東日本旅客鉄道(JR東日本)は、将来の労働人口の減少を見据え、ICT等の先端技術を活用した技術革新に取り組んでいる。その一環として、線路の状態を遠隔監視できる線路設備モニタリング装置を、今回、本格導入する。
またこの装置の導入で、線路保守にビッグデータ分析に基づく、CBM(※)型のメンテナンス手法の導入を図るとしている。
なお、在来線営業列車に測定装置を搭載して、線路状態を遠隔で監視する技術の実用化は国内初だと云う。JR東日本は、同装置を2020年度末までに50線区に導入し、当社の線路延長の約70%をカバーするとしている。
※CBM:状態を把握して最適な時期に補修を行うメンテナンス手法
[線路設備モニタリング装置の概要]
線路設備モニタリング装置は、「軌道変位モニタリング装置」と「軌道材料モニタリング装置」で構成され、営業列車の床下に搭載される。
「軌道変位モニタリング装置」では、レールにレーザーを照射して線路のゆがみを測定。測定したデータは、無線によって保線技術センターに伝送する。
また、「軌道材料モニタリング装置」では、距離を測定できるカメラ(プロファイルカメラ)と、濃淡が分かるカメラ(ラインセンサーカメラ)で、レールとマクラギを固定する金具(レール締結装置)の状態やレールとレールをつなぐボルト(継目板ボルト)の状態などを撮影する。
[線路設備モニタリング装置の特徴]
(1)軌道変位モニタリング装置
鉄道総合技術研究所が開発した技術をさらに発展させ、測定装置を営業車両の狭い床下に搭載することを可能にした。営業列車で測定するため、無人で測定する技術を確立。待避線に入った場合や折返し運転を行った場合でも、位置を検知して自動的に処理する。
また、測定したデータの中から、ノイズ等が少なく最も品質の高いデータを選定する技術を確立した。
(2)軌道材料モニタリング装置
在来線の最高列車速度、時速130kmでもマクラギ1本1本の状態が確認できる画像の収録が可能。特に、レール締結装置や継目板ボルトの不具合については、自動で判定できる技術を確立した。
[線路設備モニタリング装置の活用]
線路の状態を緻密に把握できるため、タイムリーな補修作業ができ、乗り心地向上や効果的なメンテナンスが可能になり、営業列車が走行した状態での、線路の補修作業の結果を評価できる。
また、多い所では毎週行っていた徒歩での線路点検作業を効率化、社員の安全性向上に加え、線路点検の品質向上が期待できる。
なお、これら装置で測定及び収録したデータのノイズ除去や位置合わせ、不具合の抽出等のデータ処理は、グループ会社の日本線路技術が担当する。
[導入予定数とスケジュール]
軌道変位モニタリング装置を39台、軌道材料モニタリング装置を36台導入。2020年度末までに50線区への導入を予定。