日立製作所の鉄道システム事業におけるグループ会社である日立レール社は12月16日(12月15日英国現地発表)、英国の鉄道車両リース会社であるEversholt Rail(エバーショルト・レール)社と、英国都市間鉄道向け蓄電池ハイブリッド鉄道車両の導入に向けた契約を締結した。
ロンドンと南西部の都市ペンザンスを結ぶ、Great Western Railway(グレート・ウェスタン・レールウェイ)社が運営する都市間鉄道車両の駆動用電源の一部を既存のディーゼル発電機から蓄電池に置き換え、燃料使用量を20%以上削減することを目指す。今回の締結により、英国の都市間鉄道車両としては、初めての蓄電池車両導入となる予定。
日立が納入した36編成の車両は、2018年8月にグレート・ウェスタン・レールウェイ社が運行開始して以来、イングランド南西部の乗客の旅を変化させてきた。今回、車両の製造、メンテナンスを担う日立レール社と、車両を保有するエバーショルト・レール社とのパートナーシップにより、最新の都市間鉄道車両の電源に蓄電池を導入することとなった。
英国南西部とロンドンを結ぶ本路線は、一部区間が電化されているが、全長300マイルの路線の大半はディーゼルエンジンを必要とする非電化区間となっている。今回の提携では、電化・非電化区間を走行可能な日立レール社製の5両編成バイモード車両の電源として、ディーゼルエンジンの代わりに蓄電池の使用を検討している。
架線からの給電、ディーゼルエンジンに加え、蓄電池を導入することで、更なるハイブリッド仕様の車両を実現。非電化区間では、ディーゼルエンジンによらず蓄電池の電気を使用することで、燃料使用量と二酸化炭素排出量を20%以上削減する。
また、駅や都市部を蓄電池のみで走行することで、大気への影響や、騒音の大幅な低減を実現し、乗客や沿線住民にとってより快適な環境を実現することが可能になるとしている。ロンドンと南西部の都市ペンザンス間では、グレート・ウェスタン・レールウェイ社が運営する15の非電化の駅があり、その全てが蓄電池のみで走行する。
日立レール社は、日本の市場で培った先進的な専門知識を備え、さらに蓄電池技術におけるパートナーであるHyperdrive Innovation(ハイパードライブ・イノベーション)社のサポートを受ける。英国北東部を拠点とする2社は、2020年7月に、サンダーランドにある英国初の独立系電池パック製造施設であるハイパードライブ・イノベーション社の施設で、量産用の電池パックを製造・開発することで合意している。
今後予測される蓄電池技術の向上、特に出力量と充電量の向上は、長距離鉄道車両のディーゼルエンジンを代替する機会を徐々に増やしていくと考えられており、日立レール社では、英国の2050年のネットゼロエミッションの目標に合わせて、2040年代後半までに、ロンドンとペンザンス間の全区間をディーゼルエンジンによらずに走行できる、蓄電池都市間鉄道車両を開発することも視野に入れているとのことだ。