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2025年3月11日【ESG】

ゲキダンイイノによる「未知のグリスロ」、羽田空港で本格導入へ

坂上 賢治

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施設内の移動で時間を浪費すると捉えず、施設内の移動体験自体を愉しんで欲しい

 

日本空港ビルデングが建設・管理・運営する羽田空港第2ターミナルで3月19日から、ゲキダンイイノ合同会社(関西電力株式会社100%子会社)の自動走行モビリティ「iino(イイノ)」が国内・初導入される。

 

2023年以降の羽田空港は、旅客利便性のさらなる向上と未来の航空需要拡大へ対応するべく、施設拡張の機運が高まっており、目下、第2ターミナルの本館と北側サテライトを接続するための施設増築の整備工事に着手している。

 

この増床計画により、専用バスでアクセスが必要な北側サテライトと、本館が一つの建物として繋がり直接行き来できるようになる。加えて今工事では増築部にターミナルから直接航空機へ搭乗するための搭乗口が5カ所新設される見込みだ。

 

そうしたなか、新たに増築された第2ターミナルに自動走行モビリティ「iino」が本格導入されることになった。この「iino」とは、自動運転を前提としているものの、これまでの「クルマ=モビリティ」の概念から掛け離れた極低速・短距離専用の電動モビリティを指す。

 

 

車両開発にあたっては、主に関西電力の若手ネットワーク「k-hack(ボトムアップ型のイノベーション・プロジェクトを自発的に立ち上げ、それを実践する若手社員達のコミュニティ)」のメンバーを中心に新たな移動サービスの実現を目指して作られたもの。

 

そうした取り組みから生まれた自動走行モビリティ「iino」 は、従来のモビリティのように操作方法・スピード・航続距離といった効率や利便性を求められるものでない「未知の乗り物」として、これまで神戸・三宮中央通り地下通路や大阪・御堂筋での公道走行実証実験を消化。

 

横浜山下公園や東京国際映画祭のような施設やイベントとの連携では、街そのものを愉しめる趣向を凝らすなど、これまで存在していなかった自動走行モビリティ像の実現に向けて、様々な検証を繰り返してきた。

 

ゲキダンイイノは、これらの実証実験で得られた成果・知見をもとに、街・施設、そして人と〝共存〟することによって生み出される「新しい出会い」を創出し、「より速く、より多く」ではなく、「より楽しく、より魅力ある」移動体験を提供していきたいと考えてきた。

 

 

移動手段としての効率化・最適化を求めるのではなく、移動を愉しむツールに

 

時速5キロ(羽田空港での運用は2.5キロ)の人が歩く速度で移動するモビリティ「iino」は、単なる移動手段としての最適化を求めたものでは全くなく、限りなく静かに刺激もなく、いわば頭を空っぽにするなどで移動体験自体を楽しんで欲しいという思いのもと誕生した「動く家具」でもあるという。

 

従って歩行者との共存性を考慮して、外観にはあたたかみのある木材を使用しており、乗車時の目線の高さは立っている状態とほぼ同じとなっている。そんな極低速の移動体験であるので、周囲の人とコミュニケーションも、取り易くなっているのが大きな特徴といえる。

 

 

ゲキダンイイノでは「iino」について、「あえて低速で走行し、自由に乗り降りできるというコンセプトの自動走行モビリティが〝iino〟です。どなたでも安全に乗り降りして頂けるよう、床面は可能な限り高さを抑え、センサーを踏むことで時速0.7kmまで減速するようにも設計しています。

 

また走行中は、やわらかなLEDライトと心地よい音楽でモビリティの存在を知らせ、周囲の安全を確保しています。車体のデザインでも、時速5キロの自動走行モビリティ「iino」を通して、走る場所の魅力を引き立て、乗る人のエモーションを掻き立てるような移動体験を生むよう腐心してきました。現在、地方自治体やまちづくり事業者と協力しながら、街と人をつなぐモビリティサービスの提供に向けた取り組みを行っています。

 

日本の空の玄関口としての羽田空港は、そうした街中のシチュエーションと同じく、お客さまのことを第一に考えており、〝人にも環境にもやさしい〟先進的空港の実現に向けて、日々多彩なサービスを提供している羽田空港を舞台に、搭乗までに移動を強いられる感覚で時間を浪費するとは、捉えることなく、ひとつの移動体験を愉しもうと考えて頂ければ、嬉しく思います。

 

導入後も内装デザインや走行ルート、速度について、〝iino〟を利用頂くお客さまからのご意見や、関係者からのフィードバックなどを咀嚼し、より一層、空港ならではの移動体験を〝どう愉しむか〟その意味と価値を追求してまいります」と話している。

 

羽田空港第2ターミナルへの導入する〝iino〟の詳細
・走行場所・ルート羽田空港 第2ターミナル 2階 搭乗口52番付近~47番まで
・走行時間:8:00 – 20:00
・利用方法:予約不要、無料

 

 

オープンエアで、景観を楽しみながら街を散策するように移動できる:iino type-Sとは

名称:iino type-S(イイノタイプエス)
サイズ:全長2950mm ×全幅1300mm×全高1050mm
速度:5km/h(羽田モデルは2.5km/h)
乗車人数:最大8人(羽田モデルは最大6人)

 

製造・開発:ゲキダンイイノ合同会社
https://gekidaniino.co.jp

 

 

参考)ゲキダンイイノによる過去の実証実験レポート
有楽町 丸の内仲通りでの実証実験:https://gekidaniino.co.jp/newsworks/daimaruyu2024/
奥入瀬渓流での実証実験:https://gekidaniino.co.jp/newsworks/oirase2024/
「御堂筋チャレンジ2023」で公道走行:https://gekidaniino.co.jp/newsworks/midosuji2/

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。