本田技研工業(ホンダ)は11月25日、全ての交通参加者が交通事故リスクから解放され、安心して自由に移動できる社会の実現に向けて、現在開発を進める将来の2つの先進安全技術を、世界初公開した。
その1つ目は、各々のドライバーの能力や状態に合わせて運転ミスやリスクを減らし、安全運転に誘導する、AIを活用した世界初(※1)の「知能化運転支援技術」。そして2つ目は、全ての交通参加者とモビリティを通信でつなげて、事故が起きる手前でリスクを予兆・回避をサポートする「安全・安心ネットワーク技術」。
ホンダは、これら技術によって、同社が目標に掲げる「2050年に全世界でホンダの二輪・四輪が関与する交通事故死者ゼロ」の実現を目指すとしている。
2050年交通事故死者ゼロの実現
ホンダでは、道を使う誰もが事故に遭わない社会の実現を目指し「Safety for Everyone(セイフティ・フォー・エブリワン)」のスローガンの下、ハード・ソフトの両面で安全技術の研究開発に取り組んでいる。
その実現に向け、全方位安全運転支援システム「Honda SENSING 360(ホンダセンシング360/10月13日発表)」を2030年に先進国で販売する全てのモデルへ展開すると共に、二輪検知機能適用の順次拡大や、ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems:先進運転支援システム)機能の更なる進化にも取り組んでいくとしている。
また、二輪安全技術の普及拡大、安全教育技術(Honda Safety EdTech)の展開なども進め、2030年に全世界でホンダの二輪・四輪が関与する交通事故死者を半減(※2)することと、その先の将来安全技術の早期確立による2050年交通事故死者ゼロという高い目標の達成を目指す。
①一人ひとりに合わせた安心:運転時のヒューマンエラーゼロを目指す「知能化運転支援技術」
・fMRI(※3)を用いた独自の脳活動とリスク行動の解析によりヒューマンエラー要因を解明。
・ドライバーモニタリングカメラや運転操作から運転中に生じるミスの予兆を推定。
・一人ひとりがミスを軽減し、不安を感じることが無い移動を目指す。
・2020年代前半に要素技術の確立、2020年代後半の実用化を目指す。
ホンダではこれまで、「ドライバーが不安を感じるミスの根本的な原因は何か?」を解明すべく、fMRI(※3)を活用した独自の“人を理解する技術”の研究開発を行ってきた。
「知能化運転支援技術」は、それら研究で培ってきた人の行動や状態を理解する技術に加え、ADASセンサー/カメラを用いて周辺リスクを把握することで、AIが運転リスクを検出すると共に、最適な運転行動をリアルタイムで導き出し、それぞれのドライバーの認知状態と交通シーンに応じた適切な運転支援を行う、世界初の技術。
現在研究開発を進める次世代の運転支援機能により、一人ひとりの運転行動や状態に合わせた“ミスが無い、リスクに近寄らせない”新たな安全価値の提供を目指す。
<次世代の運転支援で目指す3つの提供価値>
1.運転操作ミスをしない(操作アシスト):AIによるフラつき低減、操作遅れ防止支援。
2.見落とし予知予測ミスをしない(認知アシスト):視覚・触覚・聴覚でリスクを伝達。
研究開発中の技術…リスクインジケーター、シートベルト制御、立体音響。
3.漫然運転によるミスをしない(覚醒アシスト):眠気や疲労を軽減。
研究開発中の技術…シートバックから振動刺激するバイオフィードバック。
ホンダは今後、この「知能化運転支援技術」を更に進化させ、2020年代前半に要素技術確立、2020年代後半の実用化を目指して開発を継続。これにより、従来の“リスクに直面してから回避する”運転支援を“リスクに近づかせない”AI運転支援に進化させ、事故の原因の90%以上を占めるヒューマンエラー(※4)ゼロを目指す。
②すべての交通参加者との共存:全ての交通参加者が通信でつながる、「安全・安心ネットワーク技術」の構築
・ドライバーや全ての交通参加者の個々の状態、周囲環境をシステムで理解、認識。
・通信によりリスク情報をサーバーへ集約し、仮想空間上の交通環境でリスクを予測。
・導き出された最適な支援情報を交通参加者一人ひとりへ配信、未然にリスク回避行動を促す。
・今後、業界・官民一体の取り組みを加速させ、2020年代後半の標準化を目指す。
ホンダではまた、誰もが事故に遭わない交通社会の実現に向け、通信技術を活用して全ての交通参加者がつながり共存できる「協調安全社会」の実現を目指している。
「安全・安心ネットワーク技術」では、路側カメラ、車載カメラやスマートフォンからの情報を通じて検知した交通環境に潜むリスクをサーバーに集約し、仮想空間上で交通環境を再現。仮想空間上で人の状態・特性を考慮した上で事故リスクの高い交通参加者の行動を予測・シミュレーションし、導き出した情報を、「協調型リスクHMI(ヒューマンマシンインターフェース)」で、四輪や二輪運転者ならびに歩行者に直感的に伝えることで、事故を未然に回避する行動を促す。
ホンダは、この技術の2030年以降の社会実装に向け、2020年代前半にシステム構築、効果検証を完了させ、2020年代後半に標準化することを目指し、業界・官民一体の取り組みを加速していくとしている。
本田技術研究所・代表取締役社長の大津啓司氏は、以上、将来の先進安全技術の研究・開発について、以下のように話している。
「ホンダは、すべての交通参加者の移動リスクをゼロにすることを目指し、『安全』と一人ひとりの『安心』を新たな価値として提供していきます。この価値を具現化する、将来安全技術を通じて、『2050年に全世界で、ホンダの二輪・四輪が関与する交通事故死者ゼロ』の実現に取り組んでいきます。お互いが思いやり、自由な移動が可能となる事故に遭わない交通社会の実現に向け、業界や官民一体で取り組みを加速させていきます」。
※1:ホンダ調べ。
※2:2020年比で2030年に全世界でホンダの二輪・四輪が関与する1万台当たりの交通事故死者数を半減。
※3:磁気共鳴機能画像法(脳が機能している活動部位を、血流の変化から画像化する方法の一つ)。
※4:出展:平成29年版交通安全白書 法令違反別死亡事故発生件数より。