阪神高速道路と東芝は、実在する阪神高速道路5号湾岸線東神戸大橋をコンピューター上に再現し、車両荷重が橋全体にどのような影響を及ぼすかを評価する、超大規模解析技術を開発した(図1)。
また、実際の複雑な形状を簡単な梁に置き換える従来のモデルと比較して、構造の細部の危険箇所を特定する精度が飛躍的に向上したモデルを用い、車両荷重による橋全体の変形が評価可能であることを実証した。
なお、同開発技術の詳細は、北海道大学で開催される土木学会全国大会で、8月30日に発表される。
高度経済成長期に建設された橋などの社会インフラ構造物は、経年による老朽化が進む一方で、高齢化による人手不足で、これまでの人手による点検業務などの維持管理の効率化が求められている。
また、橋は生活に欠かせない重要なインフラであり、地震などの自然災害発生時には橋の状態把握を迅速に行う必要がある。
阪神高速と東芝は、現実の製品やモノの経年劣化などの状態を忠実に再現する、デジタルツインというアプローチを橋梁に適用した、「橋梁デジタルツイン」の実現を目指すとしている。
この橋梁デジタルツインの実現で、経年劣化状況の診断や、維持管理業務の効率化、災害時の橋の状態把握が迅速にできるなど、より適切な防災対応が可能になると云う。
阪神高速と東芝は、2017年2月から、橋梁デジタルツインの実現に向けた超大規模解析技術に関する共同研究を開始。
東芝がこれまでに電子機器などの研究・設計開発で培った構造解析技術と、阪神高速の橋梁維持管理ノウハウを組み合わせ、東神戸大橋を対象に、2次元の設計図面から3次元モデルを迅速に構築する技術を開発した。
解析技術については、従来、複雑な断面形状を持つ構造を梁で置き換えて橋梁をモデル化していたものを、今回、細部の形状までそのまま再現した5億自由度(※)規模の超大規模解析技術を構築。
梁に置き換えないことで、力のかかり方や変形が、構造のどこで生じるかといった細かい分析や、精密な解析が可能になると云う。
今後は、今回の解析結果と現在実施している加速度計、変位計、風速計等から構成されるセンサーネットワークを用いた実測結果との比較を通じ、解析モデルの有効性を検証していくとともに、風や車両走行による振動、日照による温度変化で生じる伸びなど、橋梁に影響を与える様々な事象に対する解析機能の拡充を図るとのことだ。
(※)5億自由度:再現の細かさを表す。今回の実証では、コンピューター上で橋を8千万個の点で構成し、それぞれの点が6方向自由に動くことができるため、点の数(8千万個)×自由な方向数(6方向)で約5億としている。