NEXT MOBILITY

MENU

2019年3月9日【オピニオン】

政府、自動運転時代を踏まえ道路運送車両法改正案を決議

坂上 賢治

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

 

政府は3月8日、自動運転車の一層の実用・普及を図るべく、自動運転車の安全性を担保するための制度設計の柱である「道路運送車両法の一部を改正する法律案」を閣議決定した。(坂上 賢治)

 

 

 昨今、日本国内でも自動車メーカーや大学等の研究機関を筆頭に、自動運転車に関わる設計・開発競争が加速している。

 

そうした開発現場では「高速道路上での自動運転を実施」、過疎地の限定エリアで「無人車両による移動サービスを提供する」など、いずれも来る2020年のオリ・パラ開催年の立証を目標に、鋭意各企業・団体共に自らの技術を磨き・競っている。

 

しかしその際の前提となるべき日本国内の現行法は、自動運転車を想定したものとなっていない。しかしリアルな実験環境下では、自動車技術の電子化・高度化に伴い、先進安全技術を搭載した車両開発が急速に増え始めているだけに留まらず、インフラ間通信・車間車通信などを活用。搭載ソフトウエアの走行中のアップデートすら現実のものとなりつつある。

 

 

 そこで政府では、こうした技術進歩を鑑み、最新鋭技術に見合う自動運転車の開発がより一層加速されるべく、下記概要に沿った道路運送車両法の改正案で合意に達した。

 

(1)保安基準対象装置への自動運行装置の追加
保安基準の対象装置に、プログラムにより自動的に自動車を運行させるために必要な装置として「自動運行装置」を追加する。また自動 運行装置が使用される条件(走行環境条件)を当該装置ごとに国土交通大臣が付す事とする。

 

(2)自動車の電子的な検査に必要な技術情報の管理に関する事務を行わせる法人の整理
自動車の電子的な検査の導入に伴い、当該検査に必要な技術情報の管理に関する事務を独立行政法人自動車技術総合機構に行わせることにする。

 

(3)分解整備の範囲の拡大及び点検整備に必要な技術情報の提供の義務付け
地方運輸局長の認証を背景に地方運輸局長の認証を得る「分解整備」の範囲を、自動運行装置等の先進技術に関する整備等にまで拡大。その名称を「特定整備」に改める。また自動車メーカーに対して、点検整備に必要な技術情報を特定整備事業者へ提供する
ことを義務付ける。

 

(4)自動運行装置等に組み込まれたプログラムの改変による改造等に係る許可制度の創設
自動車の電子制御装置に組み込まれたプログラムの改変による改造を、電気通信回線の使用により実施するケースが可能となるよう許可制度を創設する。

 

 

(5)その他
<5-1>自動車の型式指定制度における適切な完成検査を確保するため、完成検査の瑕疵等に対する是正措置命令等を創設する。
<5-2>自動車検査証を電子化(ICカード化)すると共に、自動車検査証の記録等事務に係る委託制度を創設する。

 

 

(6)上記に係る実現目途として下記実用化を目標とする
◎高速道路上の自動運転(レベル3)の実用化 : 2020年目途。
◎限定地域の無人自動運転移動サービス(レベル4)の実用化 : 2020年まで。
◎自動ブレーキの新車乗用車搭載率 : 2020年までに9割以上。

 

 なおより端的には、保安基準に「自動運行装置」を新たに追加して、その装置の使用条件を国土交通大臣が設定する。

 

つまり自動運転の走行を認める道路環境や制限速度などの条件を車種ごとに国土交通相が設定。条件に合わない場面はドライバーが車を操作することで、事故防止や安全確保に努める。

 

そしてこの際の走行条件は、国が車種ごとの性能を審査した上で、高速道や一般道といった道路環境や速度、天候などを定める。なお車載システムの技術が進んだケースでは条件変更できるようにする。

 

 また自動車メーカーは、これに適合する「自動運行装置」を設計・製造することで一定の条件で自動運転が行われ、緊急時に運転手が操作する「レベル3」の実用化を推し進める。

加えて道交法改正案では、渋滞中の高速道路など特定の条件での自動運転中、ドライバーが確実に運転を交代できる場合には、携帯電話の通話やカーナビの視聴ができることも盛り込まれている。

 

この際、自動運転時に必要になるセンサーやカメラなどの装置には保安基準を設定。既存のエンジンなどと同様に点検・整備を義務付け、車検の対象に加えるとしている。

改正法律案概要 

改正法律案要綱 

 
CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。