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2020年12月4日【テクノロジー】

インテル、人の頭脳構造を模したチップ研究で最新動向を発表

NEXT MOBILITY編集部

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インテルは12月4日、Intel Neuromorphic Research Community(INRC)の拡大および研究の進展に関する最新情報を発表した。

 

INRCは、2018年の発足以来、急速に組織規模を拡大し、現在100を超えるメンバーが参加している。今回、新たにレノボ、ロジテック、メルセデス・ベンツ、プロフェシーをメンバーとして迎え、ビジネスユースケースにおけるニューロモーフィック・コンピューティングの価値を追求していくと発表した。また、INRCによるニューロモーフィック・リサーチ・テストチップ「Loihi」を活用した研究結果を報告した。

インテル・ロゴ

インテルラボ ニューロモーフィック・コンピューティング担当ディレクターのマイク・デイビス(Mike Davies)は 、「ニューロモーフィック・コンピューティングの可能性に触発され、コンピューティングの効率性、スピードおよびインテリジェントな機能を桁違いに向上させるべく、2年という短い期間で世界中の何百人もの研究者からなる活気あるコミュニティを形成しました。そして、今回初めてこの目標実現に向けて定量的な兆しが見えてきました。INRCパートナーの皆様とともに、これらの洞察を基にこの初期技術の広範かつディスラプティブな商用アプリケーションの構築を計画しています」と述べている。

 

インテルは、ニューロモーフィック・コンピューティングの可能性を広げるためにINRCを設立。学界や産業界、政府など各界でこの分野をリードする研究者たちとの協働を通じて、ニューロモーフィック・コンピューティング開発の課題を克服し、今後数年間の中で研究用プロトタイプから業界をリードする製品へと発展させていくことを目指している。

 

ニューロモーフィック・コンピューティングの発展に伴い、インテルとINRCは、より効率的で適応性の高いロボット工学の実現、大規模なデータベー上の類似コンテンツの高速検索、意思決定が困難な計画および最適化をエッジデバイスによりリアルタイムで行えるようにすることなど、ニューロモーフィック・テクノロジーの実世界における様々なユースケースの可能性を明らかにしている。

 

既に参加しているフォーチュン500の各社や政府系機関のメンバーに、レノボ、ロジテック、メルセデス・ベンツ、プロフェシーがINRCに加わったことで、ニューロモーフィック技術は着実に進歩し、産業界への応用に期待できるという。

 

インテルとINRCのメンバーは、ニューロモーフィック・システムで構築されたアプリケーションの継続的な開発やプロトタイピング、テストを通じ、幅広いワークロードにおけるベンチマークが理にかなって向上していることを示す結果を確認。既存の成果と、Intel Labs Dayで発表された新たなベンチマークを組み合わせることで、ニューロモーフィック・コンピューティングは、商用化へと向かう、生体触発のインテリジェント・ワークロードのビジョンを描くことができるとしている。

 

 

■Intel Labs Dayにて発表された主な最新情報
・音声コマンド認識
アクセンチュアが、インテルのLoihiチップで音声コマンドを認識する能力を標準的なグラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)と比較してテストを行い、Loihiは同等の精度を達成しただけでなく、最大1,000倍のエネルギー効率化および最大200ミリ秒の応答の高速化を実現したことが判明した。メルセデス・ベンツは、INRCを通じて、自動車に新たな音声対話コマンドを追加するなど、これらの結果が実世界のユースケースにどのように応用できるかを検討している。

 

・ジェスチャー認識
従来のAIは、ビッグデータの解析や何千もの事例にまたがるパターンを認識することに長けているが、コミュニケーションを取る際に使うジェスチャーなど、人それぞれの微妙な違いを学習することは苦手とする。アクセンチュアおよびINRCのパートナー各社は、Loihiの自己学習機能の活用を通じて個別化されたジェスチャーを素早く学習・認識する技術の発展を具体的に実証し、ニューロモーフィック・カメラからの入力を処理することで、Loihiはわずか数回確認するだけで新しいジェスチャーを学習することができる。

 

・画像検索
小売業界の研究者が画像ベースの商品検索アプリケーションとしてLoihiの性能を評価したところ、従来の中央処理装置(CPU)やGPUソリューションと比較して、同程度の精度を維持しながらも、3倍以上のエネルギー効率で画像特徴ベクトルを生成できることが判明した。これは、Loihiが100万画像データベース内の特徴ベクトルを、CPUと比較して24倍速く、かつ30倍低いエネルギーで検索できることを示す。

 

・最適化と検索
インテルとパートナー各社は、従来のCPUと比較して、Loihiが1000倍以上高効率に、かつ100倍以上速く最適化や検索の問題を解決できることを発見した。制約充足などの最適化問題は、ドローンがリアルタイムで複雑なナビゲーションの計画や意思決定を行えるようになるなど、エッジでの潜在的価値を引き出す。また、複雑なデータセンターのワークロードにも同じタイプの問題を適用でき、列車の運行計画やロジスティクスの最適化などのタスクを支援することができる。

 

・ロボティクス
ラトガーズ大学とデルフト工科大学の研究者は、Loihiで動作するロボットナビゲーションおよびマイクロドローン制御アプリケーションの新たなデモンストレーションを発表した。デルフト工科大学のドローンは、250キロヘルツ以上の周波数で動作する進化した35ニューロン・スパイクネットワークを用いてオプティカルフロー着地を実演。また、ラトガーズ大学は、性能を損なうことなく、Loihiのソリューションが従来のモバイルGPUの実装よりも75倍低電力消費であることを発見した。11月に開催された2020 Conference on Robot Learningで発表された研究では、ラトガーズ大学の研究者は、Loihiがディープ・アクター・ネットワークと同等の高精度で、膨大なOpenAI Gymタスクを学習することに成功し、モバイルGPUソリューションと比較して140倍も低い消費電力で学習できることを明らかにした。

 

 

さらに、インテルとパートナー各社は、Intel Labs Dayにおいて2つの最先端のニューロモーフィック・ロボティクスのデモンストレーションを披露している。今後もインテルは、ニューロモーフィック・コンピューティングが大小問わず様々な問題に実世界の価値をもたらす可能性を探っていき、INRCからの学習成果を継続的に取り入れ、近日提供開始予定であるインテルの次世代ニューロモーフィック・リサーチ・チップの開発に反映させていくという。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。