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2021年5月14日【企業・経営】

自動車メーカー各社、2021年3月期決算・21年度展望(2)

間宮 潔

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トヨタ自動車、30年の電動車販売800万台を展望

 

トヨタ自動車の2021年3月期連結決算は、売上高が前期比8・9%減の27兆2145億円、営業利益が同8・4%減の2兆1977億円となり、当期利益では前期比で8・1%増の2兆2452億円と増益を確保した。

 

連結の販売台数は前期比14・6%減の764万6000台。コロナ禍の影響が前半期で大きく、後半期は多くの地域で前期を上回った。また電動車の通期販売台数は前期比12・3%増の215万5000台と好調だった。

 

連結営業利益の増減要因では、販売台数減で2100億円、為替変動の影響で2550億円の減益としたが、原価改善で1500億円、諸経費の低減努力で700億円の利益改善を図った。

 

次期業績予想(22年3月期)は、売上高で30兆円、営業利益で2兆5000億円と2桁の伸びを確保。当期利益でも2兆3000億円と僅かにプラスを見込む。

 

連結販売台数は、前期比13・8%増の870万台を計画、トヨタ・レクサス販売台数で同5・6%増の960万台を計画。電動車は各地域のニーズによるが、前期比29・9%増の280万台を見込む。電動車比率は前期の「23・7%」から「29・2%」にアップする見込み。

 

豊田章男社長が本決算発表の場を欠席する異例の決算会見となったが、それぞれの部門責任者であるチーフ・オフィサーがトヨタの戦略、特に政府が推進する50年カーボンニュートラルの実現に、コミットする意気込みを示す会見となった。

 

渉外・広報担当の長田准CCOは、「新車段階での電動化比率を目標とせず、車両製造段階から使用、燃料供給、そして廃棄・リサイクルまでのすべてのアセスメントでカーボンニュートラルの実現を目指す」として様々な技術でチャレンジし選択肢を広げた取り組みを推進・投資を加速させる。

 

30年のトヨタのグローバル電動車販売台数が800万台となるとの目論見を明らかにし、うち200万台がBEV、FCEVで占めるとした。日本ではハイブリッド以上の電動車比率が95%(うちBEV、FCVが10%)、北米は70%(同15%)、欧州では100%(同40%)、中国で35年の法規制で100%(同50%)になる見通しだ。

 

現在、トヨタの電動車ラインは2本だけだが、30年には30倍の60本体制になっているとの試算、電力換算で180ギガワット時の規模となる。

 

決算発表第2部では、デジタル担当のジェームス・カフナー取締役CDOがトヨタの25年以上に亘る電動化への取り組みを紹介、FCEV(水素燃料電池車)、BEV(バッテリー電動車)を含む全55モデルを市場に投入、年間200万台超の電動車を供給した。

 

過去投入した省エネ車投入で実現したCO2削減量は、1億4000万トンに上る。台数換算で150万台のゼロエミッションを実現した計算になると指摘した。

 

マツダ、今期から損益分岐台数100万台を目指し構造改革推進へ

 

マツダの2021年3月期連結決算は、売上高で前期比16%減の2兆88 21億円とし、2月公表の予想をやや下回ったが、為替が好転した他、コスト改善が進み、営業利益では88億円(前期比79・8%減)の黒字を計上、当期利益では500億円の赤字予想から317億円の赤字に抑えた。

 

グローバル販売台数は前期比9%減の128万7000台と、2月公表の130万台より下振れした。

 

上期は前年同期比20・8%減の57万8000台でコロナ禍の影響を諸に受け、下期では前年同期を2万台上回る70万9000台(2・9%増)と米国、オーストラリアでの需要回復が寄与した。

 

21年3月期の営業利益の増減要因では、連結出荷台数の減少などによる台数・構成で1085億円の減少、為替で93億円、環境規制などその他費用で226億円の減少となったが、これをコスト改善(88億円)、固定費他(763億円)で補った。

 

加えて操業停止による特別損失の繰り戻しで205億円計上し、2月公表ではプラスマイナスゼロの営業利益で、88億円の黒字を出した。中でも固定費に含む広告宣伝費はデジタル化による見直しで、300億円の経費圧縮とした。

 

22年3月期の業績見通しは、売上高で、前期比18%増の3兆4000億円、営業利益は営業利益率で「1・9%」、前々期を上回る650億円、当期利益も黒字転換して350億円とする計画を示した。

 

22年3月期のグローバル販売台数は前期比9%増の141万台を予想。連結決算に直結する出荷台数では、15%増の113万5000台とした。半導体の影響は、10万台程度と見込むが、出荷調整などの努力で7万台に抑え込む意向だ。

 

