日本自動車工業会(自工会)は4月11日、「普通トラック」と「小型・軽トラック」に関する2022年度市場動向調査をまとめ、発表した。それによると普通トラックではドライバー不足や燃料費高騰への関心が高く、小型・軽トラックでも燃料費高騰から次世代環境車への購入意向が増加しているのが分かった。(佃モビリティ総研・松下次男)
2022年度普通トラック市場動向調査は、普通トラックの保有・購入・使用実態や輸送ニーズ、物流を取り巻く市場環境の変化などを時系列的に捉える目的で、隔年で実施しているもの。
調査は普通トラック保有事業所を対象にしたユーザー調査と荷主調査からなり、ユーザー調査は運輸業952サンプル、建設業・製造業・卸・小売業280サンプル、荷主サンプルは256サンプルの有効回収で分析。調査期間は2022年8月下旬~10月上旬。
調査結果をみると、経営状況では自家用はコロナ禍からの回復に兆しが見える一方で、運輸業の半数は売上・業務量ともに新型コロナウイルス感染症前より減少し、厳しい状況が続いている。
加えて、「エネルギー価格高騰も経営に大きく影響」していることが調査結果から分かったと説明した。
需要動向では、国全体の輸送総量は新型コロナの影響により20年に大きく減少したが、大規模運輸事業所や経営が好調な事業所でのトラック購入意欲は高い結果となった。
普通トラックの新車販売台数は2019年から減少傾向となり、とくに2022年は過去10年で最低となった。4トン、10トンクラスは2021年と比べて1万台前後減少した。
ドライバー不足に関する意識・意向では、運輸業・自家用とも、輸送上の問題点として「ドライバー不足」「ドライバーの高齢化」を上位に掲げた。
働き改革関連法の改正・施行で更なるドライバー不足が懸念される「2023年・2024年問題」に対しては、運輸業の4割弱が「現在取り組みを進めている」、4割半が「未着手だが、今後進める予定」と回答。
現在の取り組み内容は「高速道路の活用を増やす」「荷主への運賃値上げの交渉」「ドライバーの給与引き上げ」などが上位となった。
荷主側では2023・2024年問題の影響として「トラック輸送運賃の上昇」が6割と最も高かった。
安全に対する意識では、運輸業では対面点呼・酒気帯び確認、健康管理を中心とした対策、さらにIT関連機器の導入検討が進む。自家用では乗務前の酒気帯び確認実施率が大幅に増加した。
エコドライブ、低燃費車量はユーザー・荷主ともニーズがある一方、カーボンニュートラル対応のハイブリッド車両(HV)導入意向は、運輸業で中型の2割弱にとどまった。
2022年度小型・軽トラック市場動向調査は小型・軽トラックユーザーの保有・購入・使用実態の変化を時系列に把握し、今後の市場動向を探っていくことを目的にしたもの。
さらに今回はカーボンニュートラルに向けた次世代環境車や電気自動車(EV)に対するユーザー意識の変化、燃料価格高騰、ドライバー不足が及ぼす輸送への影響なども取り上げ、分析した。
調査は、事業所調査(746サンプル)、ユーザー調査(小型・軽トラック・バン保有ユーザー、1264サンプル)、WEB調査(軽トラック・バン保有個人貨物輸送業者、53サンプル)からなり、調査期間は2022年8月~10月。
調査結果によると、保有台数は小型トラック、軽ボンバンの減少傾向が継続し、事業所における全体的な物資輸送量も減少した。
運輸業では、運転手不足の困窮度に改善がみられるものの、未だ半数以上の事業所が運転手不足となっており、従業員数の減少により保有台数を減らしている事業所が発生しているところも。
運転手不足で困窮する運輸業では、30~50代男性運転手の採用意向が高いものの、実際の採用では60代以上の男性の採用が最も高かった。
新型コロナに加えて、「原材料価格の上昇」「燃料価格の上昇」などにより、経営状態は2018年度より悪化。これに伴い輸送合理化策として「保有台数の適正化」「買い替え延期」を実施する事業所が増加した。
環境意識の醸成と燃料価格高騰を背景に、小型・軽トラックで次世代環境車の導入意向が増加していることが分かった。中でも、HVの導入意向が最も高いが、EVについても軽トラック・軽バンで導入意向が増加している。
使用パターンでは、仕事・私用兼用比率が上昇。私用利用をみると、小型・軽トラックは「園芸・農作業」、小型バンは「通勤・通学」、軽バン・ボンネットバンは「日用品の買物」が高い。
Eコマースの拡大により、ラストワンマイルを担う行動半径の短い近距離輸送が増加していることも分かった。
需要構造では、小型から新車軽へのダウンサイズが進行している結果が明らかになった。