2022年までのF1グランプリシーンで延べ53回の優勝を積み上げてきたセバスチャン・ベッテル選手は3月22日(独・シュトゥットガルト発)、独・ポルシェAGがハイパーカークラス並びにIMSAスポーツカー選手権に投入する最新鋭の耐久マシン「ポルシェ963」の潜在能力を、スペイン・・アラゴン州テルエル県アルカニス近郊のモーターランド・アラゴン( 全長5.078キロ )で試すことを明らかにした。
そもそもポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ( アメリカンモータースポーツの世界で名門のチーム・ペンスキーと、ドイツ・ポルシェとで結成されたワークスチーム )は、米・独によるワークスチーム体制による参戦と、プライベートチームに車両を提供するふたつの参戦体制を準備。北米IMSAスポーツカーシリーズと、FIA世界耐久選手権WECにポルシェ963で挑む。
昨年、IMSAレースで3勝を挙げた同チームは、新たに迎えた2024年シーズンを両選手権の勝利でスタートを切った。また今年のル・マン24時間レースでは、ハイブリッドレースカーを含む参戦車両全部が、バイオ燃料での参戦になることを決めている。
今春、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツは、このスペインでの36時間に及ぶロングランテストの消化を決めるなど、精力的にル・マン24時間レースの準備を進めてきたが、これを受けて既に4度のF1世界チャンピオンに輝いたベッテル選手は今回、初経験となるルーフ付きハイパーカーのコックピットに座ることを心待ちにしているようだ。
そんなベッテル選手は、レーストラックでポルシェ963のステアリングを握るべく、準備を進めてきたという。
ベッテル選手は去る3月14日、マンハイムのポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ施設でオペレーションクルーと面会。翌日の3月15日にはポルシェ・モータースポーツで広範囲に亘るシミュレーターセッションを完了した。そこで彼はワークスチームのエンジニアたちと知り合い、ル・マン・プロトタイプの特別な機能と複雑な制御システムを試した。
明けて翌週の3月21日、彼はヴァイザッハR&Dセンターの社内テストトラックでポルシェ963を初試乗。これはF1のシングルシーターマシンで299回のF1グランプリを経験した36歳の彼にとって、とても貴重な経験になったという。
というのは、彼がルーフ付きのレーシングカーを運転するのは久方ぶりであるためで、過去にルーフ付きのレーシングカーのステアリングを握った機会は、レース・オブ・チャンピオンズや、デモラップ程度だったからだ。
ベッテル選手は、「ポルシェ 963については、ヴァイザッハでのロールアウトで既に車の感触を掴めてきています。これまで僕は常にシングルシーターマシンのレースシリーズを追い続けてきた訳ですが、新たな好奇心を刺激する耐久レースマシンに出会い、これを試してみようという気持ちになっています。
今では、アラゴンでのロングランを含めて、ポルシェ963のステアリングを握る時間を心待ちにしています。そこでは、これまでと異なるマシンセッティングを、どのように行うかなど、幾らかの慣れは必要ですが、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツチームの全員が、とてもオープンな姿勢で助けてくれることでしょう。だから、これは僕にとって全く新しい未知の経験になります」と話している。
対して、ポルシェ モータースポーツ副社長のトーマス・ラウデンバッハ氏は、「セバスチャン・ベッテル選手が、我々のポルシェ 963に興味を持ってくれたこと。そして我々のマシンをテストする機会を持ちたいという彼の要望に応え、当社のハイブリッド プロトタイプを愉しんで貰うことについて大きな喜びを感じています。
というのは、彼の貴重なフィードバックから多くのことを学べることは間違いからです。モーターランド アラゴンで、当社のワークス ドライバーと繰り広げる36時間のロング ランは、そのための濃密な機会を提供できるだろうと思っています。
ただ現時点では、我々とベッテル選手との取り組みについて、テスト以上の予定は全くなく、今回のロングドライブの後、どのような流れになるかは何も決まっていません」と説明している。
ちなみに同テストには、セバスチャン・ベッテル選手を筆頭に、ボルシェワークスドライバーのマット・キャンベル選手(オーストラリア)、ミハエル・クリステンセン選手(デンマーク)、フレデリック・マコヴィエツキ選手(フランス)、ケビン・エストレ選手(フランス)、アンドレ・ロッテラー選手(ドイツ)、ローレンス・ヴァンスール選手(ベルギー)が参加する。
なお、このロングランテストは、6月15日と16日に開催される今シーズンのハイライトであるル・マン24時間レースに向けた準備となる。過去の耐久レースシリーズで数々の栄誉を獲得し続けてきているポルシェは、去る2023年から再び挑戦し始めたワークス体制による24時間レースに、独ヴァイザッハで仕立てた3台目のハイブリッドプロトタイプを投入する予定としており、20回目の総合優勝を獲得することを目指している。