三洋化成工業は12月24日、関係会社のAPBとソフトバンクの子会社であるHAPSモバイルが、HAPSモバイルの開発する成層圏の通信プラットフォーム(High Altitude Platform Station、以下 「HAPS」)向けに、高いエネルギー密度の蓄電池を開発することを目的とした協業に基本合意したことを発表した。
HAPSは、成層圏に位置する通信プラットフォームで、インターネット環境が整っていない地域に対して、成層圏からLTE や 5G などのモバイルインターネットを提供することができるシステムだ。
HAPSモバイルが開発しているHAPS向け無人航空機「Sunglider(サングライダー)」は、大型の無線機を搭載して、一旦地上を離れたら6ヶ月間など長期間サービスを提供することを想定しているため、実用化にあたっては大容量かつ軽量化された蓄電池のさらなる改良を目指している。
全樹脂電池は、APBの現代表取締役である堀江英明と三洋化成が共同で開発したバイポーラ積層型のリチウムイオン電池で、高分子設計・界面制御技術を有する三洋化成が新開発した樹脂を用いて活物質に樹脂被覆を行い、樹脂集電体に塗布をすることで電極を形成している構造だ。
このため従来のリチウムイオン電池よりも製造工程を短縮することができる事から、製造コスト・リードタイムの削減を実現している他、高い異常時信頼性とエネルギー密度も併せて実現している。ちなみに部品点数が少なくて済むバイポーラ積層型の蓄電池ゆえに電極の厚膜化が容易に行え、セル形状の自由度が高いことも特長のひとつだ。
HAPSモバイルとAPBによる全樹脂電池は、その高いエネルギー密度や高い異常時信頼性といった特長によって、Sungliderの長期間にわたる成層圏での飛行を支えられる。特に軽量化に関しては、バイポ ーラ構造の特長を活かし、高電圧化に必要な配線パーツを排除する他、エネルギー密度化を高めた負極材を採用することによって、さらなる性能向上を実現していくとしている。
■HAPSモバイル
– 設立:2017年12月21日
– 代表取締役社長 兼 CEO:宮川 潤一
– 事業内容:
・Solar HAPS およびネットワーク機器の研究、開発、製造、運用、管理
・コアネットワークの構築、管理、運用
・Solar HAPS を活用した新規ビジネス
・Solar HAPSのための周波数の獲得
– 所在地:東京都港区東新橋 1-9-1
■APB
– 設立:2018年10月
– 代表者:堀江 英明
– 事業内容:リチウムイオン電池の研究開発・製造・販売等
– 所在地:東京都千代田区神田須田町 1-3-9 PMO 神田万世橋 3 階