金沢大学 理工研究域 機械工学系の辻口拓也准教授、ナノ生命科学研究所の髙橋康史教授、大阪大学 大学院基礎工学研究科の大戸達彦助教、筑波大学 数理物質系 伊藤良一准教授らの共同研究グループは3月4日、二酸化炭素(CO2)の電気化学還元によるギ酸の合成プロセスにおいて、酸化還元グラフェンとスズ(Sn)との界面を活用することで高効率にギ酸を合成できること、さらにその反応メカニズムの解明に成功したと発表した。
CO2と再生可能エネルギー由来の電気を用いてエネルギーキャリアであるギ酸を合成するプロセスは、工場などから排出されるCO2の資源化・再利用技術として注目を集めているが、ギ酸の合成効率にはいまだに改善の余地が大きく残されているという。特に、このプロセスに用いる触媒には、原料であるCO2を効率的に連続供給する触媒担体が必要だとされている。
そこで同研究では、CO2を効率良く吸着する担体として酸化還元グラフェン(rGO)に注目し、これを扱いやすいスズ触媒の担体として利用した。このSn/rGO触媒と従来のSn触媒を比較すると、担体導入によってCO2吸着量が4倍程度向上。触媒活性サイトを直接イメージングにより可視化できる走査型電気化学セル顕微鏡により、触媒と担体が隣接している箇所において、担体に吸着したCO2が連続的に触媒へ供給されることで触媒と担体が隣接している箇所で多くのギ酸が合成されている様子の可視化に世界で初めて成功。この効果により、提案した触媒では従来の触媒と比較して担体を導入しただけで1.8倍のギ酸合成効率が得られた。これらの知見はギ酸のみならずCO2吸着を反応の初期ステップとして共有しているメタンやメタノール、オレフィンにも適用できる可能性があると期待される。CO2の電解還元によって合成される全ての化成品の触媒活性の向上にもつながり、CO2電気化学還元による有用な化成品製造プロセスの基盤技術になると期待される。
今後、同研究成果を起点に、時間的変動や地域偏在性の大きい再生可能エネルギー由来の電力を、地球温暖化防止の観点から効率的な利活用が求められるCO2を用いてギ酸に変換して輸送・貯蔵する技術の確立に結びつけることで、エネルギー問題と地球温暖化問題の解決に大いに貢献することが期待されている。
なお、同研究成果は、2021年3月2日(米国時間)に米国化学会誌「ACS Catalysis」のオンライン版に掲載された。