東京大学大学院農学生命科学研究科、出光興産および日本郵船の3者は11月29日、出光興産の保有する豪州クイーンズランド州エンシャム石炭鉱山の遊休地を活用して、石炭と混焼可能なバイオマス発電燃料用植物ソルガムの栽培試験に関する共同研究を実施することで合意したと発表した。
温室効果ガス(GHG)削減の観点から、今後石炭火力発電所において石炭とバイオマス燃料の混焼需要が高まることが予想されている。3者はバイオマス燃料の原料としてイネ科の一年草植物であるソルガムに着目し、植生地の特性に合った最適品種の選定および栽培方法の確立に関する共同研究を実施する。品種の選定および栽培方法の確立には東京大学大学院農学生命科学研究科の持つゲノム育種技術・遺伝子解析・栽培技術知見などを活用する。
ソルガムは種蒔きから約3ヶ月で収穫できるため年間複数回の収穫が可能。また、干ばつに強く高い環境適応能力を持つことから、厳しい耕作環境下でも生育が見込める。食料用途との競合も発生しないため、バイオマス発電燃料の安定供給に寄与する有力な原料のひとつとして期待されている。
出光興産が2020年に実施した豪州クイーンズランド州エンシャム石炭鉱山でのソルガム栽培および燃料化に関する試験では、同地におけるソルガムの順調な生育を確認し、燃料化が可能となることを確認した。今回の共同研究では、前回の試験をさらに発展させ、事前に選定したソルガム17品種の栽培試験を実施し、従来に比べ高収量・高発熱量となる発電燃料に適した品種の選抜を行い、同地における効果的な栽培方法の確立を目指すとしている。
■共同研究の概要
1.植物名
ソルガム(17品種)
2.検証スケジュール
2021年12月~2023年10月
3.栽培試験場所
出光興産 豪州クイーンズランド州エンシャム石炭鉱山 遊休地
4.作付面積
0.25ha
5.栽培試験内容
①現地雨温図・気象条件分析、②系統間差試験、③作期移動試験、④施肥量・灌水量・栽植密度の最適化、⑤候補品種のリグニン量評価
6.各者の役割
東京大学大学院農学生命科学研究科:共同研究統括、栽培試験実施主体、評価・解析
出光興産:プロジェクトの全体管理、エンシャム鉱山での栽培サポート
日本郵船:プロジェクトの全体管理
ソルガムの写真