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2025年3月14日【イベント】

WRC第3戦サファリに4台のGRヤリス・ラリー1が参戦

坂上 賢治

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TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(TGR-WRT)は、3月20日から23日に掛けてケニア開催の2025年FIA世界ラリー選手権(WRC)第3戦「サファリ・ラリー・ケニア」に合計4台のGR YARIS Rally1で参戦する。

 

参戦するのは、エルフィン・エバンス選手/スコット・マーティン選手組(GR YARIS Rally1 33号車)、カッレ・ロバンペラ選手/ヨンネ・ハルットゥネン選手組(69号車)、勝田貴元選手/アーロン・ジョンストン選手組(18号車)に、TGR-WRT2からのエントリーとなるサミ・パヤリ選手/マルコ・サルミネン選手組(5号車)を加えた合計4台による参戦。今シーズ最初のグラベル(未舗装路)ラリーで開幕3連勝を狙う。

アフリカのケニアを舞台とする伝統のサファリ・ラリーは、2017年にWRC出場を開始したTGR-WRTにとって、記念すべきWRC100戦目のイベントになる。

 

TGR-WRTは、これまで4年連続でこのクラシックイベントを制しており、不敗記録を更新するべく今回も全力で臨む。今シーズンは、開幕戦のラリー・モンテカルロでセバスチャン・オジエ選手が優勝、エバンス選手が総合2位を獲得。

 

第2戦ラリー・スウェーデンではエバンス選手が優勝、勝田が総合2位を獲得するなど、2戦連続で1-2フィニッシュを達成。さらに、パワーステージとスーパーサンデーでも獲得可能な最大ポイントを2戦連続で獲得したことにより、マニュファクチャラー選手権ではランキング2位のチームに48ポイント差をつけて首位に立っている。

 

また、ドライバー選手権でもエバンス選手が首位、オジエ選手が2位、ロバンペラ選手が3位につけるなど、非常に良い形でシーズンのスタートを切った。

 

そして迎える第3戦サファリ・ラリーは今シーズン初のグラベルイベントであり、今季からシングルタイヤサプライヤーとなったハンコックのグラベル用ラリータイヤを装着して戦う最初のラリーとなる。

 

エバンス選手は過去このラリーで優勝こそないが、2回ポディウムを獲得するなど強さを発揮してきた。ロバンペラ選手は2022年、2024年と2回優勝しており、このラリーでの勝率5割を誇る。また前戦のラリー・スウェーデンで総合2位に入りキャリア6回目の表彰台を経験した勝田選手は、2021年のサファリ・ラリーでチームメイトのオジエ選手と最終日まで優勝を争い、総合2位でフィニッシュ。WRCトップカテゴリーでの最初の表彰台登壇を果たした。

 

その後もサファリ・ラリーとの相性は良く、2022年に総合3位、2024年に総合2位に入るなど安定して好結果を残している。一方、パヤリ選手にとっては今回が初のサファリ・ラリー出場となるため、大きなチャレンジとなる。

 

TGR-WRT以前のリザルトも含めると、トヨタはサファリ・ラリーでこれまで12回優勝しているが、40年前の1985年にセリカ・ツインカム・ターボを駆り、このラリーでWRC初優勝を果たしたユハ・カンクネン選手が、今回はチーム代表代行として初めてチームの指揮を執る。

 

サファリ・ラリーはWRCの中でも独特なキャラクターのラリーであり、常に多くの難題を選手とチームに課す難しいイベント。ステージはその多くが草原の比較的平坦な道に設定されているが、一部には岩や石が転がる路面、「フェシュフェシュ」と呼ばれる粉末状の砂に覆われた柔らかい路面、そして大きな段差がある荒れた路面など、トリッキーな区間も少なくない。

 

