ホンダは2月19日取締役会を開き、4月1日付で三部敏宏(みべ としひろ)専務を社長に昇格させることを決めた。同日、社長交代会見した三部専務は「自分は激動の時代の方が向いている。ワクワクしている。いまの時代、いろいろなシナリオが描ける」と述べ、様々な領域でチャレンジしていく姿勢を見せた。(佃モビリティ総研・松下次男)
また、ホンダは6月の株主総会後に監査等委員会設置会社から指名委員会等設置会社に移行することも決め、これに伴い三部氏は株式総会後に取締役代表執行役社長に就任する。
なお、八郷隆弘社長は4月1日付で取締役となり、6月の株主総会後に退任する予定。倉石誠司副社長は継続(株主総会後は取締役代表執行役副社長)する。
新社長に就任する三部氏は、1987年のホンダに入社後、エンジン開発を中心に四輪車の研究・開発に従事し、2019年4月に本田技術研究所社長に就任。2020年6月からはホンダの専務取締役を兼任し、経営の一翼を担ってきた。
このため、八郷体制で重点的に進めてきた「既存事業の盤石化」と「将来の成長に向けた仕込みづくり」の取り組みついても三部氏は十分に知悉しているとし、バトンタッチすることにした。
後を引き継ぐ三部氏はこれを受けて「特に、将来の成長に向けた仕込みをさらに加速させる」と強調し、具体的には「2050年カーボンニュートラル」と「2050年交通事故死者ゼロ」の取り組みを具現化、加速させるとした。
三部氏に後任を委ねる八郷氏は、「環境分野は三部氏の得意分野。バイタリティー、行動力がある。新たな分野のエキスパートだ」と評価した。
電動化をはじめとした具体的な取り組みでは米ゼネラル・モーターズ(GM)との協業などが活用されるが、これについて三部氏は「激動の時代には、時間が非常に重要になる。このため、アライアンスを通じて、これらを加速させる」と強調した。
カーボンニュートラルへの取り組みの中で、内燃機関の方向性についても「カーボンニュートラル燃料やバイオ燃料とのセットで活用に仕方がある。エンジンについてもカーボンニュートラルが実現できる可能性があり、現時点で答えを出すのは時期尚早だと思っている。もちろん電動化がメインストリートであり、取り組んでいかなければならない」との見方を示した。
株主総会後に退任する八郷氏は「懸案だった研究開発体制を改組、進化させることができるなど、既存事業の盤石化については成果の刈り取りの段階に入っている」と述べ、一定の成果が達成化できたと述べた。
取締役相談役として残らないことについても「指名委員会等設置会社に移行するのに伴い、取締役相談役を廃止する」のが理由と説明した。
指名委員会等設置会社への移行は、監督機能と執行機能を明確に分離し、社外取締役の意見を取り入れながら、執行機関として業務に集中できる態勢を目指すものだ。
三部氏略歴
広島大学院修了。1987年4月ホンダ入社、2012年4月本田技術研究所常務執行役員、2014年4月ホンダ執行役員、2016年4月本田技術研究所取締役専務執行役員、2018年4月ホンダ常務執行役員、本田技術研究所取締役副社長、2019年4月本田技術研究所代表取締役社長(現在)、2020年4月ホンダ専務執行役員、2020年6月同専務取締役(現在)。