Honda CIマイクロモビリティ(左:CiKoMa 右:WaPOCHI)
本田技研工業傘下の本田技術研究所は2月1日、人と分かり合える独自の協調人工知能〝Honda CI(Cooperative Intelligence)〟を搭載した「Honda CIマイクロモビリティ」の技術実証を、茨城県常総市の〝アグリサイエンスバレー常総〟で開始した。
この〝アグリサイエンスバレー常総〟とは、多数の地権者が所有する農地の集約を官民連携で取り組み、生産・加工・流通・販売まで一気通貫する事業施設を整備。2次産業(食品加工)と3次産業(流通・販売)を掛け合わせて、農業と産業が融合する6次産業化(1次×2次×3次=6次)した街づくりを目指すもの。
今実証では、この〝アグリサイエンスバレー常総〟で、Honda CI搭載のマイクロモビリティを一般の人々に体験して貰い、そのフィードバックを得ることでCIの進化、モビリティとしての使い勝手の向上を図り、2030年頃の実用化を目処に社会受容性の醸成を図っていく構え。
ちなみに、こうした実証活動そのものは、先の2022年11月から既に始動させている。実証には、Honda CI搭乗型マイクロモビリティ「CiKoMa(サイコマ)」及び、マイクロモビリティロボット「WaPOCHI(ワポチ)」を使用。地図レスの協調運転技術と、ヒトの意図理解・コミュニケーション技術を用いた自動走行技術や、ユーザー追従・先導走行機能の検証に取り組んできた。
今回、改めてアグリサイエンスバレー常総にて開始する一般向けの技術実証実験では、来場者を対象に自動走行するCiKoMa(サイコマ)の試乗とWaPOCHI(ワポチ)の追従・先導走行体験の機会を提供する。
ヒトの移動に寄り添いサポートする身近なマイクロモビリティを作る
ちなみに「CiKoMa(サイコマ)」は、1人~数人までの乗員数を想定した搭乗型の電動マイクロモビリティ。必要な時に呼んで乗車し、任意の場所で降車することができ、誰でも手軽に自由にラストワンマイルを移動できる乗り物。
車載のカメラを介して360度周辺環境を認識。交差点やカーブなどの環境に加え、歩行者や車両の進行方向などから周辺関係者の状態を把握。その行動や潜在リスクを予測することができる。
歩行者との混合空間を自動走行するCiKoMa
乗車位置をジェスチャーで指定する様子
これにより、適切な走行速度や走行可能な領域を素早く判断することで、CiKoMa(サイコマ)は、歩行者や車両との混合空間でも自動で移動することが可能となる。
既にCiKoMa(サイコマ)の走行については2023年10月からは、アグリサイエンスバレー常総で安全監視員が同乗しながら自動走行の技術検証を行ってきており、歩行者・自転車との混合空間である「歩車共存エリア」での自動走行。及び一般車両との譲り合いによる一般道や交差点での自動通過を実現している。
対して「WaPOCHI(ワポチ)」は、ユーザーの特徴を記憶・認識して荷物を載せて人混みの中でもユーザーを追従、もしくは先導する電動マイクロモビリティロボット。
手荷物を持って移動する煩わしさからヒトを解放すると共に、先導時はユーザーの前方を走行し、快適かつ安心して歩くスペースを確保することで「歩き」をもっと自由にする。
WaPOCHIに荷物を積載する様子
ユーザーを先導するWaPOCHI
ヒトの認識手段には、服や髪の毛の色、背格好などの特徴を画像で認識。これを記憶してユーザーの斜め後ろを荷物を持ちながらペットのようについていく。
また今回新たに追加した先導走行機能では、ユーザーの振る舞いから進路を予測することで、適切な間隔を保ちながらユーザーの行きたい方向に自動で走行する。目的地に向かって誘導するガイドロボットとは異なり、周囲の環境との協調行動を取りながらユーザーの歩行スペースを守るような動きをすることで、ユーザーの歩き易さをサポートできる。
今回のモビリティとヒトとの一般向け実証実験の内容は以下の通り
今年2月より、アグリサイエンスバレー常総内の「道の駅常総」から観光農園「グランベリー大地」まで、約850メートルの区間を使い来場者を対象としたCiKoMa(サイコマ)による自動走行の乗車体験機会を提供する。
また今年春以降には、コミュニケーション機能を搭載したCiKoMa(サイコマ)を使った乗車体験も開始する。
これは専用携帯デバイスを通じてCiKoMa(サイコマ)を呼び寄せ、自動走行で迎えにきたCiKoMa(サイコマ)にジェスチャーで乗車位置を指定して乗車。乗車後は、設定した目的地まで自動走行で移動し、更に走行中に停止位置を指示することで任意の場所に立ち寄ることが可能になる。
1棒でWaPOCHI(ワポチ)については、2月にグランベリー大地の屋外敷地内にて、いちご狩りの利用者を対象に移動体験を開始する予定だ。
WaPOCHI(ワポチ)が受付からビニールハウスまで荷物を積んで来場者を先導もしくは追従し、徒歩移動をサポートする。
いちご狩りの体験中は、WaPOCHI(ワポチ)に荷物を預けたままにできるため、手ぶらでいちご狩りを楽しむことが可能。また、従業員向けの実証も2024年春に開始し、追従するWaPOCHI(ワポチ)を使用した移動販売も予定している。
今ある街を活性化させる「レトロフィット型のアプローチ手法」を育む
本田技研工業が、こうしたHonda CI搭載のマイクロモビリティを開発する理由は、将来のヒトの高齢化やドライバー不足といった社会課題の深刻化で、ラストワンマイルの移動手段としてマイクロモビリティのニーズが高まることを予想してのこと。
そのような予測に沿った未来社会を踏まえた同社は、事前に整備された高精度地図を必要とせず、車両自ら周辺環境を認識しながら自動走行できる「地図レス協調運転技術」を磨くこと。
人と対話やジェスチャーでコミュニケーションが可能な「意図理解・コミュニケーション技術」を醸成するという2つのコア技術の確立目指しているため。
CIマイクロモビリティは、カメラで周辺環境を認識しながらユーザーとコミュニケーションを取り、状況や意図を踏まえ自ら判断するため、あらかじめ設定した経路上だけでなく、車道や歩道、公開空地などさまざまな走行環境に於いて、自由に自動走行することが可能となる。
同社としては、全く新しい街をゼロから創るという途方もないアプローチではなく、今ある街に先端技術を加えることで活性化していく「レトロフィット型のアプローチ手法」を育んで地域に貢献することを目指している。
そのために高精度かつ大規模なインフラの整備を必要としないCIマイクロモビリティは、様々な地域へも適用し易いため、ラストワンマイルの移動手段として将来的な活用用途の拡大を望める。
歩行者を認識し軌道変更する様子
Honda CI-MEV
本田技研工業では、「いつでも、どこでも、どこへでも、人とモノの移動を〝交通事故ゼロ〟〝ストレスゼロ〟で実現させ、自由な移動の喜びを一人ひとりが実感できる社会の実現を目指し、CIマイクロモビリティの技術開発に取り組んでいます。
今後は、2024年中に遠隔監視システムを確立し、関係省庁との認可交渉を経て、2025年中の無人自動走行の実現を目指します。
さらに2024年夏には、CiKoMa(サイコマ)の技術を搭載した、二人乗りの四輪電動モビリティ「Honda CI-MEV(シーアイ・エムイーブイ)」を常総市内での技術実証実験に投入予定です。
またこの取り組みと併せて、自治体との連携も強化。交通問題を抱える多様な地域での技術実証実験の展開を目指していきます」と話している。