丸本明社長兼CEOは、「コロナ禍による大規模な販売減、生産調整で始まり、新型コロナの再拡大と半導体供給問題に直面した一年だった」と総括、昨年11月に発表した中期経営計画の遂行に意欲を示した。

 

特に「すべての市場、領域で危機感を共有し、相互支援・相互理解を進めながら一時的な止血と共に、構造改革に取り組んだ事が(収益改善の)原動力になった」と評価した。

 

今期以降について、「地道かつ永続的な改善と、構造改革の両輪がやっと軌道に乗り始めた」として、中計で掲げた損益分岐台数を100万台レベル迄引き下げる全社を挙げた構造改革、全社横断型のクロスファンクショナル活動を強力に推進していく決意を強調した。

 

スバル、米需要で22年3月期通期予想を20年3月期レベルに戻す計画

 

SUBARU(スバル)の2021年3月期通期連結決算は、売上高が前期比15・4%減の2兆8302億円と前回見通しから198億円下回り、半導体調達面で生産への影響を受けた。

 

連結販売台数は、前期比16・8%減の86万台で、日米での生産台数は同21・4%減の81万台となった。  この結果、同期の営業利益は前期比51・3%減の1025億円と半減した。米国での販売奨励金が1台当たり1600ドルから1300ドルに縮小、330億円の削減に繋げたが売上構成差全体で1284億円の減益となった。

 

為替レート差で204億円、原材料高騰などで213億円の経費増があり、諸経費の圧縮努力ではカバーし切れなかった。最終当期利益でも前期比49・9%減の765億円を計上した。

 

次期業績予想は、北米市場の回復を見込み、売上高を3兆3000億円(21年3月期実績比16・6%増)、営業利益で2000億円(同95・2%増)、当期利益で1400億円(同83%増)とした。

 

中村知美社長兼CEOは、「依然としてコロナ禍での不透明感はあるが、去年との大きな違いは、やはりアメリカを中心として非常に旺盛な需要がある」とし、収益計画の達成に強い意気込みを示した。

 

また中村社長は18年7月に発表した中期経営ビジョン「STEP」の中間年として進捗状況を報告。四半期毎の営業利益ライン800億円の達成には、「まだ力不足」としながらも、業界高位の営業利益率(8%)確保に意欲を示した。

 

特にスバルの最大市場となる米国でのマーケットシエアは9年連続前年越え、昨年は「4・2%」に達した。目標の5%に向け、存在感を高めていくことを強調した。

 

トヨタ自動車と共同開発を進めているCセグメントのSUVモデルの新型EVはその名称を「SOLTERRA(ソルテラ)」に決定、22年央迄に市場投入する事を明らかにした。

 

いすゞ自動車、UDトラックスの収益を折り込み2兆5000億円を見込む

 

いすゞ自動車の2021年3月期連結決算は、下期のグローバル販売台数が前年を12%上回る34万台と大きく回復したものの、上期の不振を引きずった。その結果、売上高は前期比8・3%減の1兆9082億円、営業利益は同31・9%減の957億円、当期利益は同47・4%減の427億円と、減収減益となった。

 

通期のグローバル販売台数は、ピックアップトラックのLCV部門で前期比5%減の29万5000台、商用トラックのCV部門で同10%減の26万台となり、合計で同7・5%減の55万5000台となった。

 

22年3月期の次期業績予想では、傘下に含めたUDトラックスの9カ月分の収益を織り込み、過去最高の2兆5000億円(うちUD分2200億円、前期比31%増)を見込む。営業利益も77・6%増の1700億円、当期利益1100億円の大台に乗せる。

 

グローバル販売台数は、CV部門でUDトラックスの1万6000台を含め、前期比30%増の33万9000台、LCV部門で同34%増の39万5000台、合計で同32・4%増の73万4000台と過去最高となる見通し。

 

いすゞは、この22年3月期を初年とする「中期(3カ年)経営計画202 4」を策定、最終年度の24年3月期には、ボルボグループとのシナジー効果を織り込み、売上高2兆7500億円、営業利益2500億円を目指す方針を示した。

 

片山正則社長は、さらに新中計を一里塚に5年後(26年3月期)の業績に言及、売上高3兆円、営業利益3000億円の大台を目指す考えも明らかにした。

 

前中計では「攻め」の戦略で、各事業・技術領域で最適なパートナー企業とアライアンスを結び、基盤を作った。新中計では「ESGを視点にした経営」への転換を明確に打ち出し、課題の多いトラック部門でも電動化・脱炭素化への潮流に応え、カーボンニュートラル戦略を推進。また進化する物流への貢献を掲げた。(佃モビリティ総研・間宮 潔)

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。