日野自動車と大林組は10月27日、建設業における現場作業員の高齢化や就労人口の減少による労働力不足、夜間や単調作業の生産性向上などの課題解決に向け、大型ダンプトラックによる自動運転(レベル4相当/※1)の実証実験を、実際のダム建設現場である川上ダム(三重県伊賀市)で、11月1日から1ヵ月半実施する。
日野は、建設業を含むビジネス課題の解決に向け、車両自動化などのCASE(※2)を活用し、顧客を起点としたソリューションの実現を目指している。また大林組では、省人化や生産性向上といった課題を解決すべく、建機の自動化や自動建機群を一元管理するプラットフォームの構築を目指し、建設現場のロボティクスコンストラクション(※3)を推進。両社は、こうした社会課題の解決を加速するため、互いの知見を合わせて、大型ダンプトラックの自動運転の実用化に向けて取り組んでいる。
今回の実証実験では、夜間の建設現場で稼働する現場内の搬送ダンプに、自動運転車を1台導入し、有人ダンプと自動運転車が混在した交通下における運行への影響や全車自動運転車だけでの運用を検討。建設現場の自動化に向けての建機連携を念頭に置いたデータの取得を、主な目的としている。
[実証実験について]
1.自動運転車両および利用システム
実証実験で使用する自動運転車には、大型トラック「日野プロフィア」をベースに自動運転技術を搭載。約1.3kmを最高30km/hで走行し、車両の走行位置や経路を、GNSSデータ(※4)やカメラ、LiDAR(※5)で把握し、前走車がいる場合は、全車速ACC(※6)で安全な車間距離を保ち、人および障害物を検知した場合には停止する。なお、想定外の事象に備え、実験車両にはシステム監視者が乗車する。
2.走行ルート
日々採取先が変わるコンクリート骨材ヤードの位置に応じて設定。狭いカーブや悪路、急勾配も含み、有人ダンプと混在した現実的な環境下での実証実験を実施する。
日野と大林組は今後、実証実験の結果を踏まえ、荷積み・運搬・荷降ろしまで一貫したオペレーションや、複数台の自動運転車を活用した現場における運用の新たな構築を目指し、開発や導入に向けた実証を検討するとしている。
※1)自動運転(レベル4相当):限定領域内の無人走行を想定した自動運転
※2)CASE:C=Connected(コネクティッド・接続性)、A=Autonomous(自動運転)、S=Shared(シェアード・共有)、E=Electric(電動化)の頭文字からとった造語。新しい領域で技術革新、自動車業界を取り巻く変革の動き(トレンド)のこと。
※3)ロボティクスコンストラクション:BIM・CIMなどの技術を用いて現実空間とバーチャル空間を結び、建設プロセスを高度化させる概念で、施工においては遠隔化・自動化を活用し現場の完全無人化を目指す。
※4)GNSS:Global Navigation Satellite System、GPSなどの全地球衛星測位システム。
※5)LiDAR(ライダー):Single Photon Avalanche Diode Light Detection And Ranging、周辺環境の立体的な様子を捉える技術や機器。
※6)全車速ACC:車間距離制御装置(Adaptive Cruise Control)、前走車と自車の距離を自車の機器で計測・算出し、一定に保つ機能。