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2024年10月25日【CASE】

北海道・上士幌町、自動運転バスのレベル4無人実証を開始

坂上 賢治

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北海道に於ける極寒の定常運行でも独自の知見を蓄積

 

北海道の上士幌町(かみしほろちょう)は10月25日、自動運転バスのレベル4(無人走行)の実証実験を10月28日(月)から11月30日(土)の期間中の月・木・土曜日に実施する。

 

上士幌町は、北海道十勝地方の北部に位置し、人口は約5,000人、面積は東京23区より広い約700平方kmを抱え、その76%を森林が占める緑豊かな町。

 

 

また日本で初めて熱気球の大会が開かれた「熱気球のまち」としても知られている。近年では全国トップレベルの酪農業を軸に、バイオガス発電とエネルギーの地産地消、自動運転バスやドローン配送の実装などICT技術を活用した持続可能な取組が評価され、第4回SDGsアワードで内閣官房長官賞を受賞した。

 

 

加えて「かみしほろシェアOFFICE」「企業滞在型交流施設/にっぽうの家」を起点としたテレワーク・ワーケーションの受入を通じ、関係人口の創出にも取組んでいる。

 

そんな同町では、フェーズ1として2022年12月から自動運転レベル2での定常運行を開始。以降、信号がある交差点でのレベル2で運行を組み合わせながら慎重に自動運転レベル4の運行へ移行を進め、日本初の市街地に於けるレベル4自動運転サービスの実用化を目指してきた。

 

 

上士幌町が、この試みに挑戦する背景には、同町が未来に向けて町役場から半径1km以内に主要な施設や住宅が集約したコンパクトな町づくりを目指していること。道路の幅も広く、町内に十分な駐車場があること。更に路上駐車が比較的少ないなど自動運転バスの走行に適した環境などが揃っていることがある。

 

加えて人口減少などで既存の公共交通の維持が難しくなるなかで上士幌町は、誰もが利用できる定時・定路線の町内循環バスとして自動運転バスを運行する事を目的のひとつとして挙げている。

 

つまり、運転免許を自主返納者した高齢者を含む全ての住民の外出機会を創出、誰もが生き生きと住み続けられるよう地域の活性化や、住民の健康増進に繋げていきたいとの考えだ。従って持続可能な公共交通の実現に向けて、自動運転バスの定常運行があたりまえになる日常を視野に据えている。

 

上記計画指針をベースに、これまでボードリーなどのサポート企業と自動運転バスの実証を何度も繰り返し、雪や氷点下の環境でも充分な対策を行うことで安全に運行できることが確認してきた。

 

 

自治体初のAIを活用したバーチャル車掌も自動運転バスに初搭載

 

なお今回の自動運転走行のレベル4では、安全のため車両の近くにスタッフを配置しつつも、バス車内にはオペレーターを配置しない状態での無人走行となる。

 

走行ルートは、上士幌町交通ターミナルから上士幌町役場北側の約600mのルートを時速約12kmで走行する。運行スケジュールは、上士幌町が運営する自動運転バスの公式LINEを友だち登録することで、運行状況や運行ダイヤを確認することができるようにした。

 

 

運行に使われる車両は、乗務員を含む定員が11名。最大時速20km/h未満での運行も可能なフランスNavya社製の「ナビヤ アルマ( NAVYA ARMA )」を使用。加えて自動運転バス内で運行案内を担う車掌には、AIによる音声認識や回答の生成、音声合成技術による高い対話機能を持ったバーチャルAI車掌の萩音士清平(しゅうおんじきよひら)が担う。この萩音士清平という車掌名は、上士幌町内の地名の一部を組み合わせて名付けられたもの。

 

バーチャルAI車掌の車両初搭載は2024年3月。スパイスボックス(本社:東京都港区)が対話型AIキャラクターの導入を提案。より具体的には、トリバルコン(TRIBALCON./本社:東京都渋谷区)がキャラクター企画立案を担当。音声認識のアドバンスト・メディア(本社:東京都豊島区)がAI音声対話アバターシステム「AI Avatar AOI(エーアイ アバター アオイ)」を提供。3社でバーチャルAI車掌を開発・提供した。

 

 

上記バーチャルAI車掌の仕事は、車内のコミュニケーションの活性化や乗車時の不安解消を目的としている。AI車掌はバス停留所が近づくと周辺の施設について案内する他、自動運転バスの仕組みや、観光情報など様々な質問に回答するように設計されており、AI車掌の表示画面をタップするだけでユーモアを交えた自動会話にも対応する。

 

ここで一旦、上士幌町の自動運転バスでの取り組みを振り返ると、自動運転バスの定常運行を開始したのは2022年12月(公道上の専用空間に於ける実証実験の開始自体は2017年10月・北海道初/雪道上での走行実験は2021年・日本初)。

 

まずは既存のコミュニティバスを補完し、住民の日常的な移動手段を確保するべく町役場や病院、道の駅、交通ターミナル等の主要施設を結ぶ1周約3.5キロメートルのルートや、トンネル通過を含む(2024年7月・移動基地局を併用)ような様々な環境下での自動運転バスによる実証運行を行ってきた。

 

 

今回も運行コースの管理は、運行管理プラットフォーム「ディスパッチャー( Dispatcher )」を使用。遠隔監視センターから自動運転バスを遠隔監視する体制を敷く。但し自動運転バスの運行管理やメンテナンスなどの主要業務では、地域の交通事業者が担えるよう整備を進めて地域の交通事業者と連係する地に足の付いた運行体制を鋭意磨いている。

 

運行日や乗車方法などは以下の通り

 

運行期間・曜日:令和6年10月28日(月)~令和6年11月30日(土)の期間中の月・木・土曜日
 西地区循環線:月曜日
 東地区循環線:木曜日
 道の駅循環線:土曜日
発車場所:上士幌町交通ターミナル
発車時刻:午前便11:45頃発、午後便15:15頃発
乗車料:無料
予約方法:かみしほろスマートPASSから予約
予約定員:1便につき8名
※レベル4対応車両にて実施。
※発車時刻は目安であり、準備の状況によって時間が変更になる。
※予約優先であるが、当日空席がある場合は予約なしでも乗車可能。

 

時刻表

 

実証案内PDFリンク(8MB)
https://www.kamishihoro.jp/sp/self_driving_bus

 

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。