ABB FIAフォーミュラEワールドチャンピオンシップとFIA( 国際自動車連盟 )は1月23日( 英国ロンドン発 )、レース中盤のピットストップで30秒間・600kW( 一般車の充電モードを大きく凌駕する基準 )の超高速エネルギーブーストにより10%のエネルギー増加(3.85kWh)を可能とする新ルール「PIT BOOST(ピットブースト)」を、2月14日〜15日のジェッダE-Prixで許可する予定だ。
この新たな「ピットブースト」ルールの追加によりレース中のチームは、エネルギーブーストのメリットとトラックポジションを失うリスクを比較検討する機会を与えられ、それがレースの結果と戦術を劇的に変えることになる。
但しこの際のマシン対応は、ふたりのピットクルーのみの作業に限られる。また、この際に観客は、最先端のEV超高速充電技術の一端が体験でき、併せてレース運びについての予測不確実性が高まることとなる。
この「ピットブースト」ルールの検討は、前世代マシンのGEN3導入時から繰り返して実践を重ねてきたもの。適応ルールは、ダブルヘッダー時などレース毎に適用の有無が分かれる予定であり、該当するレースでは事前に( 各レースの21日前 )指定された周回数のなかでマシンを呼び戻して30秒間の急速充電が行えるようになる。
与えられるチャンスは1チームにつき1台のマシンのみとなる見込み。また条件が限られる見込みだがアタックモードと組み合わせることも許される。
フォーミュラEの共同創設者 兼 最高チャンピオンシップ責任者のアルベルト ロンゴ氏は、「徹底的なテストとシミュレーションのプロセスを経て、新たな追加ルールを遂に世界へ向けて発表できることを嬉しく思います。
これは、我々のシリーズ戦だけでなく、これからのモータースポーツを考える時、最も野心的で影響力のある追加機能のひとつになるでしょう。PIT BOOSTは、チームとドライバーの両方に強いプレッシャーの下で決定を下すことを求められます。
劇的な追い越し、予期せぬ展開、人間の創意工夫の可能性は、ファンの興奮を高め、フォーミュラEとFIAのイノベーションへの絶え間ない取り組みの一端を示すものとなるでしょう。
レーストラックから道路への技術移転を促すために誕生したフォーミュラEワールドチャンピオンシップの行方を占うだけでなく、一般向け車両のEVパフォーマンスの将来の可能性にとっても大きな変化を与えうるものとなるでしょう」と述べた。
更にFIAのシニア・サーキットスポーツ・ディレクターを務めるマレク・ナワレツキ氏は、「包括的なテストプログラムを経て新ルールのPIT BOOSTを導入することにより、再びEVマシンによるレーシングシーンの可能性を押し広げることを大変嬉しく思います。
FIAの技術およびスポーツ規制の一部であるこの先駆的な新機能は、スポーツに新たな戦略的要素を追加するものであり、また高度なレース技術から一般道路への技術移転を目指すFIAの未来設計に対する挑戦的な姿勢を体現するものでもあります。そうした意味でABB FIAフォーミュラE世界選手権は、その最も先駆的な事例となるのです」と結んでいる。