東日本旅客鉄道(JR東日本)は6月4日、水素をエネルギー源とした(燃料電池/FC)ハイブリッド(HV)車両の試験車両を製作し、実証試験を行うことを発表した。
JR東日本では「変革 2027」においてESG経営として「エネルギーの多様化」を目指しており、その一環として水素エネルギーの利活用を推進。これまで水素をエネルギー源とする燃料電池車両の開発を進めてきたが、今回、”ハイブリッド車両(燃料電池)試験車両”を製作し、営業路線にて実証試験を実施することとした。
車両は、世界初となる70MPaの高圧水素を利用できる燃料電池鉄道車両で、これにより走行距離を延ばすことが可能になると云う。
JR東日本は、水素を活用した取り組みを推進し、低炭素社会への動きを加速していくとしている。
1.ハイブリッド車両(燃料電池)試験車両製作と実証試験の目的
JR東日本は、水素を燃料とする燃料電池と蓄電池を電源とするハイブリッドシステムを搭載した試験車両を製作し、実使用環境下での走行試験を伴う実証試験を実施。安全性、環境性能、車両性能などを確認する。
また実証試験を通じ、燃料電池制御技術の最適化や、地上設備に関する技術開発項目の検討など、将来の燃料電池車両実用化に向けてデータを収集を行う。
2.ハイブリッド車両(燃料電池)試験車両の概要
(1)構成:FV-E991系2両(1M1T)1編成
(2)主な仕様:
(3)製作スケジュール:2021年度内に落成予定
3.実証試験について
(1)実証試験実施路線:鶴見線、南武線尻手支線、南武線(尻手~武蔵中原)
(2)実証試験開始スケジュール:2021年度の試験開始に向けて今後調整を行う。
(3)実証試験に向けた連携について
・神奈川県、横浜市、川崎市と、低炭素化・スマート化の協力などの「包括連携協定(2015年1月締結)」に基づいて連携し、実証試験に向けた環境整備を行う。
・日本貨物鉄道、昭和電工および JR東日本の3社で実証試験に伴う設備整備に関する基本合意を締結(6月3日)。
・トヨタ自動車が、水素を活用した包括的な業務連携に関する基本合意(昨年9月締結)に基づき、鉄道車両への燃料電池技術の導入に向けて協力する。
[ハイブリッド(燃料電池)試験車両の概要]
1.車両構成イメージ
2.ハイブリッドシステムの概要
<燃料電池と水素タンク>
燃料電池は、車両と空気中の酸素の化学反応により電機を生み出す装置。水素タンクには最大70MPaの高圧水素が蓄えられる。
<燃料電池ハイブリッドシステム>
燃料電池ハイブリッドシステムは、燃料電池と主回路用蓄電池の両方から、主電動機や補助電源装置にエネルギーを供給するシステム。
蓄電池には、回生ブレーキによる電力供給、及び主電動機等の負荷電力が小さいときの燃料電池からの電力供給により、エネルギーが蓄えられる。