先進運転支援システム( ADAS )と自動運転技術開発のAIソフトウェアを提供するHelm.aiは4月24日、認識システムのシミュレーション用にニューラルネットワークに基づく仮想シナリオ生成モデルを発表した。この新技術は、高度なADAS( レベル2および3 )と自動運転システム( レベル4 )の開発用に、同社のAIソフトウェアソリューションを強化するもの。
そんなHelm.aiは、2016年11月にカリフォルニア州で設立。高度なADAS、ロボット工学に資する次世代AIソフトウェアを開発。現在はスケーラブルな自動運転技術の実現を目指している。
先の2023年8月に5,500万米ドルのシリーズC資金調達ラウンドを終了。このラウンドでは、フリーマングループ( Freeman Group )が中心となって行われ、ベンチャーキャピタル会社のACVCパートナーズ( ACVC Partners )とAmploからの投資。更には本田技研工業、グッドイヤー・ベンチャーズ( Goodyear Ventures )、星宇ハイテク( Sungwoo Hitech )からの戦略的投資が含まれる。この結果、Helm.aiの調達総額は1億200万米ドルに達している。
そんな同社は今回、大規模な画像データセットを使用してトレーニングを重ねてきた生成AIに基づくシミュレーションモデルを開発した。このモデルは、照明や天候、異なる時間帯、地理的位置、高速道路や都市部のシナリオ、道路形状、様々な道路標識などのパラメータの変化を含む、非常にリアルな仮想運転環境の画像を生成することができる。
更に、生成された合成画像には、周囲のエージェント、障害物、歩行者、車両、車線標識、交通コーンなど、運転環境に関する正確なラベル情報が含まれている。これにより、Helm.aiの生成シミュレーションは、大規模なトレーニングや検証に使用できる非常にリアルなラベル付き合成画像データが生成される。
ユーザーはテキストまたは画像ベースのプロンプトを提供することで、現実世界の遭遇を再現する高忠実度の運転シーンを即座に生成したり、完全に合成された環境を作成できる。これらのAIベースの生成シミュレーション機能を使用することで、自動運転認識システムのスケーラブルなトレーニングと検証が可能になる。
特に困難な照明条件、複雑な道路形状、通常とは異なる障害物との遭遇、特定の物体構成など、めったに発生しないコーナーケースを仮想運転環境で検証することは、ADAS及び自動運転システムの開発と検証プロセスにおいて非常に重要となる。
同社が開発したニューラルネットワークに基づくシミュレーションは、物理ベースのシミュレータと比較して、スケーラビリティと拡張性の面で顕著な利点を提供する。
物理ベースのシミュレータは、物理的相互作用やリアルな外観を正確にモデル化する複雑さによって制限されるが、生成AIに基づいたシミュレーションは現実世界の画像データから直接学習するため、非常にリアルな外観のモデル化、簡単なプロンプトによる迅速な仮想運転環境の生成、および多様な運転シナリオやODDに対応するために必要な拡張性が可能になる。
Helm.aiの生成シミュレーションモデルは、オブジェクトクラスや環境条件を構築するために更に拡張することができ、自動車メーカーの特定の開発および検証要件に対応する多様な運転環境を作成することも可能だ。
Helm.aiのCEO兼共同創設者のVladislav Voroninski氏は、「生成AIに基づいたシミュレーションは、高度なADASおよび自動運転システムの開発・検証に向けたスケーラブルなアプローチを提供します。
広範囲にわたる現実世界のデータセットで訓練された弊社のモデルは、運転環境の複雑性を正確に捉えます。生成シミュレーションは、自動運転車の商用化に於いて極めて重要で、特に、稀なコーナーケースに対処する際に不可欠です。弊社は自動運転開発向けの生成AIに基づいたシミュレーションで道を切り開くことに成功しました」と述べている。