EVを活用した電力ネットワーク安定化に貢献するエネルギーサービスを提供
本田技研工業の米国現地法人アメリカン・ホンダモーターと、BMWグループ、フォード・モーターの3社は9月12日、EVを活用し電力ネットワーク安定化に貢献するエネルギーサービス提供会社「ChargeScape(チャージスケープ)」の新規設立に合意したと発表した。( 坂上 賢治 )
このチャージスケープは、複数の自動車メーカーと米国及びカナダ内に数多く存在する電力会社とを結ぶ共通の情報プラットフォームを構築・提供するもの。
これにより米国内に於ける各自動車メーカーのEVが、電力ネットワークと効率よく繋がり、台数規模を生かした幅広い調整力で電力ネットワークの安定化を目指す。
またこの安定化を通じて、電力ネットワークの再生可能エネルギー由来電力の活用を最大化させ、二酸化炭素排出量の削減に貢献すると共に、EVユーザーの充電料金や電力会社のコストの削減も実現ていく。
なおチャージスケープは今後、関係当局の承認取得など、幾つかの段階を経て設立される。新会社は3社均等での出資を予定しており、2024年初頭の稼働開始を予定している。
本田技研工業では、「昨今、米国を中心にEVの販売や充電インフラの整備が本格化していく中で、電力供給の安定化が大きな課題である一方、EVと電力ネットワークを繋ぐことは新たなビジネス創出の機会としても期待されています。
3社はこれまで〝Open Vehicle-Grid Integration Platform (OVGIP/電力会社と自動車製造企業が共に電力ネットワークの安定化を目指す仕組み)〟という活動を通じて、電力会社と自動車メーカーが持つ情報を集約するプラットフォームを構築。これを試験運用をすることで電力ネットワーク安定化を目指してきました。
そして今回、チャージスケープへの出資により、この取り組みを更に発展・加速させていきます。また3社はチャージスケープが本格稼働を開始後、他の幅広い自動車メーカーがこの取り組みに参画することを歓迎します」と話している。
・チャージスケープが提供するサービスは以下の通り
電力会社と自動車メーカーを共通のプラットフォームで結ぶことで、電力会社に対し、各地の充電状況に関するデータなど、効率的な充電制御サービスに向けたソリューションを提供する。
これによりEVユーザーからのデマンドレスポンス(電力の供給状況に応じて需要側の消費量を調整すること)の集約や、電気代が安いオフピークの時間帯での充電(V1G/電力ネットワークからEVへの充電)、また将来的にはV2G(電力ネットワークからEVへの充電、EVから電力ネットワークへの放電)を介した電力ネットワーク安定化のために取り組んでいく。
・電力会社のメリット
今回のようにEVユーザー、様々な接点を持つ自動車メーカーが共に参画するプラットフォームを使うことで、EVユーザーと効率よく電力システムに繫がることが可能となる。またEVを分散型電源として活用する効率的な電力需給調整によって、電力ネットワークの安定化が図られ、再生可能エネルギー由来電力の活用が最大化されることになる。
・EVユーザーのメリット
チャージスケープのプラットフォームを利用する各自動車メーカーのEVを所有する各々のユーザー達は、自動車メーカーが提供するシステムやプログラムへの登録を通じてプラットフォームに繫がることによって、V1G機能による最適な充電スケジュール管理や、電気代が安いオフピーク時間帯での充電などが行えるため、電気代の削減が可能となる。
こうした充電制御サービスは、充電に関する情報や信号の伝達に自動車メーカーならではの車載テレマティクス技術を活用する仕組みを用いる。従って家庭にスマート充電器(通信ネットワークを介して、情報を送受信できる充電器)がないEVユーザーも利用が可能になる。
更に将来提供を計画しているV2G機能を利用してEVから電力ネットワークに放電することで、EVユーザーが売電による収益を得ることも可能となる。