日揮ホールディングス(以下、日揮HD)は11月13日、グループ会社の日揮と共同運営するコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)ファンドである〝JGC MIRAI Innovation Fund 〟(日揮みらいファンド)を通じて、あらゆる種類のリチウムイオン電池(以下、LIB)から重要鉱物を効率的にリサイクルするドイツのスタートアップ「tozero 」に出資したことを発表した。
LIBは、電池材料にリチウム金属酸化物を用い、リチウムイオンが正極と負極の間を移動することで充放電を行う方式の二次電池。
二次電池として非常にエネルギー密度が高く軽量化が可能なため用途が広く、電気自動車(EV)や定置用電池、スマートフォンやパソコン、ドローンなどに使用されるが、その原料となるレアメタルを取り巻く環境は、様々な要因からグローバルサプライチェーンが不安定化しやすくなっていることに加えて、将来的にはEVの普及に伴い、LIB向けの供給不足も予測。また、欧州に於いては、電池規則(※1)や環境負荷の低減を求める社会要請などからそのリサイクルの必要性が年々高まっていると云う。
tozeroは、こうした課題を背景に、廃材となっているあらゆる種類のLIBを粉状にした「ブラックマス」を原料に、リチウムとその他鉱物を分離し、かつリチウムを効率よく回収する画期的なプロセスを開発。欧州で回収・リサイクルした材料を、サプライチェーンに再導入することで、新たなLIBの製造を支援し、循環型経済を促進することを目指していると云う。
<tozeroの概要>
– 会社名:tozero
– 設立:2022年
– 本社:ドイツ連邦共和国 ミュンヘン
– 創業者:Sarah Fleischer(CEO)(タイトル写真左)、Dr. Ksenija Milicevic Neumann(CTO)(タイトル写真右)
– 事業内容:リチウムイオン電池のリサイクル。
日揮は、tozeroへの出資を通じて、同社の画期的な技術と、自社グループが非鉄金属製錬分野(※2)で培ってきたエンジニアリング技術を活用し、国内外でのLIBリサイクルに寄与できる事業の検討を行うと共に、LIBリサイクルシステムの確立に向けた取り組みを推進すべく、関係各社との連携体制を構築。当該事業を具現化することによって、カーボンニュートラルおよび循環型社会の実現に貢献していきたいとしている。
また、日揮グループは、CVCファンドを通じて〝カーボンニュートラルの実現〟と〝持続可能で強靭なインフラの構築〟、〝人生100年時代を見据えた生活の質向上〟、〝産業のスマート化〟を対象テーマに、安全・安心で持続可能な社会システムの構築に寄与する革新的な技術やビジネスモデルを有する、国内外のスタートアップに対して投資を行ってきたが、今後も、安全・安心で持続可能な社会システムの構築に向け、これら投資を続けていくとしている。
※1:(経済産業省)「GX市場創出に向けた考え方の整理 」(PDF)の26頁を参照。
※2:(日揮HD)非鉄製錬
<JGC MIRAI Innovation Fundの概要>
– 登記上の名称:JGC MIRAI Innovation Fund L.P.(日揮みらい投資事業有限責任組合)
– 設立:2021年4月
– 無限責任組合員:グローバル・ブレイン株式会社
– 運用総額:50億円
– 運用期間:10年間
– 有限責任組合員:日揮ホールディングス株式会社、日揮株式会社
– 投資対象:日揮が構想する安全・安心で持続可能な社会システムに関連したスタートアップ。日揮との協業が見込めるスタートアップ。