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2024年11月8日【イベント】

フォーミュラE、来季に向け女性選手限定のプレテストを実施

坂上 賢治

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フォーミュラEホールディング( FEH )が運営するFIAフォーミュラE世界選手権シリーズ( FE / FIA Formula E World Championship )は11月7日( スペイン発 )、マドリードのハラマサーキット( Circuito Permanente del Jarama )に於いて、FIA世界選手権史上でも初の試みとなる女性のみのテストセッションを初開催。午後の時間帯で日産フォーミュラEチームのアビ・プリング選手が叩き出した最速タイムが始めてFIAの歴史に刻まれた。

 

このテストセッションの実施は、フォーミュラEが掲げる長期戦略の一環で、世界選手権レース参戦に係る女性の障壁を取り除き、機会の拡大を目指すもの。

 

 

参加したドライバー達は、新シーズンに向けたチーム活動のなかで重要な役割を果たすべく、エンジニアリング領域を包括する会議に参加した他、其れ其れのフォーミュラEチームを代表して記者会見、ブリーフィング、インタビューに参加した。

 

その目的は、モータースポーツ産業で働くことを目指す人々の知名度を高めることにある。従って今回が一度きりの機会創出ではなく、これまで女性の参加と進歩を制限してきた構造的な不平等を分析して、それらを積極的に解消することにあるという。

 

さて今回のテストでは、プレテストに参加した18人の女性選手に、シーズン11( 2024 / 25 )の新型GEN3Evoマシンのステアリングを握る機会が与えられた。この最新モデルは、FEHによると0-60mphを1.82秒で走り切るなど現時点のF1マシンよりも加速性能で30%優れていると謳っている。

 

小山美姫選手は、トップから0.842秒差の4番手タイムをマークした

 

3時間に亘った今セッションは、2024/25 ABB FIAフォーミュラE世界選手権のプレシーズンテストの一環として行われたもの。同セッションで最速タイムを記録したのは、日産フォーミュラEチームから参加したアビ・プリング選手。2番手はジャガーTCSレーシングチームのチャドウィック選手。3番手はマクラーレンフォーミュラEチームのビアンカ・ブスタマンテ選手となった。

 

 

< 以下は参加した女性テストドライバー達 >

 

 

ジャガー TCS レーシングのジェイミー・チャドウィック選手とリルー・ワドゥー選手

 

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タグ・ホイヤー・ポルシェのガブリエラ・ジルコバ選手とマルタ・ガルシア選手

 

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DS ペンスキーのジェス・エドガー選手とベイツケ・フィッサー選手

 

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日産フォーミュラEレーシングのアビ・プリング選手

 

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アンドレッティのクロエ・チェンバース選手とネレア・マルティ選手

 

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エンビジョン・レーシングのアリーシャ・パルモウスキー選手とアリス・パウエル選手

 

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NEOM マクラーレンのビアンカ・ブスタマンテ選手とエラ・ロイド選手

 

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マセラティMSGレーシングのタチアナ・カルデロン選手とキャリー・シュライナー選手

 

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ローラ・ヤマハ ABTの小山美樹選手

 

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マヒンドラ・レーシングのレナ・ビューラー選手

 

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キロ・レース・カンパニーのシモーナ・デ・シルヴェストロ選手

 

 

 

< 以下はトップタイムを記録した選手達のコメント >

 

 

日産フォーミュラEチームのアビ・プリング選手

「本当にエキサイティングなセッションでした。シミュレーターで学んだことを現実に活かし、日産フォーミュラEマシンを運転するスリルを体験できたのは素晴らしい気分でした。

 

ラップタイムは好調でとても満足しています。タイヤのピーク時にもっと時間をかけるべきだったと思いますが、全体的にパフォーマンスには満足しています。チーム全員が素晴らしく、私にすべてを説明し、質問にも答えてくれました。本当に感謝しています。

 

日産フォーミュラEチームの新シーズンに向けた準備に協力できたことを嬉しく思います。将来またこのマシンを運転する機会があればと思っています!」

 

 

ジャガーTCSレーシングのジェイミー・チャドウィック選手

「楽しい一日でした。誰もがこんなに短い時間でマシンから降りるべきだったと言うでしょう。最後に赤旗で少し混乱しましたが、本当にクールで、本当に楽しかったです。できればまた戻ってきたいです。

 

本当に良い経験になったと思います。最も印象的だったのはローンチです。何度か試してみましたが、この車が0から100km/hまでどれだけ速く加速できるかは信じられないほどで、ハイライトでした。」

 

 

NEOMマクラーレンフォーミュラEチームのビアンカ・ブスタマンテ選手

「今日はフォーミュラE GEN3 Evoカーを運転する初めての経験でした。チーム全員と仕事をするのはとても楽しかったです。この数か月間、この瞬間に向けて取り組んできました。今、この車を運転する経験ができて嬉しいです。350kwのラップを何周かこなしましたが、これまで慣れていたものよりはるかにパワーがあり、スキルを向上させる素晴らしい経験になりました。

 

マクラーレンドライバー育成プログラムとNEOMマクラーレンフォーミュラEチームを通じてこの経験を積んだことで、常に目指していたより優れた、よりバランスの取れたドライバーになっていると感じています。テストを3位で終えたことは大きなプラスであり、チームとのこの経験にとても感謝しています。」

 

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上記コメントを受けてフォーミュラEのCEO、ジェフ・ドッズ氏は、「今日は、世界最高の女性ドライバー18名が当社の新しいGEN3 EvoフォーミュラEカーでコースを走るのを見ることができ誇らしい瞬間を共有できました。わずか3時間で、参加したドライバー達全員が、新しい車の複雑さを理解し始めたため、ラップタイムが急速に短縮されるなど、とても素晴らしく急速なドライビングテクニックの進歩も見られました。

 

トラックタイムの機会が増え、現在のドライバーと同等のマシンで走行することで、これらのドライバーが車と自分自身を限界まで追い込むことに、益々自信を持ち、彼らの本当の可能性がどこにあるのかを、より正確に示すベンチマークを知ることになったと確信しています。

 

なおマドリードに於いて4日間に亘り行われたフォーミュラEドライバー達の総合最速タイムは、ジャガーのミッチ・エバンス選手が1分27秒401秒を記録している

 

ドライバーたちは、数週間後にサンパウロでレースに出場する車を準備する中で、チームや他のドライバーに重要なデータとフィードバックを提供しました。

 

今日のテストは、女性ドライバーにより多くの機会を提供するという私たちの目標にとって重要なマイルストーンであり、モータースポーツのトップレベルでの平等性を高めるための第一歩です。

 

テストに参加し、準備を手伝い、さらにはテストセッションをご視聴頂いた人々にとって、これはモータースポーツに於ける真の平等へと向かう長い道のりの始まりに過ぎないことをお示しできたと思います。これからも更に多くのことが起こります」と語った。

 

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。