政府は3月8日、自動運転車の一層の実用・普及を図るべく、自動運転車の安全性を担保するための制度設計の柱である「道路運送車両法の一部を改正する法律案」を閣議決定した。(坂上 賢治)
昨今、日本国内でも自動車メーカーや大学等の研究機関を筆頭に、自動運転車に関わる設計・開発競争が加速している。
そうした開発現場では「高速道路上での自動運転を実施」、過疎地の限定エリアで「無人車両による移動サービスを提供する」など、いずれも来る2020年のオリ・パラ開催年の立証を目標に、鋭意各企業・団体共に自らの技術を磨き・競っている。
しかしその際の前提となるべき日本国内の現行法は、自動運転車を想定したものとなっていない。しかしリアルな実験環境下では、自動車技術の電子化・高度化に伴い、先進安全技術を搭載した車両開発が急速に増え始めているだけに留まらず、インフラ間通信・車間車通信などを活用。搭載ソフトウエアの走行中のアップデートすら現実のものとなりつつある。
そこで政府では、こうした技術進歩を鑑み、最新鋭技術に見合う自動運転車の開発がより一層加速されるべく、下記概要に沿った道路運送車両法の改正案で合意に達した。
(1)保安基準対象装置への自動運行装置の追加
保安基準の対象装置に、プログラムにより自動的に自動車を運行させるために必要な装置として「自動運行装置」を追加する。また自動 運行装置が使用される条件(走行環境条件)を当該装置ごとに国土交通大臣が付す事とする。
(2)自動車の電子的な検査に必要な技術情報の管理に関する事務を行わせる法人の整理
自動車の電子的な検査の導入に伴い、当該検査に必要な技術情報の管理に関する事務を独立行政法人自動車技術総合機構に行わせることにする。
(3)分解整備の範囲の拡大及び点検整備に必要な技術情報の提供の義務付け
地方運輸局長の認証を背景に地方運輸局長の認証を得る「分解整備」の範囲を、自動運行装置等の先進技術に関する整備等にまで拡大。その名称を「特定整備」に改める。また自動車メーカーに対して、点検整備に必要な技術情報を特定整備事業者へ提供する
ことを義務付ける。
(4)自動運行装置等に組み込まれたプログラムの改変による改造等に係る許可制度の創設
自動車の電子制御装置に組み込まれたプログラムの改変による改造を、電気通信回線の使用により実施するケースが可能となるよう許可制度を創設する。
(5)その他
<5-1>自動車の型式指定制度における適切な完成検査を確保するため、完成検査の瑕疵等に対する是正措置命令等を創設する。
<5-2>自動車検査証を電子化(ICカード化)すると共に、自動車検査証の記録等事務に係る委託制度を創設する。
(6)上記に係る実現目途として下記実用化を目標とする
◎高速道路上の自動運転(レベル3)の実用化 : 2020年目途。
◎限定地域の無人自動運転移動サービス(レベル4)の実用化 : 2020年まで。
◎自動ブレーキの新車乗用車搭載率 : 2020年までに9割以上。
なおより端的には、保安基準に「自動運行装置」を新たに追加して、その装置の使用条件を国土交通大臣が設定する。
つまり自動運転の走行を認める道路環境や制限速度などの条件を車種ごとに国土交通相が設定。条件に合わない場面はドライバーが車を操作することで、事故防止や安全確保に努める。
そしてこの際の走行条件は、国が車種ごとの性能を審査した上で、高速道や一般道といった道路環境や速度、天候などを定める。なお車載システムの技術が進んだケースでは条件変更できるようにする。
また自動車メーカーは、これに適合する「自動運行装置」を設計・製造することで一定の条件で自動運転が行われ、緊急時に運転手が操作する「レベル3」の実用化を推し進める。
加えて道交法改正案では、渋滞中の高速道路など特定の条件での自動運転中、ドライバーが確実に運転を交代できる場合には、携帯電話の通話やカーナビの視聴ができることも盛り込まれている。
この際、自動運転時に必要になるセンサーやカメラなどの装置には保安基準を設定。既存のエンジンなどと同様に点検・整備を義務付け、車検の対象に加えるとしている。