環境対応エンジンが搭載されたタグボート「たまの」
IHIグループ傘下のIHI原動機( 所在地:東京都千代田区,社長:赤松 真生 )は11月11日、燃料を電子制御で燃焼させる( コモンレールシステム )装置採用の中速エンジンの販売を開始する。( 坂上 賢治 )
販売するエンジンは、1838kW級の舶用4サイクル中速エンジンの〝ニイガタ6MG28HX-CR型中速エンジン〟。コモンレールシステムを採用した同エンジンシステムの販売は国内初で、PM( 排気ガス中の粒子状物質 )総排出量を約50%低減できる他、燃費向上とCO₂の削減も実現する。
より具体的には、エンジン本体にポンプで高圧化した燃料をパイプ(コモンレール)を搭載、電子制御によって高圧燃料を燃焼室へ噴射する。この結果、先の通り従来型エンジンと比較してPM総排出量が約50%低減。更に低負荷の状態で約6%燃費を作県。排気ガスに含まれる〝すす〟などの量(排気煙濃度)を約38%削減させる。
ニイガタ6MG28HX-CR型中速エンジン
この新開発エンジンの開発並びに販売に至った経緯は、IHI原動機が経済性と環境性能の向上に対する市場ニーズを受けて開発に着手したもの。
同エンジンは大手海運会社の商船三井グループ傘下の日本栄船( 所在地:兵庫県神戸市、社長:西尾 哲郎 )と総合物流企業のセンコーグループ傘下の栄吉海運( 所在地:岡山県玉野市、社長:小路 敏之 )が2017年から5年間共有しているタグボートで稼働実証試験を実施。
この結果、経済性・信頼性・環境優位性で所定の評価結果が得られた事で本格販売に移行するもの。
IHI原動機では「負荷変動を要するタグボートでの過酷な使用条件下で運行実証されたニイガタコモンレールシステムは、お客様毎のご要望に合わせ、各種船舶の運用形態に合わせた最適な調整が可能です。
コモンレールシステムの主要ハードはグループ内の自社開発装置を採用しており、一貫したサービスの提供が可能な点が大きな特徴です。
我々はこれまで ハイブリッド自動車と同様に蓄電池を用いた国内初のタグボート用ハイブリット推進システムや、LNGを主燃料としたデュアルフューエルエンジンを開発・販売するなど低炭素・脱炭素社会実現に取り組んで参りました。
現在はシステムインテグレーションとしての電気推進システムの構築及びアンモニア燃料舶用エンジンの開発を進めており、コモンレールシステムの確立は、多燃料燃焼技術向上にも寄与する要素技術です」と話している。