日本航空(JAL)が10月30日に発表した2020年4~9月期の連結決算は、売上収益が1947億円(前年同月比74.0%減)、EBIT(財務・法人所得税前利益)が2239億円の赤字(同829億円の黒字)、最終損益が1612億円の赤字(同541億円の黒字)だった。通期ではさらに赤字が拡大する見通しだ。(経済ジャーナリスト・山田清志)
国際旅客数はなんと97.7%減でたったの11万人
「新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、第1四半期に続き、極めて厳しい結果となった」
JALの決算会見は菊山英樹専務執行役員のこんな言葉からスタートした。国際旅客事業は、各国の厳しい出入国制限の継続により、旅客数は前年対比97.7%減の11万2000人、それに伴う旅客収入は前年同期比96.6%減の91億円。国内旅客事業についても、旅客数は76.1%減の464万4000人で、旅客収入は75.6%減の691億円だった。
「足許では、一部国との間で、ビジネス渡航を中心に規制の緩和が進んでおり、今後徐々に往来が再開されると期待している。今後は14日間の隔離機関を含む、各国の渡航規制の緩和の動きや検疫体制を見極めながら、需要動向に応じて復便を検討していきたい」と菊山専務執行役員は国際便の現状について説明する。
また、国内便については、7月は回復傾向にあったものの、夏場、特に高需要期のお盆休み前に感染者数が再び増加に転じたため、8~9月の需要が伸び悩んでしまった。ただ、9月下旬以降は移動に対する自粛ムードが緩和され、10月に入ってからはGoToトラベルキャンペーンの東京発着対象の後押しもあり、着実に回復が進んでいるそうだ。
貨物・郵便事業については、世界的な旅客便減便により需給逼迫が続き、旅客機を利用した貨物専用便を積極的に運航し、単価の大幅な向上もあって、貨物郵便収入は前年同期に比べて18.4%増の534億円となった。「引き続き、国際線を中心に積極的な貨物専用便を運航し、物流ネットワークを支えるとともに、機材の有効活用を図っていく」(菊山専務執行役員)そうだ。
業績連動型報酬は全額カットで役員報酬は半減
2021年3月期の通期業績予想は、売上収益が5300~6000億円(前期比61.8~56.7%減)、EBITが3300~3800億円の赤字、当期純損益が2400~2700億円の赤字だ。
「新型コロナウイルスの感染拡大の影響を踏まえた今後の国際・国内旅客の需要回復については、現時点で確たる見通しを示すことは困難で、当社は複数の想定をもとに幅を持って需要回復を想定し、この需要回復シナリオをベースに収入を想定し、費用削減努力のさらなる深堀りを織り込み、今期の業績予想は幅を持って示すことにした」と菊山専務執行役員と説明し、「先行き不透明な状況だが、需要に応じて供給調整を行うとともに、費用削減を徹底することで、損失幅の縮小に努めていく」と付け加えた。
例えば、役員報酬については今年の12月まで10%の減額を決めていたが、それを当分の間延長する。また、役員報酬の50%を占める業績連動型報酬に関しても、来年度は不支給とする。この結果、来年度の役員報酬は、業績連動型報酬が満額支給される場合と比べて55%程度の減額となる。
もちろん事業構造の見直しも進めていく方針で、需要回復が不透明なフルサービスキャリア国際線事業を一時的に縮小する一方、比較的早期の回復が見込まれ、成長が期待できる観光やVFRと称される友人・親族訪問の需要を取り込むためにLCC事業を強化する。
フルサービスキャリア事業においては、2022年度末までに経年機材である777を合計24機、737-800を5機、合計29機の早期退役をさせ、燃費の改善や整備費等のコスト削減を図る。また、国際線で使用している航空機の一部を、国内線およびZAPAIR(ザップエア)への機動的な配置転換を行う。
一方、LCC事業の強化については、ザップエアとLCCパートナーであるジェットスタージャパンおよび春秋航空日本との連携強化により、成田を拠点としてLCCネットワークを構築する。
また、気になる財務状況については、「9月末の手元現預金は3466億円。また、コミットメントライン枠を来月11月中に1000億円増額する予定なので、未使用のコミットメントラインは3000億円となり、十分な手元流動性を確保できている」と菊山専務執行役員は問題のないことを強調していた。