通常総会後に開かれた懇親会は、昨年に続き多数の参加者が列席した
日本自動車会議所は6月11日、東京・大手町の経団連会館で通常総会後の懇親会を開催した。冒頭、再任された内山田竹志会長が挨拶し、直前に相次いだ自動車メーカー各社の型式指定申請における不正の再発防止などを呼びかけるとともに、自動車関連産業の一層の発展を訴えた。(佃モビリティ総研・松下次男)
4年ぶりに再開した昨年に続き、今年も懇親会が通常方式で開かれ、内山田会長は会員団体・企業の交流拡大のほか、自動車関係諸税の負担軽減への取り組み、カーボンニュートラル実現に向けた活動強化などをアピール。型式指定における不正問題については「自動車産業の信頼を揺るがしかねない大きな問題だ。一致団結してこの問題に対処していきたい」と述べた。
総会後の懇親会には、齋藤健経済産業相、斉藤鉄夫国土交通相、松本剛明総務相、盛山正仁文部科学相などのほか、国会議員も多数参加。その来賓挨拶では、下請法違反や型式指定申請における不正行為の再発防止の呼びかけとともに、日本の基幹産業としての自動車産業のさらなる発展を期待する声が寄せられた。
自動車産業をめぐっては、日産自動車に対する公正取引委員会の下請法違反勧告や新たにトヨタ自動車、ホンダ、マツダ、スズキ、ヤマハ発動機の自動車メーカー5社の型式指定申請における不正事案の発覚がこのところ相次いだ。このため、各大臣の来賓挨拶でもこうした事案に一言触れ、再発防止に言及するとともに、新たな発展を期待する声を寄せていた。
齋藤経産相は、まず自動車産業が今年の春闘で賃上げの先導役を果たしことに感謝し、「成長軌道への好循環を感じている」と述べたうえで、これを中小企業へとつなげることの重要性を求めた。
加えて、自動車産業を取り巻く世界環境は「想定以上のスピードで変化」していると述べ、わが国の基幹産業かつ最重要産業である自動車産業がこうした潮流を勝ち抜くためにも政府がサポートしていく考えを表明。
具体的には、日本経済全体の大きな投資の柱となっているGX(グリーントランスフォーメーション)、DX(デジタルトランスフォーメーション)を通じ、「GXではEV(電気自動車)やプラグインハイブリッド車(PHV)、ハイブリッド車(HV)などの電動化、水素、合成燃料などの多様な選択肢を自動車政策」として推進。
DXでは、モビリティDX戦略を策定し、「SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)の普及や自動運転の社会実装、官民連携した研究開発を進めていく」などと挨拶した。
斉藤国交相は型式指定の所管官庁であることから、今回の不正発覚にあわせ「問題を根本から防止する対策にしっかりと取り組んでいく」と述べた。
また、2050年カーボンニュートラル実現に向け、電動車導入に対する支援策の大幅拡充や自動運転移動サービスの補助事業の推進するほか、地域交通における担い手不足や移動の足対策として日本版ライドシェアの拡充に取り組むと表明。
さらにバス・トラックやタクシーのドライバー担い手不足解消策支援や物流のいわゆる2024年問題に対し多層下請構造の是正法案を今国会で成立したと説明した。
加えて、自動車の安全や環境に係る基準の国際調和および認証の相互承認を推進している自動車基準調和世界フォーラム(WP29)で国交省の技術官僚がアジア初の副議長に就任していることを踏まえ、「日本の技術が世界標準に扱われるよう頑張りたい」と挨拶した。
引き続き懇親会では、通常総会・理事会で再任が承認された内山田会長のほか、日本自動車工業会の片山正則会長、日本自動車販売協会連合会の加藤敏彦会長、日本自動車部品工業会の茅本隆司会長らの新副会長、島﨑豊新専務理事などが紹介された。
日本自動車会議所は、幅広く自動車関連事業の課題解決や自動車税制、交通安全などの事業に取り組むとともに、経団連モビリティ委員会や自民党自動車議連などとの連携活動を展開している。