4月からトヨタの佐藤恒治次期社長が副会長に加わる
日本自動車工業会(自工会)は3月23日、オンラインで記者会見を開き、豊田章男会長(トヨタ自動車社長)が来年5月の任期までの1年間強続投すると発表した。今年1月のトヨタの社長交代発表に伴い、豊田社長は自工会会長の辞意を表明していた。(佃モビリティ総研・松下次男)
記者会見には豊田会長のほか、片山正則いすゞ自動車社長、日髙祥博ヤマハ発動機社長、三部敏宏ホンダ社長、内田誠日産自動車社長、鈴木俊宏スズキ社長、永塚誠一自工会専務理事の現副会長、それに4月から副会長就任予定の佐藤恒治トヨタ自動車次期社長が参加。
会見では、冒頭に片山副会長が今回の決定に至った経緯や自工会の改革案などを説明した。
豊田氏の自工会会長職辞意表明は、自工会の幹部は申し合わせで個社の執行役トップが就くとの方針から。4月にトヨタの会長に就任する豊田氏はこのため自工会会長職を後任に譲る意向を示したもの。
副会長の役割を増やし、チームで自工会を運営していく
これに対し、片山副会長は自動車産業を取り巻く環境が劇的に変化するなか、強い危機感をもって、様々な改革に取り組んできた豊田会長に任期満了化まで引き続き会長をお願いすることを副会長の全員の総意で決議したと話す。
と同時に、事態の重要性を鑑み全理事の意見も拝聴することにし、緊急ミーティングを開いて討議した結果、全理事が豊田氏の会長職を慰留することで一致したという。
また、自工会幹部に各社の執行役トップが就くというガイドラインについても三部副会長などから状況に合わせて「柔軟に対応すればよいのではないか」との考えが示された。
一方で、豊田会長が辞意表明に至った背景について片山副会長は、自工会の運営上の負担があまりにも会長に依存しすぎだったことも問題との認識を示し、会長続投をお願いするうえで、自工会の運営方法の改革も不可欠との考えを示した。
自動車産業は今や100年に一度と言われる大変革期に差しかかっており、カーボンニュートラルや経済安全保障など様々な課題が目白押し。国内に限っても広島サミットへ向けた提言、東京モーターショーから名称変更し秋に開催する「ジャパン・モビリティ・ショー」への対応などが求められている。
各副会長も「今までにない激動の1年」との見方を示す。
そこで、自工会の運営に副会長がこれまで以上に関わり「チームで運営する」方向へ改革することを決めた。
理事会前日に副会長・理事全員の慰留を受けて続投決める
片山副会長によると、こうした方策を示した案を豊田会長に持ち掛けることで、会長続投の了承を得たという。
豊田会長はこうした方針を受けて、任期中の会長職を続投することにした。そして自身の役割について本来は「自工会会長、豊田社長、モリゾウ」の三刀流から「モリゾウ一本」にするつもりだったところを、モリゾウと「自動車産業550万人に貢献する役割に徹する」と話す。
このため、トヨタを代表する役割については4月からトヨタの社長に就任する佐藤次期社長に委ね、佐藤氏が自工会副会長に加わることになった。
秋に開催するジャパン・モビリティ・ショーでは「スタートアップの出展」や世界中の有識者による「モビリティ版ダボス会議」などを目玉の施策の一つにする考えを永塚副会長が示した。
このほか自動車メーカー各社がそろって満額回答した春闘では、組合が組織されていうのは自動車産業550万人の「3割」にとどまる」としたうえで、先行した回答結果のトレンドが末端に広がることに期待感を示した。