また、雨が降ると路面はぬかるんで泥状となり、非常に滑りやすくなる。なお、深い水たまりや砂の海ではクルマのエンジンが水や砂を吸い込み易くなるため、サファリ・ラリーでは「シュノーケル」と呼ばれる筒状のバイパス装置を、車外に装着することが許されている。

 

2025年のサファリ・ラリーは、前年までよりも走行距離が大幅に増え、ステージの総走行距離は383.10kmに。ここ数年のWRCでは最長のラリーとなる。

 

例年同様、ラリーは首都ナイロビからスタート。20日の木曜日はセレモニアルスタートに続き、これまで通りナイロビ近郊の「カサラニ」での、全長4.76kmのスーパーSSで戦いの火蓋が切って落とされる。

 

さらに今年は、SS2としてサービスパークが置かれるナイバシャ近くの「ムザビブ」で、新たに全長8.27kmのステージが行われる。競技2日目となる21日の金曜日は、一日を通してステージが行われるフルデイの初日。ナイバシャ湖周辺での「ロルディア」「ケンゲン・ジオサーマル」「ケドング」という定番のステージに加え、今大会最長となる全長31.40kmの新ステージ「キャンプ・モラン」が行われる。

 

4本のステージはナイバシャでのミッドデイサービスを挟んで、午前と午後に各2回行われ、8本のステージの合計走行距離は157.58kmと4日間で最長の一日となる。

 

競技3日目となる22日の土曜日は、エレメンタイタ湖の周辺で「スリーピング・ウォリアー」「エレメンタイタ」「ソイサンブ」という定番の3ステージを、ミッドデイサービスを挟んで各2回走行。その合計距離は146.50kmとなる。

 

競技最終日となる23日の日曜日は、「ムザビブ」の再走ステージとなるSS17に続き、「オセレンゴニ」と「ヘルズゲート」のステージを、ミッドデイサービスを挟んで各2回走行。今大会の最終ステージとなるヘルズゲートの2本目、SS21はトップ5タイムを記録した選手とマニュファクチャラーに、ボーナスの選手権ポイントが与えられる「パワーステージ」に指定されている。

 

ステージは全21本で合計383.10km。リエゾン(移動区間)も含めた総走行距離は1381.92kmが予定されている。なお、サポート選手権であるWRC2では、今回初めてGR Yaris Rally2がサファリ・ラリーにエントリー。4人のカスタマードライバーがステアリングを握る。

 

地元開催の第2戦ラリー・スウェーデンで優勝し、ドライバー選手権首位の座をヨアン・ロッセル選手(シトロエC3 Rally2)とシェアしているオリバー・ソルベルグ選手はプリントスポーツから、スペイン人選手のヤン・ソランス選手とパラグアイ人選手のディエゴ・ドミンゲス選手はテオ・マルティン・モータースポーツから出場する。

 

さらに、ヨーロッパ・ラリー選手権を3回制しているポーランド人選手のカイエタン・カイエタノビッチ選手が、ラリーラブ・テクノロジー・チームが用意するクルマで出場。彼にとっては、今回がGR Yaris Rally2でのデビュー戦となる。

 

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ヤリ-マティ・ラトバラ (チーム代表)
私たちのチームにとって、サファリ・ラリーは常に特別なイベントです。そして今年の大会は、2017年にWRCに参戦を開始して以来100回目のイベントという、特別な意味を持つものです。もちろん、この節目を今回も素晴らしい結果で飾りたいと思っていますが、決して予想できるものではないラリーであることは理解しています。ルートはさらに長くなり、この時期は雨が降る可能性がかなり高いので、路面が非常に滑りやすくなる可能性があります。

 

また、今回は今年改正された技術規則に基づいたクルマと、新しいハンコックタイヤで臨む初のグラベルラリーとなりますが、ヨーロッパ以外の国ではテストを行うことができないため、誰もが上手く適応しなくてはなりません。エルフィン、カッレ、貴元はこれまでケニアで好成績を収めていますが、サミにとっては初めてのサファリとなるので、学びのラリーになるでしょう。彼らは皆、私の現地での役割を今回初めて引き継ぐ、ユハ・カンクネンの知識を頼りにすることができます。このイベントでの彼の経験から、チームは安泰であると確信していますし、私自身も進捗状況をしっかりとフォローするつもりです。

