富士キメラ総研は4月2日、自動車の電装化を支えるシステムやデバイス等の市場調査の結果を「車載電装デバイス&コンポーネンツ総調査 2019《上巻:システム/デバイス編》」にまとめ、その概要を公表した。
調査では、パワートレイン系、HV/PHV/EV/FCV系、走行安全系、ボディ系、情報通信系の車載電装システム計21品目と情報機器4品目の世界市場を国・地域別に調査・分析。また、それらを構成するデバイス&コンポーネンツ25品目の市場についても言及する。
なお、システムを制御するECUとその構成デバイス市場については「車載電装デバイス&コンポーネンツ総調査 2019《下巻:ECU関連デバイス編》」でまとめ、今後発表すると云う。
公表内容では、安全支援システムのADAS(Advanced Driving Assistant System)の世界市場は、搭載義務化の流れが各国・地域で進むことで、2030年には1兆1,513億円と、2018年の見込みの5,274億円から2.4倍に。
また自動運転システムの世界市場は、レベル3を中心に普及し、2030年には2兆2,108億円と、2018年の見込みの48億円から451.2倍に。
以上2つのシステムを含む車載電装システム全体の2030年の市場は、50兆5,955億円と、2018年の見込みの24兆781億円から2.2倍への成長が予想されている。
[注目市場]
■安全支援システム(ADAS)市場
ADASは、カメラやレーダーからのセンシング情報をドライバーに表示・警告、またはドライバーに代わって自動車を制御する安全支援システム。市場はADASの主体となるセンサーと情報処理を行うECUで構成されるユニットが対象。自動化レベルの定義のレベル1「安全運転支援」と、レベル2「部分的な自動化」に該当する。
調査では、ADAS搭載の義務化の流れが各国・地域で進むことにより、市場は堅調に拡大。2020年代前半は日本や北米、EUを中心に衝突安全防止機能の採用が進み、2025年までに搭載率は生産車ベースで80%以上に。
また現状、欧州や北米に比べ小規模な中国市場で、2021年頃から急激に需要が増加し、2030年までには最大規模の市場になると予想している。
更に、センシングデバイスの低価格化の進行により、新興国・地域でも簡易的なADASの採用が進むことが期待されるとしている。
■自動運転システム市場
自動運転システムは、センシングデバイスを用いて周辺環境の検知・認識を行い、自動制御を行う技術。ADAS開発の延長線上に位置し、自動化レベルの定義では、レベル3の「条件付き自動化」、レベル4の「高度な自動化」、レベル5の「完全自動化」を実現するシステムとなる。
自動運転車は現在、一部の欧米系自動車メーカーから発売され、システムの需要も各国・地域別ではEUが大半を占めているが、2020年には日系を含む複数の自動車メーカーがレベル3の自動運転車の投入を計画していることから、各国・地域で市場は急拡大すると予想。
また現在は、レーザースキャナー(LIDAR)が高価格なことから、一部ハイエンド車に留まっている自動運転システムの搭載が、2021年頃からMEMS式など、安価なLIDARの採用が始まることで低価格化、市場拡大を後押しするとしている。
なお自動化レベル別では、2020年代はレベル3のシステムが中心。レベル4、5のシステムは2030年以降に普及するとしている。
[調査結果の概要]
■車載電装システムの世界市場
※HV/PHV/EV/FCV系、走行安全系は全体の内数。
富士キメラ総研では、車載電装システムの全体の市場は堅調に拡大することが期待できるとし、2030年には50兆円を超えると予想。
車載電装システムをパワートレイン系、HV/PHV/EV/FCV系、走行安全系、ボディ系、情報通信系に分類すると、現状はパワートレイン系が35%前後、情報通信系が25%弱を占めているが、今後、各国・地域でHV/PHV/EV/FCV系の搭載が増えるため、2030年には40%弱に。
一方、パワートレイン系は、アイドリングストップの48VマイルドHVへの置き換えが進むため、長期的には縮小が予想されるとしている。
また、この中で、今後伸びが期待される分野として、48VマイルドHV、PHV、EV、自動運転、ドライバーモニタリング、車外通信(セルラー方式/DSRC方式)などを挙げ、特にHV/PHV/EV/FCV系の48VマイルドHV、走行安全系の自動運転やドライバーモニタリングは、現状の市場規模は小さいが、年平均成長率(2017年から2030年)が50%を超えると予想している。
国・地域別では、現状では自動車生産台数の多いEUや中国、北米の市場規模が大きいが、今後、中国やその他国・地域が大きく伸びるとし、特に中国はEVなどのHV/PHV/EV/FCV系を中心に、年平均成長率(2017年から2030年)10%程度の高い伸び率を予想。
日本では現状、エンジンマネジメントなどのパワートレイン系の構成比が高いが、HV/PHV/EV/FCV系の搭載が進み、2023年には最大のウェイトを占めるとしている。
■デバイス&コンポーネンツの世界市場
デバイス&コンポーネンツの世界市場では現状、センサーモジュールや小型モーターなどのセンサーモジュール/アクチュエーターが全体の50%以上を占めるが、今後、環境対応車の普及に伴い、HV/PHV/EV/FCV/環境対策関連デバイスのウェイトが高まると予測。
特に伸びが期待されるものとして、センサーモジュール/アクチュエーターではLIDARや二次電池用電流センサー、インバーター用電流センサーを挙げている。
また、表示/入力系デバイスでは有機ELディスプレイやタッチセンサー、HV/PHV/EV/FCV/環境対策関連デバイスでは車載用充電器やDC-DCコンバーター、インバーターモジュールなどの伸びが期待されるとしている。
これらが、市場拡大をけん引することで、2030年の市場は25兆3,376億円を予測している。
[調査について]
<調査対象>
<調査方法>
富士キメラ総研専門調査員によるヒアリング及び関連文献、データベース活用による調査・分析
<調査期間>
2018年10月~12月
[車載電装デバイス&コンポーネンツ総調査について]
– 資料タイトル:「車載電装デバイス&コンポーネンツ総調査 2019《上巻:システム/デバイス編》」
– 体裁:A4判 332頁
– 価格:
書籍版:120,000円+税
書籍/PDF版セット:140,000円+税
ネットワークパッケージ版:240,000円+税
– 発行所:株式会社 富士キメラ総研
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