ABB FIAフォーミュラE世界選手権シーズン11の開幕戦の決勝が12月7日(ブラジル・サンパウロ)に開催され、グリッド22番手からスタートしたミッチ・エバンス選手(ジャガーTCSレーシング)が、全車をオーバテイクして優勝を飾った。
シーズン11年を迎えた同シリーズ戦は、相次ぐレーシングマシンの改良を経て遂に各選手達は4輪駆動が許されるレギュレーションとなったGEN3 EVOのステアリングを握っての戦いとなった。参戦チームもローラ・ヤマハABTフォーミュラEチーム、クプラ・キロなど一部刷新され、11チーム22台がスターティンググリッドに並んだ。
予選セッションは2組に分かれたノックアウト形式の後に、トーナメント形式でのタイムアタックが行われ、その結果、前シーズンを2.938秒上回るタイムを刻んだパスカル・ウェーレイン選手(タグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム)がポールポジションを獲得。2番手にはオリバー・ローランド選手(ニッサン・フォーミュラEチーム)が付けた。
決勝レースは、現地時間14時から31周で雌雄を決するべくグリッドに整列。但し、この際、ロビン・フラインス選手(エンビジョン・レーシング)がシステムトラブルでスタートできずに一時中断。改めてグリッド上に残った21台で幕を落とした。
ホールショットを奪取したのは、2番グリッドからスタートしたローランド選手。その後方にウェーレイン選手、マキシミリアン・ギュンター選手(DSペンスキー)と続いた。
続く2周目のターン6でジェイク。ヒューズ選手(マセラティMSGレーシング)とニコ・ミューラー選手(アンドレッティ・フォーミュラE)が接触。これによりセーフティカー(SC)が導入される。
以降、セーフティランが暫く続いた後の6周目にレース再開。ローランド選手が後続を引き離し始め、その後方では、アタックモードを利用しニック・キャシディ選手(ジャガーTCSレーシング)が追い上げ、8周目にトップに立つ展開に。
以後レースは順調に消化していたのだが、11周目にノルマン・ナトー選手(ニッサン・フォーミュラEチーム)、サム・バード選手(NEOM・マクラーレン・フォーミュラEチーム)、テイラー・バーナード選手(NEOM・マクラーレン・フォーミュラEチーム)がドライブスルーペナルティを課せられ順位を落とす。
そうしたなかで続く12周目でローランド選手がアタックモードを巧みに使い再びトップに。これを契機に各車、アタックモードを利用して激しく順位争いする状況になった。そのなかで、アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ選手(タグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム)がトップに立った瞬間にジェイク・デニス選手(アンドレッティ・フォーミュラE)がマシントラブルで停止してコースを塞いだことから赤旗中断に。
30分間の中断を経て、ダ・コスタ選手とローランド選手がグリッド最上位に並んでレース再開。当初のレーススタートと同じくローランド選手が集団を率いてリードしていく。
そして残り4周となったレース終盤で、集団を率いてきたローランド選手がオーバーパワーによるドライブスルー・ペナルティが課せられ後退。これを好機に後方をランデブー走行していた2台のジャガーTCSレーシングチームが浮上して集団をリード。
しかしミッチ・エバンス選手がトップに立ったタイミングで、キャシディ選手とウェーレイン選手が接触。 ウェーレイン選手のマシンが横転したことで2度目の赤旗中断。
選手の安全確保やマシン回収を含めた30分間の後、残り4周でレース再開。超スプリントレースとなった最終盤。エバンス選手がトップでゴールラインを潜り、次いでダ・コスタ選手が続いた。3番手はバーナード選手が最後のポデュウムを確保した。
この結果、ドライバーズランキング首位はエバンス選手、マニフアクチャラーランキングでは、グリッド17位と16位から猛追して3位と4位でフィニッシュしたNEOMマクラーレンが首位に立った。
また20歳189日のバーナード選手は、2015年にダニエル・アプト選手が樹立した記録を上回りフォーミュラE史上最年少の表彰台ウイナーとなった。更に終始レースをリードしていたオリバー・ローランド選手には手痛い結末となった。次シリーズは1月11日にメキシコシティで幕を開ける。
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以下はレースで躍進した選手達のコメントとなる
ジャガーTCSレーシングNo.9、ミッチ・エバンス選手「予選で不運に見舞われ最後尾スタートとなってしまったので、望外の結果を得られるとは思いもしませでした。率直に言ってできるだけ多くのポイントを稼いでシーズンのスタートを飾りたいと思っていましたが混戦に巻き込まれてしましました。パスカル(ウェーレイン)が無事だったことに安心した一方で、僕自身は少し運が良かったのでしょう。いずれにしてもクレイジーなレース展開となったので、戦略を立てたり、いつ何をすべきかを知ることは、とても難しかった。そういう意味でジャガーチームの全員に感謝しています」
タグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラ E チームNo.13、アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ選手、「過去2年間は厳しいレースシーズンが続き、今回も厳しいスタートとなりました。しかし、素晴らしいチームと強いマシンというパッケージを得たことで表彰台に上がれてとても嬉しいです。最終的にミッチとの差は僅かでしたが、最後尾から追い上げてきた彼に本当によくやったと思います。最後にパスカル(ウェーレイン)が無事だったことに安堵しています」
NEOM マクラーレン フォーミュラE チームNo.5、テイラー バーナード選手、「表彰台でのスピーチは用意していませんでした。そもそもレース開始直後にフロント ウィングを外して交換しなければならず、ドライブスルー ペナルティも受けました。なのでこの結果には、何と言っていいかわかりません。対してチームは本当に素晴らしい仕事をしてくれました。そのおかげで、僕とサム(バード)は簡単に前に出ることができました。今日はお互いに素晴らしい仕事をしました。彼の素晴らしいチームワーク振りにも感謝します」
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なおフォーミュラ E は、シリーズのコミュニティ エンゲージメントと社会的持続可能性戦略の一環として、Better Futures Fund を通じて Associação PiPA を支援した。25,000 ユーロの寄付は、社会的に弱い立場にあるコミュニティ内で強化された教育プログラムを通じて280人の若者をサポートする他、レース当日に慈善団体に関係する5,000人の子供たちとその家族を招待した。