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2024年12月15日【トピックス】

JDパワー、日本のEV所有者を対象とした顧客満足調査を実施

坂上 賢治

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CS(顧客満足度)調査・コンサルティングのJ.D. パワー ジャパンは12月13日、J.D. パワー 2024年・日本EVエクスペリエンス(略称EVX/Electric Vehicle Experience)オーナーシップ調査SMの結果を明らかにした。

 

当該調査は、2021年1月~2024年3月に初度登録された電気自動車(EV)及びプラグインハイブリッド車(PHEV)の乗用車を保有するユーザーを対象に、満足度や保有体験を聴取するもので日本では今年が初の実施となる。

 

それによると、軽EVと登録EVの保有環境や利用実態に大きな違いがあること。ICE/HEVからEVに買い替えたユーザーの7割以上が維持費低減を実感していること。経年により航続距離性能(バッテリー性能)劣化を体感するユーザーが増加している傾向などが見て取れたとしている。そうした概要は以下で記載した通りとなる。

 

軽EVと登録EV、保有環境や利用実態に大きな違い

 

まず電気自動車(EV)自体を、軽自動車のEV(以下軽EV)と、登録車のEV(以下登録EV)で分けてみると保有環境や利用の実態に大きな違いが見られる。

 

軽EVユーザーでは、戸建て住宅居住者の割合が91%に達し、複数の車両を保有している世帯は65%だった。これに対し登録EVユーザーでは、戸建て住宅居住者の割合が80%、複数台の車両を保有している世帯は54%と軽EVユーザーに比べ少ない。

 

利用用途では、軽EVは通勤・通学、買い物や用足し等の個人/家族利用といった日常生活の移動手段としての利用が中心で、ドライブ(19%)や遠出(13%)等の利用は少ない。対して、登録EVは日常生活の移動手段に加えて、ドライブ(42%)や遠出(56%)といった長距離での利用も多い傾向がみられた。

 

ICE/HEVからの買い替え層の7割以上が維持費の低減を実感

 

ガソリン/ディーゼル(ICE)車やハイブリッド車(HEV)から軽EVに買い替えたユーザーの75%、登録EVに買い替えたユーザーの71%が「今の車の方が維持費(充電、アフターサービス、修理等)がかなり安い/やや安い」と回答した。従ってEV普及促進に於いてICE/HEVと比べたEVの経済性をアピールすることは有効と考えられる。

 

また、EV購入後に経済効果を実感しているユーザーは次回のEV購入意向も高いことが判った。維持費の低減を実感したユーザーに於ける次回購入時EV検討率(必ず/たぶん検討する)は、軽EVで88%、登録EVで87%と高く、維持費の安さはEVをリピート購入するための動機にもなっている。

 

登録EVユーザーの3割近くは基礎充電を自宅以外で行っている

 

基礎充電を自宅以外で行うユーザーは、軽EVでは9%、登録EVでは27%という結果であった。戸建てに住む割合が高くバッテリー容量も小さい軽EVのユーザーが自宅で基礎充電を行うのは自然と言えるが、バッテリー容量が大きく充電に時間が掛かる登録EVで約3割のユーザーが自宅外で基礎充電を行っているというのは意外である。

 

自宅外で基礎充電を行う登録EVユーザーはCHAdeMO(チャデモ)やスーパーチャージャー等の急速充電網や充電設備の備わった駐車場や施設を利用していると推察されるが、見方を変えれば基礎充電インフラとして利用できる環境が身近にあるなら、自宅に充電環境を整えられない集合住宅居住者等でもEVを保有、利用が可能であることを示している。

 

買い替え登録EVユーザーの約2割はEVからの買い替え

 

登録EVユーザーのうち、「(直前車からの)買い替え」と回答した割合は81%、そのうち18%はEVからの買い替えであった。

 

日産リーフの登場以来、日本の登録EV市場は十数年を経るが、いまだEV乗用車のシェアは2%に満たない(2023年1~12月の登録乗用車新車販売に於けるEVシェアは1.7%/出典:一般社団法人日本自動車販売協会連合会/自販連)。

 

登録EV買い替え需要の18%が、既存EVオーナーの乗り換えで占められているとすれば、既にEVマーケットが限定的なEV嗜好層の買い替え需要に支えられている可能性も考えられる。EV市場を拡大させるためには、ICE/HEVからのスイッチ層を増やすこと、すなわち「初めてのEV購入者」をいかにして拡大させるかがカギである。

 

経年により航続距離性能(バッテリー性能)劣化を体感するユーザーが増加する

 

対象車両を購入してから現在までの航続距離の変化について質問したところ、軽EVユーザーの15%、登録EVユーザーの19%が「(購入時よりも航続距離が)短くなった」と回答した。

 

さらに登録EVユーザーの傾向を保有期間別にみると、保有12ヶ月以内では「短くなった」との回答は10%だが、13~24ヶ月で17%、25ヶ月以上では32%と保有期間が延びるに従い「短くなった」との回答割合が増加することがわかった。

 

近年のEVでは、バッテリー冷却システムの搭載により劣化率は以前より改善されているが、ユーザーの体感としては経年により劣化を感じる人の割合が増える様である。

 

バッテリー劣化の問題は当然満足度にマイナスに作用する。登録EVユーザーの内「短くなった」と回答した者の航続距離評価は593ポイントで、「変わらない」とするユーザーに比べ45ポイント低い。これはICE/HEVとは大きく異なる課題である。今後も性能劣化の改善に向けた取り組みが必要と考えられる。

 

 

J.D. パワー 2024年 日本EVエクスペリエンス(EVX) – オーナーシップ調査SM概要
2021年1月~2024年3月に初度登録されたEV/PHEV(乗用車のみ。貨物車を除く)を保有するユーザーを対象に、EV/PHEV保有と利用の実態、満足度を聴取する調査で、日本では本年が初の実施となる。※PHEVについては参考情報としてのデータ収集となった。

 

  • 実施期間:2024年7月~8月
  • 調査方法:インターネット調査
  • 調査対象:初度登録2021年1月~2024年3月のEV/PHEVを保有するユーザー
  • 調査回答者数:3,379
    *なおJ.D. パワーが調査結果を公表する全ての調査は、J.D. パワーが第三者機関として自主企画し実施したもの。
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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。