I-PACEの蓄電池を元に英国最大級のエネルギー貯蔵システムを構築する
ジャガー・ランドローバーの日本法人は8月28日、英本国のJLRが再生可能エネルギーシステムに取り組むWykes Engineering(ワイクス・エンジニアリング)と提携。自社EVのI-PACEのセカンドライフ(二次利用)・バッテリーから太陽光と風力から得られた電力を蓄えることができる英国最大級のエネルギー貯蔵 システムを構築すると発表(英国ゲイドン発/8月23日)した。
このパートナーシップは、2039年までに排出ガス量実質ゼロを達成するというJLRの戦略の一環であり、循環型経済の原則を貫くための重要な一歩となる。
そのシステム(バッテリーエネルギー貯蔵システム/BESS)概要は、I-PACEのセカンドライフ・バッテリーを30個を1基のコンテナに取り纏めたもので、フル充電で最大2.5MWhのエネルギーを蓄えることができる。
これらコンテナに収めるバッテリーユニットは、プロトタイプ車両や開発車両 から取り外したもの。今後JLRは、そのようコンテナを次々と繋げ、2023年末までに合計7.5MWhのエネルギー(750世帯の1日分の電力に相当)を貯蔵する大規模な再エネ貯蔵システムに仕立て上げることを目指す。
また更なる将来には、実際の使用済みの量産車から取り外したセカンドライフ・バッテリーを使って新たなコンテナを相次いで追加していく計画だ。
電力消費のピーク時・オフピーク時、双方に応える電力システム構築へ
コンテナ一基あたりのバッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)は、エネルギー効率を最大化するべく最新鋭のインバーターに接続。これらは電力消費のピーク時に送電網へ直接電力を供給するだけでなく、オフピーク時には電力網から電力を引き込んで電力ピーク時のために備えることができる。
BESSは、そのようなエネルギーの急激な増減に適切に対応。晴天時や風の強い日に太陽光や風力で得られたエネルギーを蓄え、必要な時は直ちに放出できるフレキシブルさを備えているため、電力網の脱炭素化にとっては不可欠な技術となる。
そこでワイクス・エンジニアリングとJLRは、BESSを拡大するにあたって、新たな手順を加えることなく、1台毎のI-PACEのセカンドライフ・バッテリーをシステムの再構築せずに、追加できるシームレスなコンテナ・システムの設計に取り組んだ。
従って1台のI-PACEから取り外したバッテリーは、コンテナ内の空いているラックに差し込むだけで、連続的に使用できるようになり、この結果、同プロジェクトの持続可能性を最大限に高めることができるという。
I-PACEの高性能蓄電池は、二次利用でも70~80%の容量を蓄えられる
ちなみにI-PACEのバッテリーは、現時点で最高水準の技術水準で設計されているため、ととえ低エネルギー状態になった場合でも、少なくともフル充電時の70~80%の容量を蓄えることができる。それゆえシステム全体の電力貯蔵量は、2030年までに年間200ギガワット時を超え、300億ドルを超える資産価値を生み出すようになる。
この取り組みについてJLRのストラテジーおよびサステナビリティ担当エグゼクティブ・ディレクターのフランソワ・ドッサ氏は、「私たちはEV用バッテリーのリサイクルを含め、当社車両のバリューチェーン全体で、持続可能なアプローチを目指しています。
私たちのEV用バッテリーは 最高レベルの水準で設計しており、今回の革新的なプロジェクトを通じて、セカンドライフ・バッテリーを安全に再利用できることを証明します。
車載バッテリーの再利用は、JLRにエネルギー貯蔵技術の先にある新しい循環型経済を生み出します。 また仮にバッテリーの状態が二次利用に必要なレベルを下回った場合、我々はバッテリーを速やかにリサイクル工程に送り、真の循環型経済実現の一環として、今度は原材料を回収して再利用できるようにする予定です」と語った。
ソーラーパークの規模を限界まで拡大し、土地面積に対する発電量の最大化へ
またJLRのサステナブル・インダストリアル・オペレーションズ担当ディレクターのルーベン・チョーリー氏は、「再生可能エネルギーの真の可能性を引き出せる同プロジェクトで、ワイクス・エンジニアリングと協力できることを嬉しく思います。
このようなセカンドライフ・バッテリー・プロジェクトの開発は、JLRが新しい循環型経済のビジネスモデルを確立させ、2039年までの排出ガス量実質ゼロ達成に向けて推し進めていくことが極めて重要です」と来るべき近将来のビジョンの行く末を説明した。
一方でワイクス・エンジニアリング・マネージング・ディレクターのデビッド・ワイクス氏は、「私たちが開発したシステムの大きな優位性のひとつは、コンテナ・グリッドに車両1台毎のセカンドライフ・バッテリーを接続できることにあり、この結果、太陽光から得られる電力を連続的かつ効率的に蓄えられることです。
このようなシステムでないと、グリッドの容量が 上限に達した時に折角蓄電させてきた膨大なエネルギー試算が突然失われてしまう可能性すらあります。
余剰エネルギーを個々の車両のセカンドライフ・バッテリーに蓄え、必要な時に素早く供給します。これにより、ソーラーパークのパネル数を“限界まで増やして”、使用している土地面積に対する発電量を最大化することができるのです」と話している。