日立製作所は、英国で発電事業開発を行う子会社のホライズン社(Horizon Nuclear Power)が、英国ウェールズ北西岸に接するアングルシー島で開発を進めてきた新規原子力発電所建設プロジェクト(ホライズンプロジェクト)を凍結すると、1月17日に発表した。
これに伴い日立は、2019年3月期連結決算(2018年4月1日から2019年3月31日)で減損損失等、また、2019年3月期個別決算で特別損失を計上する見通し。損失額は、約3,000億円。
また、これを受けて 2019年3月期の通期連結業績予想を修正し、下記の通り発表した。
[プロジェクト凍結に伴う損失計上について]
<損失計上の背景と内容>
日立は、2012年11月、ドイツの電力会社2社の英国法人から、ホライズン社を約889億円(697 百万ポンド)で買収。そのうえで、「第3世代+(プラス)」原子炉の改良型沸騰水型原子炉 (ABWR/*1)をベースに、英国の環境に適合した「UK ABWR」2基を用いた原子力発電所の開発を進めてきた。
また、ホライズンプロジェクトの実現に向けて、プロジェクトへの投融資など英国政府による支援策のほか、プロジェクトの資金調達モデル、原子力発電所の建設・運営に 関する諸条件などについても、日本政府の協力を得ながら、英国政府と協議。
その一方で、以下の3点を事業継続のための主な判断基準として掲げ、ホライズンプロジェクトについての精査を行ってきた。
①民間企業としての適切なリターンの確保。
②日立の バランスシートからオフバランス化することを前提とした資金調達モデルの実現。
③民間企業として許容できる出資範囲。
その結果、日立は今回、プロジェクトの資金調達モデルや原子力発電所の建設・運営に関する諸条件の合意には、さらなる時間を要すると判断し、プロジェクトの凍結を決定した。
これに伴い、日立は、2019年3月期連結決算で、その他の費用として減損損失等約3,000億円、また、2019年3月期個別決算で、特別損失として損失約 3,000億円を計上する見通しとなった。
なお、これらの金額は、1月17日現在の概算値であり、2019年3月期連結決算および2019年3月期個別決算において確定される予定だと云う。
<今後の原子力事業について>
今後も日立は、英国政府と、原子力発電システムに関しての協議を継続。その一方で、鉄道システム事業や最先端のデジタルソリューションなどの社会イノベーション事業を通じ、英国経済や技術開発の発展と人々のQoL(*2)向上に貢献していくとしている。
また日本国内においては、引き続き、原子力発電所の早期再稼働や福島第一原子力発電所の廃炉、そして発電所の稼働率向上や運転期間の延長を支援するソリューションの提供などのビジネス展開を行うとしている。
*1:Advanced Boiling Water Reactor
*2:Quality of Life
[業績予想の修正について]
<2019年3月期通期連結業績予想数値の修正(2018年4月1日~2019年3月31日)>
(単位:百万円)
1. 調整後営業利益は、売上収益から、売上原価ならびに販売費及び一般管理費の額を減算して算出した指標。
2. 受取利息及び支払利息調整後税引前当期利益(EBIT)は、継続事業税引前当期利益から、受取利息の額を減算し、支払利息の額を加算して算出した指標。EBIT は、Earnings before interest and taxes の略。
3. 日立は、2018年10月1日付で、普通株式5株を1株とする株式併合を実施。前期の期首に当該株式併合が実施されたと仮定して、基本1株当たり親会社株主に帰属する当期利益を算出している。