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2025年3月3日【事業資源】

羽生モータースクールら、ベトナム自動車教習所大手と連携

坂上 賢治

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(中央左)広沢自動車学校の祖川嗣朗代表取締役、(中央)ヴァンタイングループのリエン会長、(中央右)羽生モータースクールの五十幡将之取締役

 

特定技能(外国人ドライバー)制度に対応する日本式運転教育カリキュラムの開発・提供へ

 

羽生モータースクール広沢自動車学校の2校は、ベトナム大手教習所グループと戦略協定を締結。ベトナム国内で行う来日前の日本式運転教育カリキュラムの開発・提供を行う。

 

なお、これは昨年末に解禁された「特定技能(自動車運送業)」制度(いわゆる外国人ドライバー制度)の本格化を前に、課題となっている外国人ドライバーの安全性を高めるため一方策となるもの。

 

より具体的には、ベトナムの教習所事業大手「VAN THANH GROUP(ヴァンタイングループ)」と共同で、日本でトラック・バス・タクシーの運転手を目指すベトナム人向けに来日前の段階で、ベトナム国内の教習所で日本式の学科と実技の教育を行うべく、プログラムの開発と提供を実施するための戦略基本協定(MOU)を締結した。

 

日本の特定技能(自動車運送業)制度は、外国人がトラックやバス、タクシーの運転手として日本国内で働くための制度で2024年12月に開始された。この外国人ドライバーを日本国内で起用できる同制度は、人手不足にあえぐ物流や公共交通の新たな担い手として期待されており、政府は5年間で2.45万人を上限に外国人ドライバーを受け入れる方針を掲げている。

 

しかし職業運転手として来日を目指すドライバーの出身国は途上国が多く、交通安全の3Eと呼ばれる「Engineering(道路改良)」「Enforcement(交通取り締まり)」「Education(交通教育)」が高い水準で揃っている国が少ないこと。ケースによっては運転教育をほぼ受けずに運転免許が得られる国もあることから「海外人材にどのように日本水準の安全運転を身に付けてもらうか」が大きな課題となっていた。

 

 

そこで埼玉県で大型免許(トラック)と大型二種(バス)の卒業生数No2の実績を持つ羽生モータースクールが、ベトナムとの連携を進めていた徳島県の広沢自動車学校と協力。日本で職業ドライバーを目指すベトナム人材を対象に、ベトナム国内にいる段階から日本式の学科(座学)と実技(運転)の教習を提供し、一定水準(外免切替の「技能確認」合格レベル)まで達したことを確認してから来日して貰うべく、先のベトナムの自動車運転教習所大手を包括した3社間で戦略提携を結んだ。

 

今回参画した羽生モータースクールは、埼玉県羽生市にある指定自動車教習所。1954年創業。全車種に対応する他、フォークリフト講習や運行管理者講習も実施するなど職業ドライバー向けの免許取得に強みがある。また2024年は、100人以上の外国籍の卒業生が免許を取得した実績を持っている。

 

対して広沢自動車学校は、徳島県徳島市の指定自動車教習所。普通車の通学者に於いて徳島県下最大の入校生数を持つ学校でもある。自社の最大の業績評価指標として「初心運転者の交通事故率を0にする」を掲げており、初心運転者事故率を10年間で1.4%から0.2%まで減少させることに成功した。またグループ会社のシンク・スリーは、特定技能ドライバーを通じた人材交流の輪を他の産業にも広げるべく徳島県とベトナム・ドンタップ省との産学官連携の橋渡しを進めきた。

 

連携3社目のベトナム自動車教習所大手のヴァンタイングループは、ベトナムの首都ハノイに本社を置く元国営の総合教育企業。ベトナム全土に計15校(10校は2025年開業予定)の自動車教習所を持つほか、日本語学科のある短期大学や専門学校など計11校を運営している。

 

現段階で既に3社で教育カリキュラムの開発は進捗しており、実技訓練でもベトナムとは逆となる左側通行の右左折・進路変更の安全確認手順といった重要な項目を15時間程度のパッケージとして組み立てている最中にある。

 

今後はベトナム側のヴァンタイングループが運営するハノイやホーチミン近郊の教習所で順次、カリキュラムの提供を進めていく。また学科(座学)については、羽生と広沢の2つの教習所をルーツに持つ教習所系スタートアップ企業「テトラ・シフト」が手掛ける特定技能ドライバー向けのオリジナルテキストの作成・活用体制を組み立てている。

 

 

今取り組みに係るステークホルダー各位のコメントは以下の通り

 

有限会社羽生モータースクール(取締役 五十幡将之氏)
日本の教習品質をベトナムに導入したい。そのきかっけとして特定技能制度で連携をしたい

昨年11月、ヴァンタイングループからの要望で、本プロジェクトが始まりました。この間、急ピッチでベトナムの教習所視察やベトナム人教習指導員との協議、ベトナム教本の研究などを進め、基本協定の締結に至りました。教習所の使命は、安全運転者を世に送り出すことであり、その使命に国籍は関係ありません。

 

本カリキュラムは、開かれたサービスで、特定技能ドライバーを採用する全ての日本企業様への提供を予定しております。弊社は、トラック・バス・タクシーの免許取得だけでなく、同業界の運行管理者向け講習やフォークリフト講習も手掛けており、運行・荷役・安全衛生・運行管理のあらゆる教育ノウハウを活かし、特定技能制度の持続可能性にチャレンジして参ります。

 

 

株式会社広沢自動車学校(代表取締役 祖川嗣朗氏)
今回、ヴァンタイングループと戦略提携を締結できたことを心より嬉しく思います

日本が抱える労働者不足という社会的な課題を持続的に解決していく為には、日本で働く外国人が日本の文化やルールを理解し、それらに対しての敬意と遵守が必須です。その実現のためには教育が何よりも必要であると考えており、私たち自動車学校業界がこれまで60年以上積み重ねてきた安全運転教育を、海外現地企業と連携して行っていく第一歩を踏み出せたことに大きな意義を感じるとともに、自社の持つ人材やノウハウを活かし、日本の物流企業・そして日本で働く外国人労働者双方にとってのWIN-WINな状態を作るための橋渡しとなれるように邁進したいと思います。

 

ヴァンタイングループ(会長 グエン・ヴァン・リエン氏)
外資企業との連携はこれが初めてで、今回、MOUを結ぶことができとても嬉しい

ベトナムでは免許を取る人が増えており、ぜひこの取り組みをきかっけに日本の教習品質をベトナムの教習所にも導入したい。また私たちのグループは日本語の教育施設や送出し機関もあるため、運転教育だけでなく、特定技能ドライバーの供給も可能。ぜひ、この新しい制度にトータルで取り組んでいきたい。

 

有限会社羽生モータースクール
取締役:五十幡将之
電話番号:048-561-3008
メールアドレス:m-isohata@motorschool.co.jp
HP:https://www.motorschool.co.jp/

 

広沢グループ 株式会社シンク・スリー(広沢自動車学校内)
海外事業統括責任者:村瀬善信
電話番号:088‐631‐0321
メールアドレス:y.murase@thinkthree.co.jp

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。