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エルフィン・エバンス (GR YARIS Rally1 33号車)
私たちにとっては幸先の良いシーズンスタートとなり、最初の2戦が上手くいったことを嬉しく思います。しかし今、フォーカスをグラベルに移し、新しいタイヤについて学び直すことになります。ケニアの道を完全に再現できたわけではありませんが、先週のテストではグラベル仕様の今年のクルマとタイヤに慣れることができました。

 

サファリ・ラリーは、独特な条件が揃う特別なラリーです。ドライコンディションであっても簡単ではありませんが、雨が降ったり水たまりができると、完走することさえ非常に難しくなります。ここ数年、チームにとっては素晴らしい結果が得られているラリーですが、個人的には最も得意なイベントではありません。それでも可能な限り高い順位を目指し、優勝を狙って戦いたいと思います。

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カッレ・ロバンペラ (GR YARIS Rally1 69号車)
自分たちにとっては決して簡単なシーズンスタートではありませんでしたが、戦いの中心からそれほど離れているわけではありませんし、グラベルラリーに移行する今、さらにハードにプッシュし、自分たちが本来いるべきポジションに戻るための新たなチャンスが訪れます。チームはここまで素晴らしい強さを発揮しているので、自分たちも全てのピースをうまく組み合わせることができれば、同じようなペースで走ることができるはずです。

 

先週のテストでは様々なことを試しましたが、グラベル路面でのクルマとタイヤのフィーリングを確かめることがとても重要な課題でした。サファリは間違いなく、今シーズンで最も特別なラリーのひとつです。サファリに行くのはいつだって本当に素晴らしいことですし、今年も好結果を残さなくてはならないので、再び良い結果を出せるように頑張ります。予想が難しいラリーですが、全力でプッシュしてベストを尽くします。

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勝田 貴元 (GR YARIS Rally1 18号車)
スウェーデンは自分にとっていいラリーでした。速さを示し、良い結果を残すこともできたので、ケニアに向けて良いフィーリングを得ることができました。サファリは自分にとって特別なラリーですし、チームも毎年素晴らしい強さを発揮しています。彼らは常にしっかりとクルマを準備をしてくれますし、信頼性も自分たちの強みであると思います。

 

今年は走行距離が長くなり、新しいステージも加わるので、より厳しい戦いになるかもしれません。そのため、ラリー前のレッキでペースノートをしっかり準備しておく必要があります。また、今年のクルマとタイヤに合わせた最適なドライビングを見つける必要もありますが、テストではかなり良い感触が得られました。ケニアではいつも多くの応援をいただいています。もちろん今回もまた表彰台に上れるように頑張りますが、何が起こるかわからないラリーなので、しっかりと準備をした上で上手く対処する必要があります。

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サミ・パヤリ (GR YARIS Rally1 5号車)
シーズンの始まりは特殊なラリーが続いたので簡単ではありませんでしたが、ここまでのところ何回か良いステージタイムを記録し、ポジティブな瞬間を多く経験することもできたので、ケニアでもその流れが続くことを期待しています。昨年はレッキを行うために現地に行ったので、どのような道であるのか少しは理解していますが、それでも大きなチャレンジには変わりありません。

 

ここ数年のチームの成績は素晴らしく、クルマはきっと強いはずなので、自分自身のパフォーマンスにも集中して取り組みます。できるだけ多くの経験を積むことが今回の目標ですが、このようなラリーでは何が起こるかわからないので、ベストを尽くすことも重要です。厳しい戦いになると思いますが、挑戦を楽しみにしています。

 

2025年サファリ・ラリー・ケニア Map

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。