分を失い金曜日は総合9位に留まる。
しかし、勝田のドライビングコーチであり、ターマックラリーでは選手が走る前にステージを走行して路面の情報を伝える、グラベルクルー(=ルートノートクルー)を務めるユホ・ハンニネンと、そのコ・ドライバーであるクレイグ・パリーの的確なアドバイスにより、勝田はドライビングとペースノートを改善。土曜日は格段にペースが良くなり、ロングステージのSS10では2020年の最終戦ラリー・モンツァのパワーステージ以来となる、キャリア2度目のベストタイムを記録。そのステージの再走となるSS14でもベストタイムをマークした。
また、それに伴い順位も着実に上がっていき、最終日の日曜日には安定して5番手前後のタイムを刻み総合6位に浮上。開幕戦ラリー・モンテカルロ、第2戦アークティック・ラリー・フィンランド、そして今回のクロアチア・ラリーと、3戦連続で総合6位を獲得した。
勝田の次戦は、5月20日から23日にかけてポルトガル北部で開催される、WRC第4戦「ラリー・ポルトガル」。このイベントは、今シーズン最初のグラベル(未舗装路)ラリーであり、下層に石が潜む砂状のグラベル路面を特徴とする。勝田は過去このラリーに3回出場しているが、トップカテゴリーのWRカーによる参戦は初めてであり、新たなチャレンジとなる。
Result
1 セバスチャン・オジエ/ジュリアン・イングラシア (トヨタ ヤリス WRC) 2h51m22.9s
2 エルフィン・エバンス/スコット・マーティン(トヨタ ヤリス WRC)+0.6s
3 ティエリー・ヌービル/マーティン・ヴィーデガ (ヒュンダイ i20クーペ WRC)+8.1s
4 オィット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ (ヒュンダイ i20クーペ WRC)+1m25.1s
5 アドリアン・フォルモ−/ルノウ・ジャムール (フォード フィエスタ WRC)+3m09.7s
6 勝田 貴元/ダニエル・バリット (トヨタ ヤリス WRC)+3m31.8s
勝田貴元
いくつかのステージは良いタイムで走ることができましたが、それ以外のステージのパフォーマンスにはあまり満足できませんでした。全体を通じてアップ&ダウンが激しかったのは事実ですが、それも より良いドライバーになるための学習の一部だと考えています。土曜日に2回ベストタイムを刻むことができたのは、とても良かったと思います。特に、再走ステージでのベストタイムは、他のドライバーと同じような路面コンディションで出したタイムなので、なおさらです。初日の金曜日と比べれば大きく進歩したと思いますが、それは経験を積んだからです。今回のラリーよりも前に、あのような道を走ったことがあまりなかったので、何が起きるかも分からず、自信を持つこともできませんでした。しかし、ステージを重ねるごとに多くを学び、それが自信につながり、余裕を持って走れるようになりました。とても良い週末になりましたし、グラベルクルーを務めてくれたユホとクレイグ、そしてチームのみんなに感謝します。
ユホ・ハンニネン(インストラクター)
今回のタカの戦いにはとても満足しています。ラリー前に新しいタイヤを履いてドライコンディションのターマックをヤリスWRCで走った経験があまりなかったこともあり、それがステージのタイムにも現れていました。路面のグリップが少し低いところではまだ少し躊躇し、あまり自信が持てないようでした。しかし、土曜日に路面のグリップが良くなると、同じステージで2回ベストタイムを記録しました。2回目の走行では路面に砂利が多く出ていたので、さらに難しかったと思います。次のターマックイベントとなるベルギーのイープル・ラリーは路面のグリップが低いステージが多く、コーナーのインカットによって路面にグラベルが多く出ると思いますので、今回のクロアチアでの経験がイープルで活かされると思います。また、私としては今回も彼のグラベルクルーを務めたことにより、タカのペースノートにどれだけ詳細な情報を加えたらいいのか、その適切なバランスを理解しましたし、グリップが低い路面での自信の持たせ方も分かりました。