鹿島は、ウィンクスと共同で、小型タブレット端末を活用して既存埋設物を正確に把握し、検知するシステムを開発した。
このシステムは、高精度測位機能をもつパナソニック製のタブレット端末「TOUGHPAD」(タフパッド)に、自らの位置と予め入力した埋設物の位置とを地図情報とともに表示するもので、埋設物に近づくと光と音で警告。タブレット端末を重機の運転席に設置することで、掘削作業中のヒューマンエラーによる埋設物の破損事故を防止すると云う。
また同社は、このシステムの適用実験を、青森県つがる市のウィンドファームつがる建設工事の掘削作業で、実施。良好な結果を得たとしている。
[開発の背景]
重機で掘削作業を行う際、既設水道管などの埋設物を防護するため、綿密な確認や誘導のもと作業が行われるが、夜間や積雪時など、目印が見えにくい状況での作業や、また重機の位置を勘違いするといったヒューマンエラーにより、埋設物を破損してしまう事例が発生する。
近年、スマートフォンなどの小型端末で、GNSS測位が可能なデバイスが普及しているが、測位誤差が数mから場合によっては数十m発生するため、このような作業の誘導に活用するには課題があったと云う。
今回、高精度測位技術のひとつであるVRS(Virtual Reference Station:仮想基準点)方式のRTK-GNSS測位(※)機能をもつタブレット端末を用い、自らの位置と埋設物の位置とを高精度に把握し、検知するシステムを開発。土木現場での適用実験を経て、その実用性を確認したとのことだ。
※RTK-GNSS測位:GNSSと基準局の電波を同時に送受信することで、計測地点を高精度かつリアルタイムに算出する
[システムの概要と特長]
重機の操縦席に設置されたタブレット端末には、地図上に、VRS方式の測位機能による誤差10cmレベルの自らの位置を表示。地図にはあらかじめ、埋設物の名称や種類、埋設深さなどの情報が入力されており、作業中に重機周辺の埋設物の詳細な情報が画面上に図示される。
重機のオペレータは、この画面を見ながら操作することで、埋設物の位置を把握しながらの、安全・確実な作業が可能に。また、重機が埋設物に必要以上に近づくと、LED警告灯が音と光で警告、万が一の見落としなどによる破損事故を防止する。
また、使用したタブレット端末は、測量に用いる従来型のRTK-GNSSの装置に比べ小型、軽量で可搬性が高く、狭い重機の運転席にも設置が容易。汎用性の高いOSのため、既存のアプリケーションとの連携がしやすいという利点もあるとのことだ。
[現場での適用実験]
青森県つがる市で施工中のウィンドファームつがる建設工事の、送電線埋設のための連続した掘削作業で、同システムの適用実験を実施。トレンチャーと呼ばれる特殊な掘削重機を使用した施工区間の9割以上で、システムは十分にその機能を発揮し、冬期間で積雪状況下での掘削作業を安全・確実に完了したとしている。
鹿島は今後、同システムを他の重機作業にも適用して実績を蓄積するとともに、支障物や埋設物の多い都市土木工事などへの適用も視野に入れ、さらなる改良を進める。
また、正確な測位情報は土木工事における自動化施工技術に必要不可欠であり、本システムを活用した自動化施工の技術開発を加速していくとしている。
[工事概要]
工事名:ウィンドファームつがる建設工事
発注者:グリーンパワーつがる合同会社
工事場所:青森県つがる市
工期:2017年8月~2020年5月
施工者:鹿島建設株式会社